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2009年9月

2009年9月28日 (月)

話しかけた△先生の反応が悪かったのは…

先日、ある技術移転会社の設立10周年記念パーティに参加しました。技術移転だけでなく、コンサルティングなど広範な事業を手がけるのが功を奏して、会社型TLOながら急成長した特異な存在です。設立まもないころ、私が初めて訪問した時にはお二人しかいなかったのに、今や陣容は20人近く! これだけ事業を拡大してきたのだから、挨拶に立つ人の多いことは致し方ありません(笑)。でも、こちらも同社に紹介してもらってきた、たくさんの人と一度に再会できるよいチャンスでした。以前、私のミスで迷惑をかけたけれど、電話で謝ったきりだった相手も、会場で探してもらって改めて、お詫びできてヨカッタです。

食事もけっこう豊富で。さすが会社が「これまでお世話になりました、これからもうんとお世話にならせてください」と開くパーティは違うなあ。と、料理テーブルの影にひっそり一人でフォークを動かしている△先生を発見。先生も以前と立場が変わって、話相手がちょっと減っちゃったかな、と思いつつ、「お久しぶりです、日刊工業新聞の山本です」と声をかけました。「先生が以前、主張されていた~の件はその後、注目されましたよねえ。今、どこの大学も取り組むようになりましたし」。ところが反応がいまいちよくない。おかしいなあ、もっとしゃべる先生だと思ったのに。「~はどうなりましたか?」。うーん、これにも乗ってこない、テーマがハズレらしい。そこで攻め方を変えて「最近のお仕事では、どんなことをされているのですか?」。そうしたら「□の○を…」というじゃないですか。□の○?! そ、それって…。私、間違っていました。△先生ではなくて、□の○で取材した別の先生だったのです。

というわけで、同社にいかにアレコレ取材先紹介でお世話になってきたかを、改めて実感したのでした(自らの至らなさは棚に上げて…)。次の10年も(?)どうぞよろしくお願いいたします。

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2009年9月16日 (水)

デスク代打で知った「自分で考えろ!」

我が道をいくコウモリの私ではありますが、迷った時には2つの候補を挙げて、周囲に意見を聞く手法も、わりとよく、採ります。「こっちがいいだろう」と一人で判断し、突き進んでも、「これじゃまったくダメ」と後でいわれると、へしゃげちゃうでしょう? それなら早い段階で、他の人の反応を見てみて、ついでにノウハウも教えてもらってから手がければ、効率がいい。【自分らしさ】はそのうえで発揮すればいい、と思うからです。

自分が執筆した記事のゲラを受け取って、見出しなど赤字を入れる時にも、時々それを私はしていました。見出し候補Aと、候補Bを書いてファクスしたり。ところがデスクはあまりそれを好まない。「どっちがいいかな、っていうのは止めてくんない?」といってくる。なぜ? 一緒によりよいものを作りましょう、っていっているのに~。不思議に思っていました。

その理由が分かったのが、先週のデスク業務の代打でした。遅い夏休みのデスクに代わって、科技面と大学面の2つをつくる曜日の2日間、手がけました。昨年はほとんど原稿をそろえてもらっていた状態で、それらしい業務をしたのは今回が初めてでした。それで驚いたのは、とにかく忙しい。慌ただしい。締めきりが迫って、「山本さん、もう間に合わないよ! 他の原稿で行くよ!」と整理部に言われて焦っているところに、数本の記事が立て続けに端末に入ってくる。正直言って、ほとんど読まずに整理部にまわした状態でした。

そこで、ようやく分かりました。「どっちがいいか、判断してくれだって? アニいってんだよ、この忙しいのに!! 駆け出し記者の原稿は指導しなくちゃならないけれど、そういうレベルじゃないだろ? 編集委員なんだから、自分で考えろ!」ってことだったんですね。うちのデスクは実際には、こんなふうに怒鳴らなかっただけで…。

私は若い頃、社内でも(支社支局にも)有名な、指導が細かくて、うるさいうるさいデスク2人に付いた経験があるのです。累計で、5年くらいかな。手書き原稿がはさみで本当に【切り刻まれ】て、切り貼りされて。「1時間後にそっちに行ったら、山本さんがまだ、説教されていてびっくりしたよ」と他の部の人にいわれる状況でした。それで、上におうかがいを立てる習性が付いちゃったんだなあ。反省です。

というわけで、コウモリ体質にもう少し磨きをかけましょうか。「え、これはほ乳類さんたちの問題でしょ?」「あら、私は鳥類ではないのよ」って。「自分で考えて」一番、オイシイ道を選んでいくとしますか!

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2009年9月 4日 (金)

政権交代下で概算要求の記事を載せる意味

新聞の使命は、まず「事実」を報道することだといわれるが、これからの社会の「方向性」を情報発信することも同じように重要だ。とくに、目立たないが「ひょっとして、これからの社会ではこういうことが、大事になってくるのではないか」と感じさせる記事にこそ、意味があると思っている。

8月30日の選挙で政権交代が決まり、役所が策定しリードしてきた概算要求は凍結だ、と民主党がいう中で、文科省・経産省の産学連携関係の概算要求まとめ記事を1日付で載せた。「2010概算要求 産学連携関係 新しい視点の施策続々 基礎研究から双方参画 …… 与党との調整を注視」だ。各マスコミでは、どうなるか分からない概算要求の記事をかなり控えめにしている。その中で、である。なぜか。一つは「白紙撤回といっても、全部を取り下げて来年度予算を新たに考えていく時間はない。不適切なものは大胆に切り捨てるが、必要なものは取り上げる形になるだろう。その事業候補として、どんなものがあるかを記事で知らせることは、意味がある」と思ったためだ。

もう一つは、「事業化できるかどうかは関係ない。本当に白紙で全部、なくなってしまっても、記事にする意味がある。なぜなら役所がリードしたとはいえ、日本の頭脳を活用した審議会や、大学はもちろん多様な企業ヒアリングに基づいて、新しい基軸が提案されているのだ。それがどんなものであり、それに対して自分たち(読者)はどう動くべきかを、考えるきっかけになる」と判断したからだ。

具体的には、産業界の視点を基礎研究段階から取り入れる、新しい形での産学官連携がいくつも出ていることが目を引いた。大学=基礎、企業=開発で、その間をつなぐといった従来型の拡大施策ではない。基礎研究の段階で産学が深く関わることに注目した支援策は、今までなかったものだ。イノベーション創出は、産学でバトンを受け渡していくリニアモデルでは、難しいという判断したのだろう。詳細は記事で見てほしい。私は「そんな発想があるのか」と驚いた。おそらく、私と同様に多くの大学は、このような形での取り組みは、思いつかなかったはずだ。だから、紙面で紹介する意味があると考えた。

今回の文科省と民主党側の関係は、通常の大学と国(多くは文科省)の関係と同じものだ。私が取材先の大学で、好感を持つのは、「こういう取り組みが必要なので、すぐに始める。たまたま、~という施策があるので、応募を検討しているが、採択されなくても実施する」というケースだ。実際にそのように口にした4,5大学は、いずれも産学官連携で高評価を得ている大学だ。「カネをくれるからする」のではない。「必要だと強く信じるから」手がけるのだ。内容と同時にその思いを、社会に伝える記者でありたいと思う。

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