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2008年3月 4日 (火)

野依理事長の戦々恐々取材

初めて理化学研究所の野依理事長取材をいたしました。成果は、2月20日付一面トップ「大学院改革 工学系に『専門職型』 野依理研理事長が構想 実践力を強化」と、3月3日付1面インタビュー「大学院改革 教員の指導法を変えよ」です。お邪魔する時は戦々恐々でしたが、それなりの記事を書くことができました。

実をいうと野依先生のことは私、大学院生の時から存じ上げているんです! 不斉合成をちょっとかじったから。野依論文を読みながら実験をしたクチなのです。当時の学生間のおしゃべりでさえ、「ノーベル賞を狙っているんだって〜」と出ましたよ。その待ちに待った(失礼!)ノーベル賞受賞の時、私は科学技術の担当で、受賞決定まもなくの日本化学会での会見に出席。中日新聞の質問に、特別、批判的なものではなかったにもかかわらず、「一面に中日ドラゴンズのことが出ているが、それでいいのか」みたいなことをいって、「お祝いムード一色であるだろう受賞会見でも、こんななんだ〜」と驚いたものです。

最近の注目は、教育再生会議で去年の6月に出した「同一大学内での進学は最大3割に」の提言でしょうか。そんなむちゃくちゃな、というのが大学人一般の反応だったでしょう? あと文科省のグローバルCOEの採択会見では、「大学院教育についての先生の強調部分が、うまくマスコミに(当然、一般社会に)伝わっていないな」というのを感じました。そんなのもあり、今回改めて、大学院改革をうかがいに行ったのです。

初対面ですから、最初のご挨拶も緊張です。私は論文読んでの実験や、受賞後会見出席のことを伝えました(その時の感想は…ナイショでしたが)。「私はずうっと、科学技術(とくに化学)と大学を取材し続けているのです。だから、他の記者よりしっかり書きますヨ」とPRするために。そうしたら、「そう、話が合いそうだね」っていってくれました! だって、「なんだ、こんなヘボ記者」って足蹴にされたら困ると思っていましたから。

そして、お話を聞いてみると、これがおもしろいんです! 話が明確で、批判だけでなく対策を示してみせるし。きつく聞こえるのは確かだけど、それはこちら(マスコミ)がうまく処理すればいいだけの話で。最近、「野依先生とは30年来のおつきあい」という化学会社役員にお会いしたのだけど、「企業はここがダメだ」「「いや、アカデミックの研究者はそう見るかもしれないが、企業はちゃんと意識していて…」とガンガンいい合っている様子でした。うーん、理事長の「率直さ」が、相手によって良くも悪くも大きく響く、ということでしょうか。

今回、取材を思案したのは、あるところから専門職型の工学系大学院の話を聞いたのがきっかけでした。正直言って最初はおっくうで、多少、資料が手に入ったため「取材せずに書けないかしらん」と思っちゃいました。でももちろん、そういう訳にはいきません。予想通り、取材の調整は、理事長の厳しい注文もあって手間がかかりました。でもね、メリットも一つ。普通、こういうおもしろいネタは、「うろうろしていると、他紙に載っちゃう」と心配するのですが、今回は掲載までずいぶんかかったにもかかわらず、大丈夫だという自信があったのです。「私でさえこれだけ、アプローチを思案するのだから、駆け出し記者を含め、そうそうアタックはしてこないでしょう」というわけです。ほほほ。

ところで、先生は私のこと、覚えてくれたのかなあ。なにしろ、我が道を行く先生ですからネ。「誰これ?」ってどこかでいわれていそうな気も…。

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