技術系修士卒だから書ける部分
今年のインターンシップ生を連れて出席した記者会見から、12日付大学面で「採用の選考 最終学年で 企業に自粛要請 国立8大学院化学系24専攻」を書きました。旧帝大+東工大の工学系長会議をベースに、とくに修士の採用活動が早い化学系の先生方が要望書をまとめたという話です。この件はどう書いたらいいのか、当初から迷っていました。というのは少し前に、国立大学協会など国公私立大の団体で似た形の発表をしていて。それと比べると規模は当然、小さいわけですから。
それでも工夫をして、「実験系の修士学生として過ごした経験がある私だからこそ」の視点を入れて記事にしました。具体的には「長期の就職活動で学生が研究のおもしろさを知る時期を失い、企業に大きな損失となっている点を(大学教員は)強調し…」というのと、「学生が、小さくても世界初の研究成果の経験をした後に、短期集中で就職先を絞り込むべきだと(教員は考える)…」という部分です。とくに後者は、インターンシップ生も「私も、そうそうって思いました」という感じの反応をしてくれました。
技術系の学部4年生の教育は、いわれた実験をちゃんとする力を付けさせるのが目的。修士課程は「研究とはこういうものなのか」と実感し、研究の基本を身につけるための教育。博士課程は、研究の仮説設定からその実証まで、一人でやりとげられる力を付ける人材の育成だと私は考えています。だから、教員は「自分の研究がなんたるかを理解する前の、修士1年秋から学生は就職活動でずっと浮わついている。そのまま修士を終えるのでは、本人にとっても社会(企業)にとっても大きな損失だ」と感じているわけですね。一方、企業の人事担当者は文系のことが多くて、そのあたりはあまり知らないでしょう。とにかく「ライバルにいい人材を採られまい」と採用活動を前倒しにして、その結果、「ろくな人材がいない。大学の教育はなっていない」となっているのではないかしらん。修士出身の私が、教員の考えを理解できるからこそ、企業側とつなぐ記事をかける部分がある、とちょっと誇らしく思いました。
でも実をいうとこの記事、積極的に書くつもりはなかったんですよ。会見が終わるまで。「なんで一般紙が全紙、それにテレビカメラまで入って、フルに1時間かかる大がかりな会見になったのかな? 一般紙もたいして記事にしないだろうに(実際、そうでした)。どのくらい大きい話か、会見案内の内容だけでは皆、判断できなかったのかなあ」と思っていたくらいです。ところが、終わったところでインターンシップ生(修士2年、就職はメーカーに内定済み)が「ものすごく身近なテーマだった」と興奮してて。「そうか。となると適当に流した記事にしてしまうのは、あんまりだな」と思い直したのです。それで、取材メモを読み直してみると、おおお、なるほど先生方の【思い】はここにあるのだな、と気が付いたという実情です。取材では年長者が相手のことが多いだけに、取材とは違う部分で若い人と交流し刺激を受けるのは大事なこと、ですね!
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