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2009年6月

2009年6月26日 (金)

調査数値の扱いって難しい

6月19日(金)付大学面に、「博士修了者の進路 海外活躍組わずか2% 半数が研究開発関連職 5年間の全数調査で判明」を書きました。文科省の科学技術政策研究所の調査で、ダイジェストを使ったレク(記者向けレクチャー)を受けて、調査結果の冊子本体も手元にあったうえで、執筆しました。「簡単に書けるな」と思っていたのですが今回、数値の扱いで迷ってしまいました。

アンケートの博士課程修了直後の職業について、データを紙面で紹介しようとしたのですが、不明がものすごく多くて。つまり、「修了直後の職業で、最も多いのは不明の23%。次に多いのが、A(その他研究開発関連職=大学ではなくて企業や独法の研究者)の16%。その次がB(ポスドク)の15%…」となるんです。変な感じするでしょう? 例えば見出しで「Aが15%」となったら、不明は除いてちゃんとした回答全体の、15%だと思うじゃないですか。でも、そうではなくて、不明が4分の1も占めている調査での、15%なのです。

普通のアンケートは、対象者全員にアンケート用紙を配ることが、たいていは無理。「国内の30歳全員に聞きました」ってできないから。だから、「対象者のうち、これこれこういう範囲の人にアンケート用紙を渡しました。そこから回答をくれた人だけを対象にしました。各質問項目でも無回答などを除いた、有効回答を出しています。それで、有効回答のうち、最多はAの60%で…」と分析結果を表記するのが一般的です。弊社の毎夏の研究開発アンケートもそうしています。

ところが今回は、文科省経由なので、全大学に「全修了生についてアンケートをお願いします」という、対象者全員の「全数調査」です。そのため、「全員を調べました。文科系など博士課程を終えても博士号が取れていないことが多くて、フリーターとか行方しれずが多いといわれていましたが、確かに23%が不明でした」ということにもまた、意味がある。だからそれをいれた集計になっているわけです。

こういうことが、記事では丁寧に説明できないじゃないですか。数字って一人歩きしがちだし。それで、ジレンマでした。そのほかもいろいろあって、実はゲラが赤字だらけの惨たんたるモノになりまして…。落ち込みました。紙面掲載後、赤字を入れてくれた人(直属のデスクではなかった)に電話して、何が悪かったか直接、聞いたほどです。調査ものの数値扱いは難しいということを、実感しました。すみません、もう「調査モノ? 簡単に書けるな」なんて、甘く見ないようにいたします…。

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2009年6月15日 (月)

取材で歩く、なぜならば…

取材先の各大学は、駅から遠いところも少なくありません。時間に余裕がある時期ならば、体のために、駅から大学の間で歩きを取り入れるようにしています。タクシーは車酔いで苦手でもあるし。私の好みは、「行きはバス、帰りは15分ウオーキング」というものです。最初から歩くと、現地に着いて、疲れて眠くなっちゃうからね。梅雨の真っ最中だけに、空を見ながら思案しています。

最近、万歩計も買って、週末は1時間くらいの時間をとっています。平日で運動量が少ない時には、文科省の12階まで歩こうかな、とも考えています。「いくら何でも12階は大変か」「企業や大学トップなどでは、よく聞く運動法だけれど、彼らは普段は車だからなあ」「まずは下る方で試そうか」などと逡巡している状態です。

実はね、富士山登山を考えているんですよ。富士山。「大変だよ~、止めた方がいいんじゃない」っていわれますが、やっぱり一度は、上っておきたいじゃないですか。「上ったもん」って自慢するために。幸い、若い人がリードするグループでの企画があって、乗ることにしました。同世代未経験者同士では危ないけれど、若い人が一緒なら、こっちがへばっても助けてくれるかも、と思ったりして。え? 置いて行かれるだけだろう、って? そう、年齢差を実感して愕然とするのではという不安も、実はアリ。それを打ち消すようにウオーキングに励みます。さあ、今度はどんな辺鄙な大学へ取材に行こうかな?

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2009年6月 2日 (火)

当初の思案と違う記事が仕上がる

取材の予約を入れた時点では、おおよその内容しか分かっていないことがしばしばあります。その場合、取材をしながら、「あ、これニュースかも」とか「残念ながらニュースではないようだけど、この切り口ならおもしろいかな」と頭をフル回転させて考えます。そして、想定する記事の形に合った質問を繰り出すわけです。ところがその後、また考えを変え、当初の思案とは違う記事が仕上がることも起こるのです。

2(火)付大学面に、そんな記事を2つ載せました。一つは「東京農工大 産学交流拠点 9月着工 就職セミなど開催 予算の半分、企業寄付」。当初は、産学という名称が付いた建物をつくる、という情報だけでした。農工大としては力が入っているのですが、「食堂などが入る建物を新設」というニュースでは、目新しさは今ひとつです。そこで注目したのは、企業からどう寄付を集めたかという点でした。大学の寄付獲得競争はここ数年のトレンド(?)ですから。ところが、「農工大は共同研究などで企業の評価が高いから獲得できたのだな」という予想に反して、「いやいや、寄付の依頼先は、研究開発の部署ではないので、その点はあまり評価されないのですよ」というではないですか。じゃ、どうやってPRしたの?? 正解は…、記事をごらんください。これならば、「おっ、それなら当大学は、こんなふうにすれば寄付がゲットできるナ」と、読者にとって有用な情報になるのでは、と考えて執筆したのでした。

もう一つが「産学連携で健康志向のジャム コンサート会場で完売 武庫川女子大と音楽会社」という記事です。音楽制作会社のグループ企業が、大学と共同研究して、ヘルシー食品を開発した、というのが最初に聞いた話でした。取材では食品開発の工夫をあれこれ尋ねたのですが、まあ旧帝大と大手メーカーの産学連携みたいな最先端の話が出るはずはないですよね…。取材後、「異業種の新規開発に、大学を活用して成功」という読み物記事かな、と思案していました。ところが。数日後、たまたま朝のテレビ番組で「ZARDの三回忌コンサート」という芸能ニュースを耳にしました。あ!! これ、ヘルシージャムを会場で販売するといっていた、取材先グループによるコンサートだ。女性社長が言っていたわ、確かに。私はZARDファンでなかったので、流してしまってたのですが、こんなに注目のイベントだったんだ! というわけで、社長に電話して追加取材です。そして、記事の導入は「◎…産学連携で開発した【蒟蒻(こんにゃく)ファミリー ジャム】の650セットが、ZARDの坂井泉水さんの三回忌コンサート会場で完売-」としたのでした。うちの大学・産学連携面にこういう話が出れば、「なに、なに?」って読んでもらえるだろう、と期待して。

特大級のニュースでは、記事の書き方に迷うことはありません。オフィスに戻って30分で、一気に書き上げます。そのために、【記者が汽車で帰社する】(私の場合は、帰文科省クラブですが)段階で、書き出しの文面も頭の中で決めてしまうくらいです。でも、中程度の記事は、切り口を変えることで、読者の目を引く記事に【変身】する可能性があるのですね。「たいした記事にならないな」と終わらせないで、読者や取材先にとってプラスの記事になるよう、あれこれ工夫をする。ジャーナリズム精神というような大きな話ではないけれど、やっぱりこれも意識していきたい、記者の姿勢の一つだと振り返ったのでした。

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