国際標準化の舞台に、【極東のネエちゃん】が切り込んだ話
18日付大学面で、いつもと感じの違うインタビュー記事を載せました。「技術者自らISO標準作成 東京工業大学助教 森川淳子氏に聞く 次世代技術探る手立て 国際交流で情報比較 研究・教育活動にプラス」です。材料の熱測定法の標準をつくる国際標準化機構(ISO)のワーキンググループに、8年以上毎年、参加して、日本初の新技術を新標準として発行させたことについて、聞きました。最近、日本の国際競争力を高めるために、「国際的に活躍できる人材の育成を」とよくいわれますが、私と同性同世代の大学の研究者の中から、こんな実例が出てくるとは思いませんでした。
よほど優れた語学力なんだろうって思うでしょ? 私も当初はそう思いました。交渉の場は、欧米の50歳代以上が大半だというのですから。森川先生が始めた時は「極東のネエちゃんが何をしにきたんだ?」という雰囲気だったようです。でも実は、森川先生は、学生時代に2カ月の短期留学の経験があるだけだそうです。「英語はへた」(本人談)なうえ、説得の手法や論議で重視する点での文化的な違いもある。人種的な偏見もじわじわと感じたようです。でも、日本で開発した技術を、議論対象にすべきか検討した時や、途中で熱伝導率測定法の標準化活動が棚上げになりそうになった時など、熱く激しく、【まくしたてた】ようです。
例えば、米国に数年間留学してMBAを取ってきた金融業界の人なら、日本人でもアグレッシブなのは分かりますよ。でも、理工系の研究者ですからね。そんなに戦ってきたなんて、信じられない、って思いました。なぜできたのか? それは一にも二にも熱意、なのです。この技術はすごい、世の中に普及させたい、世界もそれは認めてくれるはず、という思い。記事にも書きましたが「研究者は技術が優れていれば産業につながるだろうと期待するが、多くの壁を乗り越えて行くには、開発者の熱意がなくては難しい」(本人談)って、ことなのです。教育や仕事のキャリアや能力が、自分よりずっと恵まれた人を前にすると、萎縮しがちだけど、そんなことは関係ない。そんなものを蹴散らしてしまうだけの熱意が、なによりも強いのだと実感したのでした。
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