官庁の会見主催者が記者クラブだという意味
民主党政権に替わって、大臣会見などを記者クラブ加盟のマスメディア以外にもオープンにすることについて議論されていますね。これって表に出やすい論点としては、「記者クラブ加盟社は、役所の会見出席を既得権益にして、フリーなどの記者を閉め出している。けしからん」ということでしょうか。これに対しては、マスメディア側は「名ばかり記者は排除しなくてはいけないが、ジャーナリストとしてきちんとした実績があるならば、参加を了承するしかない」というのが、ほぼ共通の答えかなと思っています。
ただ、あまり議論の全面には出てこないけれど、私が一般の人に理解してほしいと思うのは、役所の記者会見は、役所が単独主催者ではないということです。「役所が主催して、クラブのメディアがそれに乗っかっている」のなら、「だれでも乗っかかれるようにすべき」でしょう。官庁や企業でも活用しているウエブなどの情報発信は実際、そうなっていて、だれでも入手できるわけです。でも、そうすると発信が一方的で、発信者の都合のよいものだけになってしまう。そこに気を付ける必要があるのです。
役所での会見は、記者クラブの主催か、クラブと役所の共催となっています。記者側は、役所側の事情を考慮はしますが、役所側のいいなりにならないよう、マスメディアとして採るべき行動を意識して、運営をとりしきっているのです。会見の回数を増やしてくれだとか、資料が不十分だからもっとしっかりしたのを出してとか、別の予定も入っているけれど会見の時間はもっと取るよう別の日に動かすとか。持ち回りでするクラブ幹事は、こういった調整をやっていて、各社がビシビシと「こんな状況じゃ問題ですよ」と幹事社に言ってきて、幹事をやっている間はまともな取材をする暇がないくらいになるわけです。役所以外の機関が会見を希望してくる時には、クラブとして受けて会見を実施してもらうのがさわしいのか、「独自にホテルなど場所をとって、(そちらからの一方的な情報発信でいいですから、ご自由に)会見してください」とすべきものなのか、そういう判断をすることもありますし。記者教育を受けていない、興味がある会見の時だけ顔をつっこみたいという人にも、自由にどうぞという訳にはいかなのでは、と思うのはそういう訳です。
「そうなんだ~」という情報を文章にして、だれかに伝えることはとても楽しいことです。ウエブでは、いろいろな人が好きに発信して、「ちょっと怪しいけど、まあそんなものかもしれない」と別の人たちがその情報をもらっていっていますよね。でも、お金を出して入手する情報の場合は、そういうレベルではすみません。マスメディアがこれまで、一般社会に比較的、信頼されてきたのは、「相手のいいなりに情報を出しているのではない、しっかりした意識を持って行動している。記者はそういう教育を社内でみっちりと受けてきている」と思われているからだし、実際そうだと思います。ウエブ時代にあってなおさら、我々記者はそのことを忘れてはいけないですね。記者クラブ問題から派生して、そんなことを考えました。
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