スクープ記事の意味
取材に訪れた初対面のAさんに、その少し前に書いた一面トップの記事で、とても褒めてもらう経験がありました。その記事のネタ元は、Aさんと一緒に動いている別の機関(共同研究相手みたいな感じ)のBさんだったので、Aさんがその話を持ち出すのは不思議ではないのですが、なにしろ初対面だっただけに予想外でした。「あちこちで、あの記事のコピーを手にした人に、『この件はどうなっているんですか!』と迫られましたよ」というのです。う、うれしい。そんなに反響があったんだ!
私に「いい記事でしたね」と親しい方が直接、いってくれるのは、お愛想という面もあるでしょう。だけど、私がいない場で、記事にかかわる利害関係者が(利害があるからこそ真剣に)反応していた、というのは、本当の意味での反響ですよね。今、思い出しても顔が緩んでしまうほどの、記者冥利です。もう一つ言うと、Aさんたちの業界(みたいな世界)はわりとクールな業界なのです。それなのに、帰り際はエレベーターに乗るところまで見送ってくれた(送ってくれる時に、話をしてくれた)というのも、感激でした。とと、Aさんにばかり感激していてはいけません。Bさんがネタを提供してくれたからこそのこと、決してBさんへの感謝は忘れておりません…。
「どうして新聞社・記者はスクープ、スクープって騒ぐのかなあ。そこで書かないと表に出てこない社会部的なものは、分かるよ。でも、数日すれば発表されるものに、エネルギーを注ぐことはないんじゃないの」といわれることがあります。でも、例えば今回の話は、一般紙全紙が飛びつくほどの内容ではありません。発表後だったらたぶん、私と、あと専門紙1、2紙が【ひっそりと】書くだけだったでしょう。結局、ほとんどの人の目にとまらない。でも、うちのスクープだということで弊紙の一面トップを取れたわけです。関係者(記事を手にAさんに詰め寄った人たち)に対する情報提供だけでなく、一般の読者にも「そうか、このテーマは今、盛り上がっているんだ」と知らせることができたわけです。これってちょっと、特許に似ている気がします。一般にオープンにすると(発表ニュース)ビジネスにはならないから、結局、その技術にはだれも手を出さない(記事にならない)。特許(スクープ)として発明者(記者・新聞社)の権利独占を認めるからこそ、実用化(一面トップ掲載)されて世の中で使われるようになる…。
それで、どの記事がその一面トップかというと、それはここでは言わないことにします。だって、そこまで打ち明けると、あまりにあからさまで、自慢話に過ぎるから。まあ、今の状態でも十二分に自慢話ではありますが…。
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コメント
クルマや機械などはある種スクープ性というか速報性がカギを握るかもしれません。
しかし、科技は、「一朝一夕」ではない。
長い積み重ねの結果だから、その分反響も大きいのかもしれませんね?
ただ、言えることはYさんの今までの積み重ねた
「人徳」がこのような結果につながったのではないかと思います。
記者もある意味「営業」とにたところがありますよね。
でも、良かったですね。
投稿: watoson | 2008年9月 6日 (土) 23時39分