調査数値の扱いって難しい
6月19日(金)付大学面に、「博士修了者の進路 海外活躍組わずか2% 半数が研究開発関連職 5年間の全数調査で判明」を書きました。文科省の科学技術政策研究所の調査で、ダイジェストを使ったレク(記者向けレクチャー)を受けて、調査結果の冊子本体も手元にあったうえで、執筆しました。「簡単に書けるな」と思っていたのですが今回、数値の扱いで迷ってしまいました。
アンケートの博士課程修了直後の職業について、データを紙面で紹介しようとしたのですが、不明がものすごく多くて。つまり、「修了直後の職業で、最も多いのは不明の23%。次に多いのが、A(その他研究開発関連職=大学ではなくて企業や独法の研究者)の16%。その次がB(ポスドク)の15%…」となるんです。変な感じするでしょう? 例えば見出しで「Aが15%」となったら、不明は除いてちゃんとした回答全体の、15%だと思うじゃないですか。でも、そうではなくて、不明が4分の1も占めている調査での、15%なのです。
普通のアンケートは、対象者全員にアンケート用紙を配ることが、たいていは無理。「国内の30歳全員に聞きました」ってできないから。だから、「対象者のうち、これこれこういう範囲の人にアンケート用紙を渡しました。そこから回答をくれた人だけを対象にしました。各質問項目でも無回答などを除いた、有効回答を出しています。それで、有効回答のうち、最多はAの60%で…」と分析結果を表記するのが一般的です。弊社の毎夏の研究開発アンケートもそうしています。
ところが今回は、文科省経由なので、全大学に「全修了生についてアンケートをお願いします」という、対象者全員の「全数調査」です。そのため、「全員を調べました。文科系など博士課程を終えても博士号が取れていないことが多くて、フリーターとか行方しれずが多いといわれていましたが、確かに23%が不明でした」ということにもまた、意味がある。だからそれをいれた集計になっているわけです。
こういうことが、記事では丁寧に説明できないじゃないですか。数字って一人歩きしがちだし。それで、ジレンマでした。そのほかもいろいろあって、実はゲラが赤字だらけの惨たんたるモノになりまして…。落ち込みました。紙面掲載後、赤字を入れてくれた人(直属のデスクではなかった)に電話して、何が悪かったか直接、聞いたほどです。調査ものの数値扱いは難しいということを、実感しました。すみません、もう「調査モノ? 簡単に書けるな」なんて、甘く見ないようにいたします…。
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