博士学生の記者インターンシップで
先週はインターンシップ生受け入れ3年目で、博士2年生を指導しました。期間は1週間と短かったけれど、なるべく記者ではない人にとっておもしろそうな発表やネタを思案して。科学技術部内外の記者らの協力を得て、予定を組みました。終わりが近づいて、「どの取材がおもしろかった?」というのを尋ねました。東芝の製品発表会は社長もCM起用のタレントさんも来たというから(エレ担当記者に連れて行ってもらった)それかなあ。技術取材でいうなら、ペットの生活習慣病がおもしろそうだったな(こちらはバイオ担当記者の協力)、などと思いつつ。そうしたら、「ん〜、神奈川科学技術アカデミー(KAST)の取材と、理研の体内時計のレクですかね」と。へえ、意外。
KASTは、19日付「産学官連携の製造技術プロ 試作で中小支援 DLC・環境対応メッキで設備」で、インターンシップが終わる前に記事化することができました。これは別の企画もの取材で藤嶋昭理事長の取材に行き、でもニュースがほしいなとあれこれ話すうちに、引き出せた案件でした。それも「これはニュース!」と明白なものではなくて、取材するうちに「産学官連携でいわれるこの課題と、KASTのこれまでの経緯を考えると、おもしろい話だな」と気づき、「これに着目して記事にするならばあれと、それとを確認して聞いていかなくては」と判断し、理事長より詳しく話せる方も取材していったというものでした。つまり、努力して【作り上げた】記事ということで、インターンシップ生に解説するのにも力が入っちゃいました。作り上げた、ってもちろんいい意味ですよ。普通なら記事になるとは気づかない話を、産学官連携の担当が長い私だから書けた、という自負が入っているのです。
もっとも、インターンシップ生が感心していたのは、「3年間の短期プロジェクトを新たに立ち上げるのに、KASTはそれを成功させることを重視して、かなり実用化が見えているテーマを取り上げたのか」ということでした。「自分たちの大学の研究でも、将来はこんな分野に応用を…と口にはする。でも、KASTのケースから比べると、応用から遠く離れた基礎研究からいっているわけで、そんなものは意味がないのだろうか」と考えさせられたようです。
それから、理研のレクというのは、22日付科学技術面掲載の記事(これは文部科学省詰めの記者が執筆)、「夜中の光で体内時計一時停止 細胞の脱同調で発生 理研など解明」となりました。「記事前文の執筆の練習するなら、どの話がいい?」インターンシップ生に聞いたところ、これを選んできて。私としては「えーっ、話、わかんないよ」と思いながら、資料をA4一枚の要旨だけは何とか読んで、残りの6枚くらいの資料はパスした案件です。インターンシップ生の専門分野ではないのですが、理研の研究者が科学記者向けに説明するというレベルの難易度で、博士なら理解もできるし、科学的に興味をもった、ということのようです。
昨年の修士1年のインターンシップ生の場合、最初から科学記者志望が強くて、結局、来春に弊社に入社してくれることになりました。でも今回は、そうなりそうにありませんね。いえ、それはそれで問題ないのです。東京工大の科学技術コミュニケーションの講座としては、研究者になる人材に幅を持たせようというのが狙いなのですから。今回は博士学生で新聞社インターンシップを希望するだけでも珍しいのに、半年のドイツ留学経験もあるし、取材帰りの電車内で哲学っぽい新書を読んでいたし(私は昼寝)、「こういう人なら、博士取得者の研究者採用を思案する企業に歓迎されるのだろうな」と実感しました。ぜひ、いい研究者になってくださいね!
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