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2009年8月

2009年8月28日 (金)

概算記事の抜きに満悦で、電車を乗り過ごす

今年は民主党政権に替わるかということで、役所の概算取材も難しいようで。各紙とも、あまり出ませんでしたよね。それに経産省なんて1週間も早く発表して、「こんなに早く会見するとは思わなくて、夏休みの予定と当たっちゃったんですよ~」と仲間がいっていました。私は取材を数カ所に当たるも、補正予算で大物案を出しちゃったのもあるのでしょうが、「ま、粛々とやるだけですよ」とかいってつれない対応が多くて。それだけに、25(火)付の一面トップ、「産業界が開発テーマ 基盤研究の大学公募 文科省 【共創の場】構築 年6件、30億円 10年間支援」を載せられてうれしかった。

この日はたまたま、ほかの面にも自分の記事が多数、掲載となって。大学面は東工大の人件費圧縮策がトップ、段モノで弁理士会のデザインコンテスト(発表もの)。3面に「現場最前線 夏に負けるな」で、早稲田大学の技術職員の読み物を載せました。それらを確認したあと、もう一度一面に戻ってみると、おっと、下のコラム「産業春秋」も私のではありませんか。大学は創立周年事業の年数を好き勝手に決めて、寄付金集めに奔走しているけれど、というちょっとだけ皮肉も込めたもの。先週半ばまで休みを取っていたわりに、順調に出稿・掲載できたなあと悦に入っていました。

とと、そこでちょっと失敗。電車を乗り過ごしてしまったのです。私は直行取材ではない日は、自宅から日刊工業新聞と、ほかに2紙を持って出勤します。最近は通勤時に広げている人はめっきり減っていますけど、新聞同士がぶつからなくなってよい(ぶつかった数人が同じ新聞で、「3人で一緒に読むかな」と密かに笑ったことがあった)面もある。私は電車を3本、乗り継ぐ(合計の通勤時間は1時間ですが)ので、乗り換えまでにこれを読んで、次の電車ではこっち、という流れができています。それがこの日は、自分の記事がうれしくて、日刊工業だけ何度もねちねち読み直していたために、その流れが変わってしまった、という具合でした。電車内で、自分の新聞を食い入るように見ている私がいたら、声をかけてください。「乗り過ごしますよ」って…。

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2009年8月20日 (木)

国際標準化の舞台に、【極東のネエちゃん】が切り込んだ話

18日付大学面で、いつもと感じの違うインタビュー記事を載せました。「技術者自らISO標準作成 東京工業大学助教 森川淳子氏に聞く 次世代技術探る手立て 国際交流で情報比較 研究・教育活動にプラス」です。材料の熱測定法の標準をつくる国際標準化機構(ISO)のワーキンググループに、8年以上毎年、参加して、日本初の新技術を新標準として発行させたことについて、聞きました。最近、日本の国際競争力を高めるために、「国際的に活躍できる人材の育成を」とよくいわれますが、私と同性同世代の大学の研究者の中から、こんな実例が出てくるとは思いませんでした。

よほど優れた語学力なんだろうって思うでしょ? 私も当初はそう思いました。交渉の場は、欧米の50歳代以上が大半だというのですから。森川先生が始めた時は「極東のネエちゃんが何をしにきたんだ?」という雰囲気だったようです。でも実は、森川先生は、学生時代に2カ月の短期留学の経験があるだけだそうです。「英語はへた」(本人談)なうえ、説得の手法や論議で重視する点での文化的な違いもある。人種的な偏見もじわじわと感じたようです。でも、日本で開発した技術を、議論対象にすべきか検討した時や、途中で熱伝導率測定法の標準化活動が棚上げになりそうになった時など、熱く激しく、【まくしたてた】ようです。

例えば、米国に数年間留学してMBAを取ってきた金融業界の人なら、日本人でもアグレッシブなのは分かりますよ。でも、理工系の研究者ですからね。そんなに戦ってきたなんて、信じられない、って思いました。なぜできたのか? それは一にも二にも熱意、なのです。この技術はすごい、世の中に普及させたい、世界もそれは認めてくれるはず、という思い。記事にも書きましたが「研究者は技術が優れていれば産業につながるだろうと期待するが、多くの壁を乗り越えて行くには、開発者の熱意がなくては難しい」(本人談)って、ことなのです。教育や仕事のキャリアや能力が、自分よりずっと恵まれた人を前にすると、萎縮しがちだけど、そんなことは関係ない。そんなものを蹴散らしてしまうだけの熱意が、なによりも強いのだと実感したのでした。

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2009年8月 5日 (水)

優しい記者は文章が分かりにくい?

このところ、「記事の文章が分かりにくい」と複数のケースで指摘されて、ちょっと落ち込んでいました。駆け出しの時期ならともかく、ベテランになっても、こんなんでどうするの~?って。社外の先輩格とおしゃべりする機会があって話したところ、ちょっと目からウロコのアドバイスをもらいました。

◎書くことを絞る。複数、書きたいことがあるなら、別の原稿で2本書くようにする。

◎読みやすいリズムを意識する。文は短く。まず結論、説明は後ろに。

これだけ。これまでも、社内でいわれてきたことです。私に対する歴代デスクの指導が、いいかげんだった訳ではないのです。ですが、私が納得したのは、「山本さんは優しいから。取材先の顔を思い浮かべて、これを強調していたな、いやあれも書いてあげなきゃ、と考えちゃうんだろう。そうすると分散してしまって、結局は内容が分からなくなってしまう。もっと大胆に、ばさっと切り落として書かなくちゃ。取材先も大事だけれど、読み手に分かりやすく書くのが一番だよ」というものでした。そうかあ。取材先の気持ちを汲むあまり、そっちにひっぱられて、盛り込みすぎの記事になってしまう。記者が直接、やりとりする相手は読み手ではなく、取材先だから、意識していないとどうしても、そうなってしまう。

ということで、内容を絞るということを意識したうえで、7月28日付を書きました。「文科省まとめ 昨年度の産学連携 特許権実施額27%増 技術移転で東大ダントツ 共同研究 中堅大・私大が健闘」を書きました。6月26日のブログでは、文科省調査の案件の扱いに苦労して、ぐちゃぐちゃになったことを書きましたが、それに対する【リベンジ】です。数多いデータの中から、技術移転収入と、中小企業・海外企業との共同研究に絞って書いたのです。

ところが。後に社内の幹部から連絡を受けました。N紙に載っている記事「大学の特許収入最高 昨年度9億9000万円 米と以前格差」の文科省資料がほしい、とのこと。むむむ。私の記事も読んでいるはずだし、内容的には私の方がいい視点だと思っていたのに、N紙の記事の方が幹部には通じたんだな。N紙の「大学の特許収入」という表現がよかったのかも。同じものなのだけど、私が資料の通り書いた「特許権実施額」より、確かに分かりやすい。「発表側が使った言葉通りにしてあげなくちゃ」との意識も、読者側に立ったものにはならないってわけですね。私ってば優しいから…。これからは【心を鬼にして】(ちょっと極端か)、取材先には優しくない、読者に優しい文章をもう一段、意識することにいたしましょう。

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