独自記事の書き比べ
今年のインターンシップ生の実践指導で実感したのは、独自取材(一社の単独取材)に行って、話を聞き、オリジナルの原稿を書くというのは、取材者によってずいぶん違いがあり、それだけ難しいということでした。研修のうち産学連携関係は私が連れて歩いていて、某TLOの取材でおもしろい話が出てきました。そこで、インターンシップ生に背景など説明したうえで、「さあ、ニュースを記事にしてみよう!」と前文をぞれぞれ、執筆してみたのです。私が書いたものと、インターンシップ生が書いたものはどこが違って、どこが同じか、比べてみるために。そして「どう、できた?」とのぞき込むと…。
うーん。言いそうになったのは、「記事になっていない」、つまり「記事といわれる文章の形をなしていない」ということでした。ニュース記事のつもりで書いたというのなら「何が新しいのか分からない」し、ニュースではなく読み物記事にするつもりだとしたら「何がおもしろいのか通じない」という感想でした。ただ、「記事になっていない」という言い方は、キツイ表現ですよね。デスクが新人記者を鍛えるためにあえて言うような言葉でして。そこで「私が書いたのは、こんな感じ。書き方は全然、違うねえ」といいながら、指導をいたしました。
取材先があれこれたくさん話した中から、「これが新しい(おもしろい)話では?」と【発見】し、さらに読み手に「これはすごい」と思わせる(思わせてしまう)文章を書く。それは記者に強く求められるも、普段の生活では得られにくい感覚、のようです。「これがニュースです」と最初から書いてある発表資料ならば、センスがある人は(記者でなくても)記事にすることができるでしょう。それを考えると、独自記事の難しさは段違いといえそうです。あ、でも記者だけでなくてもう一つ。広報さんにも必要な力量、です。
弊社記者はOBになってから、企業や大学の広報のお手伝いをすることがあります。広報と報道は対であり、【逆の立場】と思われがちです。不祥事の報道などで【敵対する】ようなこともありますからねえ。でも、上記の話の意味では【同じ立場】の面がかなりあるのです。組織の中の、当事者はとくにニュースと思っていない事柄から「これ、おもしろいんじゃない? マスコミに声をかけてみようか」と見つけたり、新しい話らしいけれど要点が今ひとつという担当者の説明を聞いて「どう書いたら、ニュースになるのか? マスコミが取り上げてくれるのか?」と考えるからです。親しい某OBは、「大学の研究者にもらった資料(本人は、すでに発表資料の形をしていると思っている)がよく分からないとさ、書き直すのに2時間くらいかかっちゃって、たいへんだよ~」といっていましたっけ。
インターンシップ生の将来のキャリアはまだ明確ではないのですが、技術関係のどんな仕事についても、今回の経験は生きてくるのでしょう。とくに【独自記事の書き比べ】が、予想以上におもしろかったことに、二人とも感激しまして。その練習は実は最終日に執筆したんですよ。難しい研修内容だと思ったから。でも、「(こんな具合なら)もっと早くトライすればよかったかもね」と思い直していうと、インターンシップ生は「次回からはぜひ(そうしてください)!」って。す、すみません、私の至らなかった点です、それは。…鋭い学生がくるとこちらも刺激されること多し、です。
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