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2008年7月 9日 (水)

技術評価委員のお手伝い

先日、某公的研究運営機関の研究プロジェクトに対する技術評価委員の仕事をしてきました。委員会での発言はきっちり公開されるそうですが、今の時点ではブログでは具体的には明かさないでおこうかな。ちょっと恥ずかしいから。というのは、最初、「えーっ、このテーマで技術評価? なぜ私に?」と思ったテーマでしたから。ウエブで「○○とは」って検索しちゃったほどです。相手に聞いたところ、とある冊子で私の経歴が出ていて、「この専攻なら委員にぴったりだと内部で話がまとまりました」とのこと。まあ、180度違うという訳ではないけれど、自信がなくて。評価委員のほとんどはその分野の研究者なのですが、ただ社会の仲介者としてのマスコミ人を一人、入れるのが通例だとか。弊社でも何人かが経験ありだったので某氏に相談したところ、「いい経験だから引き受けては。まあ、他は皆、専門家ばかりで、【まな板の鯉】状態だけど」といわれて。【まな板の鯉】?? それって居心地が悪くて、専門家から非難の目を浴びている気分、ってことか…。でもね、プロジェクトリーダーが超有名なA先生で、「うーん、A先生率いるプロジェクトを私が評価するのか。かっこいいやん」という理由もあって(笑)、まあ一度くらいは、と思って引き受けたのでした。

それが事前の担当者の説明も、当日の発表も分かりやすく、よくできていてね。プロジェクト予算が大きいだけに、こういうところもしっかりしているのでしょう。それに研究の進展状況がすばらしく、参加企業も前向き(一部は公開で、メーカーの人30人が聴講する中でのやりとり。さらに一部は非公開での議論でした)で、「数年後にはこんなところや、あんなところに使われるんだ」と思うとわくわくしちゃいました。最後の委員一人ずつからのコメントでは、「今日は成果をうかがい、社会につながっていくのだというのが実感され、変な表現ですが楽しかったですし、うれしかったです」といっちゃった。いいんだもん、こういう表現で。しょせん、専門家ではないのだから。

あと、【専門家ではないゆえに期待されている部分】も実感しました。その技術は安全性がちょっと取りざたになっていたので、それについてはやはり私が質問をせねばいけないのかしらん、と思って尋ねました。他の委員(大学の先生方)は「だいたいの(研究成果の)数値は学会で聞いていましたが」っていうレベルで、きっと安全性に問題がないって周知のことなんだろうと思ったから。そうしたら! A先生が深〜くうなずいて、資料を次々に出してきて、熱心にプレゼンをしてくれたのでした。そうか、やっぱりちゃんと用意していたんだ。ついでに、隣の席の委員の先生まで、「マスコミの人が安全性で〜というように取り上げるけど、騒ぎすぎですよ」とA先生の援護射撃。ま、評価委員といっても、学術における専門家同士ゆえ、仲間意識なのは致し方ないですネ。結局、「安全性についてはこの機関でもしっかり調べている最中だし、万が一、黒でも大丈夫なような実験&製造の仕組みを整えている」ということが分かりました。

本当は当初、期待されている通りの質問をするのがおっくうで、どうしようか悩んだんです。だって、取材先に言われたとおりに動く、思慮の浅い記者みたいじゃないですか。でも、ここで私が聞かなければ、A先生の説明もなく、委員会報告がHPで公開されても「安全性については知らんぷり」みたいになったわけです。その意味で、「社会と技術をつなぐ立場にあって、期待されている通りの振る舞いをする」のも重要なのでしょう。記事を書く場合もそうですね。相手が何を自分に期待しているか、それを理解したうえで、自ら適切な行動を判断して選ぶ。それが大事なんだと思いました。

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