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2007年11月

2007年11月22日 (木)

記者も傲慢になってはいかん

大学の若手・中堅広報さんを相手に講演をするチャンスがありました。50人くらいのうち誰も寝ていなくて(すごい!)皆、熱心にメモを取ってくれて、とてもうれしかった。私がとくに伝えたかったのは、「大学側も、記者側も、相手の特性(記者は締め切りに追われているのでせっつくことが多い、とか)を知ったうえで誠実に対応を」ということでした。

ちょうど少し前に、私は記事でミスをしまして。恥ずかしくて具体的にはいえないのですが、相手に怒鳴りつけられても仕方がないようなミスだったのですが、関係者の対応が優しくて感激したのです。ミスした本人が、そのことについての重さを分かっていない時は問題で、厳しくしかられた方がよいのでしょうけれど(若手社会人はこのパターン)、ひどく反省しているところに相手の優しさを感じると、これもまた心に深く沁みるのです。これからもその相手に対して、誠実に仕事をしていこうと思いますし。長い記者生活ですが、トラブルになった時に、自分はどう反応し、相手はどう対応してくれたか、みーんな覚えています…。

記者はわりと社会的に大事にしてもらっていて、それは大学と同様、ある意味で公的で大事な存在だと思われているからだと認識しています。それだけに、気を付けないと傲慢になってしまうことも。最近のように仕事が立て込んでいると、イライラして怒りっぽくなったり、態度が雑になったり、電話で相手(ゆっくり話すタイプの人)の話が待ちきれなかったり。でもそれって周囲の人にとって、迷惑ですよね。ミスの件でも思ったのですが、「心には、常に余裕を持って対応する」のが一流の社会人というものなのでしょう。

そう、私のブログも気を付けなくちゃ。いい気になって取材先の悪口ばかり並べているようだと、ネ。実名ブログでも、書くべきことは書くけれど、余裕ある優しい態度を忘れないようにいたしましょう。

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2007年11月19日 (月)

大学発ベンチャーの記事をしつこく書く

「転換期の大学発ベンチャー 経産省06年度調査から」を、上中下(10月26日、30日、11月2日)で連載しました(ブログでの紹介が遅くなってすみません)。これは経産省の報告書「大学発ベンチャーに関する基礎調査」の内容紹介なのですが、この5年間の変化をまとめていたこと、内容に興味深いものが見られたことから、たっぷり執筆しました。例えば、「上場指向の大学発ベンチャーは23%なのに、上場を目指さず、安定成長を指向するのがこれを上回る29%」という数値など、おもしろいと思いました。

5年ほど前から急激に盛り上がり、ここ2年ほどで盛り下がった【大学発ベンチャー狂想曲】は、「上場で大もうけ!ウハウハ!」という米国バイオベンチャー型に期待した金融関係者らによるものだったと私は思っています。私自身、工学出身というのもあって「技術を社会で活用してもらうことを目的とした、地道な大学発ベンチャーだって大事なのでは?もちろん、玉石混淆ではあるけれど」と思っていたのですが、そんな話をしたところ、コンサルタントと商社マンと官庁出身者が、「そんなベンチャーはカスだ、税金泥棒だ」といわんばかりの反応をしてきたのです。実は春のブログに書いた、ものすごく悔しかった社会人大学院生との議論というのは、このことです。うーん、今思い出しても頭にきちゃう。だから今回、経産省が「大学発ベンチャーといえば上場指向で、ベンチャーキャピタルが後押しするという考えが強かったが、それ以外(数も決して少なくない)の支援方策も必要だ」と認めた(大学連携推進課の取材で聞いてきた)というのは絶対に、紹介しようと思ったのです。

さらに、一面の下にあるコラム「産業春秋」にデビューというチャンスが到来。編集委員になってもしばらくは執筆割り当てが免除されていたのですが、団塊世代の編集委員が続々と退職に入っているため、「これからは執筆メンバーに」と声がかかったのです。で、「記事としては書きにくい裏話」的なものを入れて(ブログ風かも)、もう一度、14日付一面でこのテーマを書いたのです。大学発ベンチャーは確かに「開店休業中」なのも少なくないけれど、意識の高いのもあるんだよと伝えるために、私の取材先のケースから、「ある大学教授兼取締役は、国に望むのは税負担や規制の緩和だけ、と言い切る」と入れました。ついでに、「(その先生が)本籍を置く大学は国公私立問わず、公的資金、つまり【もらえるお金】増額要望の大合唱なのに」ということも付けて。これは春から、大学トップが話をする席でずうっと聞いてきたことで、「どこへいってもこればっかりって、ちょっとあんまりなのでは?」と思っていたことなので、ちらりと、ね。

というわけで、この報告書一冊でだいぶ、シツコク書いてしまいました。でもね、いいんです。「大事なことは何度でも」。読者だって全部が全部、読んでいるか分からないし(大学面と一面では、読み落としが大いにありそう)、何度も言われないと新しいことは浸透しないものだから。記者は客観報道をスタンスとしますが、これくらいの主張は可という点が、うれしいですね。

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忙しくてまた、ブログの間隔が開きました。モノづくり連携大賞が決定し、28日に弊社の「産学官技術交流フェア」で表彰式や、セミナーがあるのです。私は関連記事を大量に執筆(当日、他の記者が執筆したページと合わせて、別刷りの形で会場で配られるものなど)、さらにセミナー内のパネルディスカッションのコーディネータ(司会)の準備があるので、年間でもっとも忙しい状態なのです。
大賞についてはこちら。
http://www.nikkan.co.jp/sangakukan/07zyusyo.html

セミナーについてはこちら。
http://www.nikkan.co.jp/sangakukan/nedo/index.html
ここは、去年も司会をした私の写真入りですので見てね! そして、できれば当日、来てくださいね!

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2007年11月 9日 (金)

同世代同性教授と盛り上がる

科学技術コミュニケーションに携わる、ある工学系大学の女性教授と面談(取材とはちょっと違う)をしました。同世代同性のうえ、波長が合う相手なのですぐに話が脱線しちゃいます。その会話の再現を少々。脚色率は10%ほどです。

教授「ここの資料は…。あら、ここの言葉遣い、お願いする立場なのに失礼ですね。ごめんなさい」山本「まああ、こんな言葉を失礼って感じるなんて、さすがコミュニケーションを専門にしている先生ですね。そうそう、聞いてください、この間、そちら(の大学)の産学連携関係の人にいただいたメールなんですけど、おもしろい技術だからと【取材を要請します】ってあったんです。【要請】ってちょっと適切な言葉じゃないですよね?」「え〜、それは失礼ですよ」「文科省が各大学に指示するみたいな感じ? 辞書を見たら[必要なことが実現するように、願い出て求めること]とあったから、とくに上が下に対して使う言葉じゃないのかと思ったけれど」「普通は使いませんよお。大学の人は言葉がけっこう変で、ごめんなさいね。学生も20歳半ばにもなって、あいさつもちゃんとできないというか」「研究室って朝も夜も、三々五々という感じだから、皆であいさつする感じにならないんでしょう」「コミュニケーションの授業でも、まずあいさつから指導するみたいなところがあって、なんだかね〜」「先生、がんばってくださいね。学生たちが変な社会人にならないために、ここでがんばっていただかないと」。とまあ、これは序の口。

教授「今度、トイレタリーメーカーの方に、大ヒットの〜(商品名)と消費者コミュニケーションについて講演してもらうんですよ」山本「〜はすごく売れてますもんね」「宣伝費、50億円ですって」「でも、工学系の男子学生は、〜って知らないんじゃないですか。あ、でもタレントさんをたくさんコマーシャルに使っていますよねえ」「そうなんです、あのタレントのCMっていうのは知ってはいるけれど、商品名とか全然、頭に残らないみたい」。山本「でも、工学系の男子学生って、意外に大したものだと驚いたことがあるんですよ。3年ほど前に、そちらの大学の創造性教育(モノづくり教育)の授業を見せてもらって。グループ別に議論していて、けっこうおもしろかった。それで、何かにピタッとくっついて落ちない、という設計をするのに、指導の教授がどうやってそれを実現するのか聞いたら、すかさず【○○△△(とある商品名)】って返答が学生から出て」。教授、大爆笑。しばらく笑いが止まらない。教授「なるほどねえ。その学生、彼女がいるんでしょう」山本「でも、他の学生にも受けていましたよ。だから女子大ならともかく、堅いはずの理工系男子学生もみんな知っているんだ、とびっくりして」「それはね、△△っていうからアヤシイものだと思っただけですよ、きっと。授業のあと、検索サイトで調べていますよ、みんな。なんだろうって」「そうか、そうですよね〜」。え、○○△△ですか? それは秘密ですよ。え、ヒント? じゃあヒントだけ。ピタッと付くのは、材料がシリコーンだからです。

まあ、ここまで話が弾むのは同世代同性ならだれでもいいわけではなく、かなり気が合う相手ということでしょう。でも、いつも仕事は一匹狼(オオカミというほどでもないけど、ウサギでもないし、そうか、一匹コウモリってところだ)というのもあって、とても楽しかった。実はこの時に飲んだエスプレッソ(私はコーヒーもあまり飲まない)のおかげで夜、眠れなくなってしまって。それで、この日の話を布団の中で思い出しているうちに「起きて、ブログの下書きをしようかしら」と思ったほど。原稿の執筆もこれくらいノリノリだといいのになあ(笑)。

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2007年11月 2日 (金)

大学間競争なんていったって…

珍しく、ちょっと頭に来て、会見の途中で席を立って出てしまうということがありました。某私立大学のある研究科グループの、会見というか懇談会に出たときのこと。最初から、夜の自分たち関係者のパーティとくっつけての、夕方開催で、懇談会の感じだったので、「ネタは期待できないかも」と思っていました。でも、間に立っているPR会社さんがこれまでよく動いてくれて感じがよかったから。その日は先に2件、取材が入っていて、疲れているだろうと予想されたけど、行くことにしました。実際、記者5人に教員5人って具合で、大きな発表でもないのに、平等主義で先生方を集めすぎ〜。でも質問では、私も興味があった、「ここ数年、社会人向け大学院をいくつも立ち上げているのに、今も定員割れせずにキープできているのはなぜ?」というのが出たので、ちょっと身を乗り出して回答を待ちました。

そうしたら、教員は「いやあ、去年、AさんとNさんが取り上げてくれまして…」。ふーん、大新聞のA社とN社ね。質問しているのは、社会人教育の専門誌記者さんなんですけど。よほど「大新聞に記事に取り上げてもらうと、すごい広告効果があって、しかもタダ!! またぜひぜひ!」と思っていたのでしょう。その後、「本当にAさんとNさんのおかげで…」と2回もいったのです。ふーん。A社とN社だけを呼んで、話を聞いてもらえば? …というわけで、途中退席にしました。

一方、KDDIの決算会見にインターンシップ生を連れて出たときのこと。経団連会館に部屋をとって、記者50人くらいを前に、社長が一人ですべての質問に答えての1時間でした。それが、携帯電話のライバル各社と比較しての話ばかりなのです。ちょうどナンバーポータピリティ制度から1年とか、冬商戦向けの新機種投入とか、各社比較を紙面で取り上げる時期(後で紙面を読んで知った)だったのもあります。でも、あれもこれも、他社のことを出したうえで「KDDIはどうですか?」と聞いている。たまたまその日、NTTの年金訴訟のニュースが出ていて、それについての感想を尋ねる質問が出たときには、「(業界テーマとは)関係ないじゃん」とびっくりですよ。社長自身も、別テーマで某社の独占型を批判するような発言をしていたし。

これに対して、大学だってランキングや、研究者(教員)は論文や学会で、ライバルを意識しているのでしょうけれど、【他分野の人の面前で直接、名前を上げて比較される】ようなことは、あまりないですもんね。早稲田と慶応くらいかなあ。「大学間競争が激化している」とか、「最先端の研究で世界と戦う」とか、しばしば記事で目にするし、私も書いたりするのですけど、なんだか少ししらけちゃったなあ。あ、まあ私の場合も直接、「A社とN社はこうですが、日刊さんは…」といわれたわけではないか。ん〜、ちょっと自意識過剰、だったかな?

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