なぜ手の内を見せるのか
マジシャンの「Mr.マリック」がテレビで、頻繁に手品の種明かしをしているのを見て、「こういう暴露は営業妨害になる、と同業者が怒らないかしら」と気になりました。そしてわが身を振り返りました。つまりこの取材日記ブログです。記者側の手の内を見せるような内容が最近、増えて、「我々記者は、取材先と駆け引きをしてネタをとってきているのに、山本はなんだ!」という意見が出ていないかな、ということです。
業界紙の頼れる先輩記者にそれを聞いたところ、大丈夫でしょうとのこと。「書いてある内容は、たとえば企業広報だとわりと一般的なことでしょ。大学広報はこれまでマスコミと付き合いがなかったから、今は勉強している段階なわけで。ポイントを知らせてあげるのはいいのでは」という反応でした。そうですよね。うんうん。
取材先が、取材側のことや、一般的な広報の方法を知らないために生じるトラブルは、私たちの活動にとってマイナスです。短期間で担当を変えながら【スクープを飛ばす】タイプの記者なら、一回きりのお付き合いだと割り切って、取材先をだますようなこともあるでしょう。でも、私のように担当が長くなると、ちゃんと知ってもらったうえでやりとりした方が、圧倒的にプラスが多い。だからいろいろなことを伝えるのです。広報さん向けの講演会で話をした時のことですが、その後の聴講者アンケートで、「マスコミと敵対する向きがあったが、記者側の話を聞いて、協力する気になった」というのがありましたもん。もっとも、「協力する(してあげる)」かあ、「マスコミを活用してやろう」という姿勢の方がお得ですヨ、と付け加えたくはなりましたが。
そもそも、こちらの立場とか、ちょっとした悩みとか、個人的なこととか、自分から相手に見せる(話したり、書いて知らせたりする)というのは、人と人とのコミュニケーションでは大事なことだと思います。「私はオープンマインドで、あなたを好ましく思っていますよ」と示すことになり、それは広い意味での、親しい関係に進むための第一歩となるからです。ちょっと極端な話で例えると、たとえばうんと社会的立場の高い人が、自分にそうしてくれたら感激しちゃうでしょう? 通常の人間関係だって、ガードを固めたままのガチガチの人よりも、先に胸襟を開いてくれるような余裕がある人の方が、格は上。そういう人のところへ、皆、寄って行きたくなるし、情報だって集まるものでしょう。
Mr.マリックでいうと先日の番組で、若手マジシャン数人をテーブル傍に座らせて手品をし、「さあ、今度は君が同じ手品をやってごらん」というように振るというゲーム(?)をしていました。若手というのもあって、追随できないケースが続出。Mr.マリックは種明かしをし、すぐに次の手品に進むというのを繰り返すという、技術レベルの高さと余裕にびっくりしました。うーん、私も負けてはいられない(笑)。来年のブログでは、取材先のみならず、大勢の同業他社の記者が、ノウハウを盗むべく、ブログを熟読してくれるレベルを、目指すことにいたしましょう。では、皆様、よいお年を。
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