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2008年9月

2008年9月29日 (月)

独自記事の書き比べ

今年のインターンシップ生の実践指導で実感したのは、独自取材(一社の単独取材)に行って、話を聞き、オリジナルの原稿を書くというのは、取材者によってずいぶん違いがあり、それだけ難しいということでした。研修のうち産学連携関係は私が連れて歩いていて、某TLOの取材でおもしろい話が出てきました。そこで、インターンシップ生に背景など説明したうえで、「さあ、ニュースを記事にしてみよう!」と前文をぞれぞれ、執筆してみたのです。私が書いたものと、インターンシップ生が書いたものはどこが違って、どこが同じか、比べてみるために。そして「どう、できた?」とのぞき込むと…。

うーん。言いそうになったのは、「記事になっていない」、つまり「記事といわれる文章の形をなしていない」ということでした。ニュース記事のつもりで書いたというのなら「何が新しいのか分からない」し、ニュースではなく読み物記事にするつもりだとしたら「何がおもしろいのか通じない」という感想でした。ただ、「記事になっていない」という言い方は、キツイ表現ですよね。デスクが新人記者を鍛えるためにあえて言うような言葉でして。そこで「私が書いたのは、こんな感じ。書き方は全然、違うねえ」といいながら、指導をいたしました。

取材先があれこれたくさん話した中から、「これが新しい(おもしろい)話では?」と【発見】し、さらに読み手に「これはすごい」と思わせる(思わせてしまう)文章を書く。それは記者に強く求められるも、普段の生活では得られにくい感覚、のようです。「これがニュースです」と最初から書いてある発表資料ならば、センスがある人は(記者でなくても)記事にすることができるでしょう。それを考えると、独自記事の難しさは段違いといえそうです。あ、でも記者だけでなくてもう一つ。広報さんにも必要な力量、です。

弊社記者はOBになってから、企業や大学の広報のお手伝いをすることがあります。広報と報道は対であり、【逆の立場】と思われがちです。不祥事の報道などで【敵対する】ようなこともありますからねえ。でも、上記の話の意味では【同じ立場】の面がかなりあるのです。組織の中の、当事者はとくにニュースと思っていない事柄から「これ、おもしろいんじゃない? マスコミに声をかけてみようか」と見つけたり、新しい話らしいけれど要点が今ひとつという担当者の説明を聞いて「どう書いたら、ニュースになるのか? マスコミが取り上げてくれるのか?」と考えるからです。親しい某OBは、「大学の研究者にもらった資料(本人は、すでに発表資料の形をしていると思っている)がよく分からないとさ、書き直すのに2時間くらいかかっちゃって、たいへんだよ~」といっていましたっけ。

インターンシップ生の将来のキャリアはまだ明確ではないのですが、技術関係のどんな仕事についても、今回の経験は生きてくるのでしょう。とくに【独自記事の書き比べ】が、予想以上におもしろかったことに、二人とも感激しまして。その練習は実は最終日に執筆したんですよ。難しい研修内容だと思ったから。でも、「(こんな具合なら)もっと早くトライすればよかったかもね」と思い直していうと、インターンシップ生は「次回からはぜひ(そうしてください)!」って。す、すみません、私の至らなかった点です、それは。…鋭い学生がくるとこちらも刺激されること多し、です。

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2008年9月19日 (金)

技術系修士卒だから書ける部分

今年のインターンシップ生を連れて出席した記者会見から、12日付大学面で「採用の選考 最終学年で 企業に自粛要請 国立8大学院化学系24専攻」を書きました。旧帝大+東工大の工学系長会議をベースに、とくに修士の採用活動が早い化学系の先生方が要望書をまとめたという話です。この件はどう書いたらいいのか、当初から迷っていました。というのは少し前に、国立大学協会など国公私立大の団体で似た形の発表をしていて。それと比べると規模は当然、小さいわけですから。

それでも工夫をして、「実験系の修士学生として過ごした経験がある私だからこそ」の視点を入れて記事にしました。具体的には「長期の就職活動で学生が研究のおもしろさを知る時期を失い、企業に大きな損失となっている点を(大学教員は)強調し…」というのと、「学生が、小さくても世界初の研究成果の経験をした後に、短期集中で就職先を絞り込むべきだと(教員は考える)…」という部分です。とくに後者は、インターンシップ生も「私も、そうそうって思いました」という感じの反応をしてくれました。

技術系の学部4年生の教育は、いわれた実験をちゃんとする力を付けさせるのが目的。修士課程は「研究とはこういうものなのか」と実感し、研究の基本を身につけるための教育。博士課程は、研究の仮説設定からその実証まで、一人でやりとげられる力を付ける人材の育成だと私は考えています。だから、教員は「自分の研究がなんたるかを理解する前の、修士1年秋から学生は就職活動でずっと浮わついている。そのまま修士を終えるのでは、本人にとっても社会(企業)にとっても大きな損失だ」と感じているわけですね。一方、企業の人事担当者は文系のことが多くて、そのあたりはあまり知らないでしょう。とにかく「ライバルにいい人材を採られまい」と採用活動を前倒しにして、その結果、「ろくな人材がいない。大学の教育はなっていない」となっているのではないかしらん。修士出身の私が、教員の考えを理解できるからこそ、企業側とつなぐ記事をかける部分がある、とちょっと誇らしく思いました。

でも実をいうとこの記事、積極的に書くつもりはなかったんですよ。会見が終わるまで。「なんで一般紙が全紙、それにテレビカメラまで入って、フルに1時間かかる大がかりな会見になったのかな? 一般紙もたいして記事にしないだろうに(実際、そうでした)。どのくらい大きい話か、会見案内の内容だけでは皆、判断できなかったのかなあ」と思っていたくらいです。ところが、終わったところでインターンシップ生(修士2年、就職はメーカーに内定済み)が「ものすごく身近なテーマだった」と興奮してて。「そうか。となると適当に流した記事にしてしまうのは、あんまりだな」と思い直したのです。それで、取材メモを読み直してみると、おおお、なるほど先生方の【思い】はここにあるのだな、と気が付いたという実情です。取材では年長者が相手のことが多いだけに、取材とは違う部分で若い人と交流し刺激を受けるのは大事なこと、ですね!

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2008年9月11日 (木)

「ポーズ写真」と聞くと…

先日、記者クラブで他紙の記者が電話で話しているのを聞いて、気になった言葉がありました。それは「ポーズ(写真)」という言葉でした。これはインタビュー記事などに使う上半身の姿で、少し動きのあるものを指します。記念撮影みたいなのではなく、話している雰囲気が出ていて、身振り手振りが入っているのがよいとされています。

でも、その「ポーズ」という言葉で、皆さんはどんなものを想像しますか? 私が頭に思い浮かべてしまったのは、片手を後頭部に置いて、もう一方の手を腰に当てた、グラマラスな女性が「ポーズを取っている」イメージ…。私って、ヘン?(笑) でも、「意識してかっこうを付けた姿態」を指す、といった雰囲気がこの言葉にあるでしょう? どうやら、一般イメージとは違う新聞業界用語といえそうです。

こんなことを考えたのは、今週からインターンシップ生4期生(4年目)の指導に入っているせいでしょうか。「新聞社以外の人が見たら・聞いたらどう思うか、それに対してどう説明するか」を考えてしまうのです。そこで、「??」という業界用語について時々、ブログで解説していくことにしました。短いブログをさっと書きたい時に。…そう、今週はもうなんだか、へとへとなのです。インターンシップ生はいい子で楽しいのですが、張り切ってあれこれアポを入れすぎたせいでしょうか…。というわけで今日は短く終えることにします~。

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2008年9月 4日 (木)

スクープ記事の意味

取材に訪れた初対面のAさんに、その少し前に書いた一面トップの記事で、とても褒めてもらう経験がありました。その記事のネタ元は、Aさんと一緒に動いている別の機関(共同研究相手みたいな感じ)のBさんだったので、Aさんがその話を持ち出すのは不思議ではないのですが、なにしろ初対面だっただけに予想外でした。「あちこちで、あの記事のコピーを手にした人に、『この件はどうなっているんですか!』と迫られましたよ」というのです。う、うれしい。そんなに反響があったんだ! 

私に「いい記事でしたね」と親しい方が直接、いってくれるのは、お愛想という面もあるでしょう。だけど、私がいない場で、記事にかかわる利害関係者が(利害があるからこそ真剣に)反応していた、というのは、本当の意味での反響ですよね。今、思い出しても顔が緩んでしまうほどの、記者冥利です。もう一つ言うと、Aさんたちの業界(みたいな世界)はわりとクールな業界なのです。それなのに、帰り際はエレベーターに乗るところまで見送ってくれた(送ってくれる時に、話をしてくれた)というのも、感激でした。とと、Aさんにばかり感激していてはいけません。Bさんがネタを提供してくれたからこそのこと、決してBさんへの感謝は忘れておりません…。

「どうして新聞社・記者はスクープ、スクープって騒ぐのかなあ。そこで書かないと表に出てこない社会部的なものは、分かるよ。でも、数日すれば発表されるものに、エネルギーを注ぐことはないんじゃないの」といわれることがあります。でも、例えば今回の話は、一般紙全紙が飛びつくほどの内容ではありません。発表後だったらたぶん、私と、あと専門紙1、2紙が【ひっそりと】書くだけだったでしょう。結局、ほとんどの人の目にとまらない。でも、うちのスクープだということで弊紙の一面トップを取れたわけです。関係者(記事を手にAさんに詰め寄った人たち)に対する情報提供だけでなく、一般の読者にも「そうか、このテーマは今、盛り上がっているんだ」と知らせることができたわけです。これってちょっと、特許に似ている気がします。一般にオープンにすると(発表ニュース)ビジネスにはならないから、結局、その技術にはだれも手を出さない(記事にならない)。特許(スクープ)として発明者(記者・新聞社)の権利独占を認めるからこそ、実用化(一面トップ掲載)されて世の中で使われるようになる…。

それで、どの記事がその一面トップかというと、それはここでは言わないことにします。だって、そこまで打ち明けると、あまりにあからさまで、自慢話に過ぎるから。まあ、今の状態でも十二分に自慢話ではありますが…。

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