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2008年11月

2008年11月28日 (金)

取材相手以外からの変な抗議に対しては

書いた記事に対して抗議がくる、というのは、もっとも緊張する出来事の一つです。記事掲載直後の電話のかけ手が取材相手だと分かると、どきっとします。「山本さん、記事をありがとうございました」と耳にしても安心はできません。「でもちょっと問題が」と続く可能性があるからです。こちらの明らかなミスではなくても、取材に応じてくれた相手がどう感じたのか、ということは、きちんと受け止めるべきだと思っています。

ところが、取材当事者とは違う人に抗議され「それはちょっと、怒り方が違うのでは」と思うこともたまにあります。一つは半年前に書いた、間接経費ピンハネの記事です。記事が載って周辺にあれこれいわれたので、取材相手のA先生は怒っているかなあというのは気になりました。でも後日、文科省のエレベーターホールで会った時には、記事の文句は何もでなかったのです。よかった。まあA先生が急いでいて、私の顔=問題記事、というほど頭が回らなかっただけかもしれませんが。ところが、記事からだいぶたってから某旧帝大の産学連携関係のB先生にまったく別件で取材をお願いしたら「ピンハネなんて下品な記事を書く記者の取材は受けたくありません」って拒否されていまいました。何ですかそれ?? 書き手が知人の記者だと分かっているのだから(私はその記事に署名を入れていた)、B先生の主張を入れつつやりとりしてくれればいいのに、最初から拒絶というのは…。まあ、激論するほどでもないと思い、「私としてはこういう意図で、取材先のこういう反応を元に、意味がある記事だと思って書きました」と説明のメールを送って、「ではまたいずれ…」と結びました。

もう一つの件は、C大学C先生の取材で書いた記事に対して、掲載後すぐに官庁のD氏に呼び出しをくらったことです。C先生は「○をしようと検討している。その場合は△の方法を採ることになるだろう」といいました。話の流れから、△以外の方法は考えていないと分かったので、私は「C大学は△をする」と多少、踏み込んだ書き方の大きな記事にしたのです。それに対してD氏は「C大学が△するというのは今の国の仕組みではできないことだ!」と怒っているわけでした。はあ。C先生もそれは知っていて、工夫をするとはいっていました。それにしてもこの記事、主語はC大学なんですよ。D氏はまず、C大学に対して「こんなことはできないはずだが、どう考えているのか?」と問い合わせ(指導じゃなくて)するのが筋だと思うんだなあ。私はD氏に「この仕組みは複雑でどの大学もマスコミも、間違えて解釈していますよね。早く仕組みを整備して、勉強会を開いてくださいね」と伝えました。一方、気になっていたC先生の反応は、「問題ないですよ。(役所に)説明しておきますよ」と余裕ある回答でした。さすが。

駆け出し記者だった頃は、相手が怒っているとそれだけで萎縮してしまいましたが、さすがにもうそういう年齢ではありません。上記のようなトラブルでは、相手の言い分を聞いて、記者としてどうあるべきだったか考えたうえで、必要な部分だけ反省します。抗議がくることを心配してばかりいると、危ない表現を削除するばかりで、おもしろい記事は書けなくなってしまいます。社会部事件記者に比べると、科学技術とか文化とかの記者は品がある(?)印象がありますが、それでもおもしろい記事を書く記者ならば、気が強い一面が必ずあるはず。…と記者仲間の顔を思い浮かべる私でした。

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2008年11月21日 (金)

連携大賞における地域・中小企業の力

日刊工業新聞の第三回モノづくり連携大賞が少し前に決定しました。http://www.nikkan.co.jp/sangakukan/08zyusyo.html

(実は最初、紙面のPDFを掲載した弊社HPの方にリンクさせたのですが、watsonさんに「著作権が…」とコメントをいただいたので後日、テキストバージョンのHPリンクに替えました。失礼いたしました。)

さらに今日(11月21日)付8ページ目に特別企画も載りました。改めて思うのは、応募・入賞案件から地域の大学・産学連携の熱意がすごーく感じられるということです。特別賞はとくに、「すべての点で優秀、というわけではないけれど、がんばっていて応援したい事例を」という審査委員会の意識を反映し、けっこうバラエティーに富んでいるでしょう? 本当のところは、「こんなに小さな案件(中心が社員数人の零細企業など)で大丈夫かな」とやや不安になるケースもあるのですが、「こういうところも応援してくれるんだ」と感じ取ってもらい、励みにしていただいているようです。

今日付の紙面の中では小宮山宏審査委員会委員長(東大総長)の審査講評も入れました。「入賞案件は小さな製品に見えても、(日本全国など)皆が使うようになれば、実体経済につながり、実需を喚起するという意味で重要だ。世界的な経済危機が起こったのは、魅力的な製品がなく消費ニーズが停滞しているのに、金融で無理矢理需要を引っ張った結果の失敗だ」と述べています。取材していて、「そういう見方があるんだ~」と感心したコメントを使いました。

来週、贈賞式のあと上位4賞の代表者によるパネルディスカッションがあり、コーディネーターをする予定です。中小企業総合展の中で行うので、中小企業と地域がテーマの一つになるのですが、実は私はこのどちらもあまり得意ではないのです。今なら新人記者は支局配属から始まるのですが、私の世代の入社時は特殊事情があったので経験せずじまい。一度も転勤したことがないのは、自身のキャリアとしてもイマイチだと思っていて、いつかは東京近郊以外で生活してみたいと思っているのですが…。あ、これ非公式のおしゃべりですよ~。今はまだ、上層部が「山本さん、転勤志望だって?」と異動させるような事態になると困るものですから。

というわけで現在、このテーマに詳しい私のキーパーソンに「ポイントはどの辺でしょうね?」と問い合わせしている状態です。まあ、だれでも得意不得意はあるのだから、と開き直って。得意でも不得意でも、とにもかく話を聞かせてもらったり、アドバイスをお願いしちゃったり、記者というのはずいぶんお得というか、ずうずうしい職業だと改めて感じています…。

追伸)パネルの実施報告は、大賞受賞の九大・坂本さんのブログをご参考ください!http://akarisaka.yoka-yoka.jp/t170332

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2008年11月14日 (金)

基本データを用意せずに会見とは…

先日、国立H大と私立K大の連携協定の発表に出たときのこと。両大学が得意なあるテーマから包括連携に発展させたもので、その背景を説明するのに、「K大には~センターがあって」「H大では…のプロジェクトがあって」「××という名称で国の助成金を得て」と話してくれました。話して、です。つまり、紙に書いていない。よく分からない名称を記事に書くわけにいかないんですけどねえ。仕方がないので終わってから、発表者に近づいて尋ねたのですが、なんか今回の会見をあまり重要だと思っていないのが見えてしまって、がっかりしちゃった。

発表者の大学幹部は「今日はチャールズ皇太子夫妻が来るんですよ」とうれしそうな顔をして、質問を事務方に後に押しつけて歩き去ろうとする。まあK大の広報なら発表好きだから、資料をそろえた事務担当者がいるかと思ったら、これも期待はずれ。そうかあ、チャールズ皇太子夫妻の大イベントにかかりきりなんだ。だいたい、この手の発表は「相手大学との調印」と「マスコミ向け会見」を一遍にやってしまう設定なので、どっちつかずになりがち。さらにそんな大イベントがあるなら、会見はこの日を避ければよかったのでは? もしくは学長同士の調印だけにして、マスコミ向けには資料配付だけとか。朝9時から呼び出されたこちらとしては、あんまりおもしろくなかったなあ。

発表の際、メーンのリリースのほかに用語説明や基本データがあるかどうかは大きいです。研究成果のリリースでは、わりと充実した用語解説が付いています。それを載せないと、ボツになると分かっているのでしょう。文科省の発表で「いいな」と思うのも、参考資料がわりとちゃんとしていることです。注目の新事業の採択で、全国のどこの大学・地域が採択されたか、日本地図で表していたりすると、「このまま紙面で使おう」って判断します。普通の取材でも、「これについてはデータがありますので、後でお渡ししましょう」といわれると、さすがって思います。独自じゃなくて国の統計などでもいいのです。適度に資料を用意する手間を踏んでもらえると、こちらも相手の気持ちに応えたくなるものです。

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風邪がようやく終盤戦です。本当に2週間、ずっとマスク女でした。なんて免疫力が低いんだろうと落ち込んでいたんだけど、「今年の風邪は長引いて大変な人が多い」と知って「私だけじゃないんだ」と元気になったりして…。今日が締め切りのコラムでも、風邪の話を導入部に使ってやろうっと。

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2008年11月 6日 (木)

原稿より健康

風邪をひきました。私にとってはまあ通常の重さと対応、つまり「薬は飲まずに(いつも飲んでいると、ここ一番の仕事前に効かなくなっちゃうから)、睡眠毎日9時間、朝夕の勤務時間はややカット気味、これで10日間粘って、週末を経てようやく回復」というパターンです。…ちょっと個人情報を詳細に出しすぎかしらん? 私は「唯一の」とはいわないけど、「弱点の一つ」が、あまり頑強じゃないということなのです。

新聞業界には「原稿より健康」「健康より原稿」という言葉があります。どちらの言葉が使われるかは、記者本人の担当内容とか上司の事情とか、周囲との関係とかによって違ってきます。私は今回、風邪声がひどいこともあり、在席の文科省記者クラブから電話やりとりに限られる、本社の上司もすぐ反応。「それは早く帰って寝た方がいいよ」といってもらいました。声をかけてもらえるのはやっぱりうれしい。その後に、「~の記事出稿のめどを付けたら」って追加されるんですけどね。

今日は取材も一件入っています。相手が忙しい方で、「ピンポイントのこの日しかなくてすみません」といわれて調整した案件です。喉が悪化した時のために、以前やったみたいに質問を紙に書いて見せる方式を準備していこうかな。「私からは音声が発せられないので、すべての時間を先生が話しきってくださいね」といってみますか。「風邪をおしてきたので、ぜひ大きなネタをお願いします~」と甘えて(?)みるのはどうかな。それとも「いいネタが出なかったら、マスクをはずしてうつしちゃうぞ! 大事な仕事(海外出張とか)が滅茶苦茶でいいんですか?」と脅してみるか。こんな思案をするってことは、どうやら体調も回復傾向にあるようですね…。

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