« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

2009年12月

2009年12月25日 (金)

速報!! 産学連携予算の決定

現在、2010年度予算の記者会見中です。産学連携関係者の最大の懸案だった「産学官連携戦略展開事業」は、事業仕分けで廃止とされましたが、「大学等産学官連携自立化促進プログラム」という名称で引き継がれることが決定しました! 予算額は、概算要求が28億円だったのに対し、決定が26億4900万円。ほとんど維持といえる金額です。この事業予算で雇用されている方々は不安な日々だったと思います。これで安心して年が越せますね!

地域連携関係は文科省の担当課に聞いていないので、はっきり分からないのですが、複数のプログラムのうち一部はストップ、一部は生きて、「地域イノベーションクラスタープログラム」、予算額120億6500万円になったようです。この二つを合わせて「イノベーションシステム整備事業」と記されています。民主党は、内容は前政権と似ていたとしても、名称は絶対に変えなくてはと思っている面があるみたいですね。

大学関係では、運営費交付金の1%削減方針が撤回というのが大きいです。科学技術関連も、これまでさんざん、怖れていたことを考えると、全然大丈夫な状態です。科技関係は弊紙でも書くので、ブログではこの程度にしておきましょう。産学連携は記事スペースが取れないため、年明け最初の1/5付の特集の中で触れます。予算の結果をどう折り込むべきか気になって、記事が仕上げられずにいたので、その意味でもほっとしました。産学官連携関連の皆様、本当によかったですね。2010年もがんばってまいりましょう!

| | | コメント (1) | トラックバック (0)

2009年12月24日 (木)

トラブルに対するコウモリの心得

まもなく一年が終わります。今年は幸いにして大きな表記ミスはなく、といっても直前にデスクが発見してくれたりしているのですが、なんとか訂正を出さずにすみました。取材先ともめるトラブルも発生しませんでしたが、社内の後輩が困っていてアドバイスしたケースがあったので、それを紹介します。

一つは、ちょっと日刊工業の定番とはいえない、けれどわりと著名な人のインタビューで。よくあるもめ方ではあるのですが、「これは書かないでといったはずなのに、載っている!」というやつです。「説明をしに行くはめになっちゃったのだけど、山本さんならどう対応しますか?」って聞かれたのです。

これって、1時間ほどの取材のどこを指して「言った」「言わない」「了解していたはず」「していない」か、結局のところよく分からないんですよ。だけど、企業担当をしていると、若い記者は厳しめの指導を受けるのです。「相手が悪いケースでは絶対にこっちは折れるな」とか。他紙との記事掲載でもめた場合は、「こっちが譲ったら、『次回はうちだけにいいネタを用意して、お返ししてよ』と念を押すこと」とか。私もそうやっていた時期があるけれど、これはマスコミ慣れした広報ならともかく、そうでない相手には難しい。自分に非がないと粘ると、だいたい火に油を注ぐことになってしまう。これは仕事に限らず、どんなトラブルでもそうですよね。

こういう時に私が選択するのは、【時間をとってもらった相手に、嫌な思いをさせて申し訳ないです】という意味で、とにかくまず、謝ることです。それで「どこの表現の具合が悪かったのですか」と相手の言い分をとにかく、聞く。相づちを打ちながら、相手が言いたいことを全部、言ってもらう。そのうえで自分の非が明確なら、それを口にして謝る。こちらに非がないと思っても、「おっしゃったことはメモしていたのですが、そう意味だとは思わなかったのです」とか、「この辺ですれ違いが生じたようですね」とか、下手に出て説明する。つまり【確認が甘くて、申し訳ありませんでした】ということを伝えます。だいたい、これで納得してもらえると感じています。

もう一つ、別の後輩の去年の話、日刊工業のOBが広報みたいなことをしているケースでした。大学に会社が絡んでいたため、OBを通しての取材申し込みがらちがあかなかった(返事をほっておかれた)ため、当事者の大学の先生に直接、アタック(正式の取材ではなく、立ち話のようにして確認)して書いたというもの。それに対してOBが不満を持って、記事にした後輩が落ち込んでいたんです。実はそのネタ、私がとってきて後輩につなげたものだったので、私にもOBが電話をかけてきたのだけど、「いやあ。まいっちゃったよ」と唸るだけ。「なんだ、まずいところはなさそうじゃん」と、後輩にこんな感じのメールを送りました。「今回の件、落ち込むことはないですよ。取材で不当な手段、例えば脅しや金銭を使ったのでなければ、何も問題ありません。OBに対して気兼ねをせずに、読者によい記事を提供したのですから、偉かったと思いました。記者は常に自由でいること。たとえ取材先や周囲とどんなに親しくなったとしても」。

実は私、それほど相談を受けるタイプじゃないのですよ。「アタシって人望がないのかしら」と思ったことがあるくらい。これだってつまり、「年に1回ずつ、後輩の相談に乗った」くらいなわけで。でも年の功で、コウモリの心得はちょっとだけ多く、習得してきているんだな、と振り返ったわけです。

仕事で活動的に動いていれば、トラブルが生じることがあるのは仕方ありません。でも、なるべく理解しあって、また次の仕事につなげて、ウインウインの関係を築きたい。仕事に限らず何についても、そして新しい年でもそうあるべく、がんばっていきましょう。では、よいお年を!

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月15日 (火)

「連携協定 成果はいかに」の新連載

12月8日から日刊工業新聞の大学・産学連携面火付で、新連載を始めました。「連携協定 成果はいかに」です。国立大学法人化前後に連携協定の記者会見が急増。「協定の署名でトップが集まるからって、ついでに会見するのは止めてくれないかなあ。いいかげん同じような記事ばかり書くのも飽きたよう。ちゃんと成果を出してくれるのかな、連携しました、だけで終わっちゃうんじゃないかしらん」と思っていました。それでいつか、検証記事を書かなくてはと心に秘めていた、というわけです。成果を問う以上、ある程度の年数は置く必要があると思って、我ながら、ずいぶん長く暖めてきた企画だと振り返ります。最初の2回は私が執筆、3回目(1月の分)からは全国支社・支局の記者に書いていってもらいます。「これがうちの自慢の連携!」というのがありましたら、ぜひ売り込んでください。

8日の第1回は、東京大学先端科学技術研究センターと新日本石油の、新エネルギーの連携協定です。実は4年前の協定締結会見に出席(マスコミは6社くらいいた)して記事にした案件です。なんでも、研究に入る前にその技術と社会のかかわりについて、連携メンバー以外も入った30人くらいで議論をし、将来の形を描きつつ、共同研究を検討していく、その仕組みが新しいという話でした。その後、当時の先端研所長に会ったら、「この仕組みの新しいところを、ちゃんと理解して書いてくれたのは、山本さんだけですよ」といわれまして。ほかの社はのフツーの「連携協定締結」で書いていたということです。そうでしょう、専門記者の私だから書けたんですよ。そう、ほくそ笑んだことはいうまでもありません。それが頭に残っていたので、初回にご登場願ったのです。内容的にも、初回にふさわしい、しっかりしたものでした。

第2回の15日付は、東京工業大学と三菱化学の、化学プロセスや機能性材料での組織連携です。「写真を使いたいので送ってもらえませんか」といって、取材先にいくつか見させてもらいました。その時におっと! 三菱化学の研究者であるA氏が写っているではありませんか。一年ほど前、半分プライベートな場で講演をじっくり聞くチャンスがあったA氏です。出身地の紹介があり、もしかしてと思って尋ねると高校が同窓と分かりまして。年度は少し離れているのですが、A氏が後日、高校時代の卒業アルバムまで持ってきてくれて、先生の名前で盛り上がった仲なんですよ~。さらに、私の大学時代の同窓生も同社研究所に勤めていて、女性だから目立つかもと思って口にすると、彼女とA氏は以前の研究室が非常に近くて、やりとりしていたと判明。A氏をきっかけに久しぶりに、その女友達に再会するという展開にまでなっていたのです。

大企業の研究者ってもちろん、たいへんな人数がいますよね。私が知っている数人の知り合いではひっかからないだろうと思っていただけに、接点があれこれと見つかったことは驚きです。A氏と大学同級生のつながりに続き、今回の取材相手とA氏との関係と、2回ですからねえ。やっぱり、どこへいっても人はつながっているということで、変なうわさが伝わらないよう、品行方正で(?)いくことにいたしましょう。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月11日 (金)

「カタール、どうだった?」にうまく返答できず

紙面で11日(金)本日付から、「持続する改革へ カタール 国際教育サミット」の連載を始めました。3回連載です。

この記事の基になる11月のカタール出張後、「カタール、どうでした?」といろいろ聞かれましたが、なかなかいい返事ができなくて。というのは一つは、企業誘致を希望する相手国に合わせた取材だと、カタールの国の社会状況がばっちり説明され、簡単な観光なども入るのですが、今回は違ったせいです。カタール首長(王様)が設立した財団で、王妃様が3年前から計画していた教育の会議(WISE、ワイズと読む)ということで、その辺は力が入っていなかった。ので、カタールの国がどうかというのをちゃんと理解していなくって。高層ビルの建築ラッシュや、食べ物や物品の一流度合い(ホテルが大半だったせいもあるけれど)に感心し、勝手に想像しているレベルです。「カタールは(石油や天然ガスが豊富で、資源価格高騰の恩恵を得て)豊かだけど、イスラム教がしっかりしているから、社会が乱れないのかしらん」とか。だって、男女とも服装が超限定されている(女性は髪だけスカーフでおおっていたり、外国人だからか?まったく普通だったり、一方で真っ黒のドレスで目しかみえない人もいる)のですから、男女関係は派手になりようがないでしょう? そうだ、それからアルコール厳禁というのも大きい! 私はあまり飲まないのでうっかりしていましたが、お酒なしじゃね~、けんかも不埒な行為も激減じゃないですか?

もっとも印象的だったこと。それは、今回の記事にもさりげなく書きました。本文の最初に「…WISE参加者は皆、それを実現していくパートナーだ」と、会議議長が会議の役割を説明し、参加者に呼びかけた文章を入れました。そして、「大学、国際機関…などからの参加者数は約1000人。」となり、あと「教育オピニオンリーダーらは…グローバル教育推進というミッションをここで託された。」という文章が続きます。この、「大学、国際機関…」と、「教育オピニオン…」の間に挟んだ文章がキモなんです。「全員が招待参加だ。」という一文です。

いいですか? 120カ国からの参加者1000人すべてが招待なんですよ!! 元首相なんてエグゼクティブもいて、その人たちは飛行機が当然、ファーストクラスとして、たぶんそのほか全員がビジネスクラス。これは全世界のマスコミ人約50人も同様で、ちなみに私の航空券に記された日本円の価格は、86万円でした。カタール航空のビジネスクラスは、【洞窟のようなドームの中にソファが数席ある!】と感じたくらい、広かった…。ホテル代やら食事代やら、会場運営費用などで一人100万円と仮定して、1000人分はいくらでしょう? 答、10億円、ですよ。まあ、欧州からの参加者の飛行機はそう高くないだろうけれど、王室が直接関係するカタール財団は、この会議に10億円クラスの予算を組んだということです!!

おっとっと、カタールのリッチさに、うっかり我を忘れてしまいました。記事に戻ってみましょう。これは「(リッチな会議へ招待された)1000人が、『あなたたちはこの会議の理念を実現していくミッションがあるんですよ』と念押しされた」という話です。すごいですね。カタール王室が、これは大事だ、社会を変えなくては、という思いを実現するために、10億円を使ってPRした、といいかえることができるでしょう。

この、1000人全員が、ビジネスクラス以上での招待というのが、今回のカタール出張で最大の驚きでした。でもなにしろ、要はお金の話だから、表現するのに躊躇いたしまして。「カタール、どうだった?」と聞かれて、うまく答えられなかった二つ目の理由がそれです。HPに「全員招待」と書いてあったから、実はプレッシャーをかけているということを隠す必要はないんだ、とまず判断。そのうえで、記事で、超さりげなーく、書いたというわけです。念のため、「参加者に呼びかけた」とか「ミッションをここで託された」と書いたので、「全員招待」の分に気づかなかったとしても、記事としていいたいことは伝わるようにもしています。うーん、どうです、この文章力。普通とは違う、カタール自慢話となりました。「ひとりよがりじゃん」といわれないことを祈りつつ。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年12月 1日 (火)

モノづくり連携大賞と事業仕分けの公正さ

第4回モノづくり連携大賞の表彰式が先週、ありました。この賞も4年目なので、とんでもない応募案件が少なくなったのは当然ですが、「こんな取り組みがあるんだ~」というようなユニークなものが、まだまだ出てくる点は感心しています。例えば、「日刊工業新聞社賞」は東京工業大学と大学発ベンチャー「アイフェイズ」による、熱伝導率測定法で国際標準化機構(ISO)の新標準を確立した取り組みです。環境ISOがあって、その認証を取ったという話ではないのですよ、もちろん。「どの技術をISO準拠のものと認めるか」というISOの国際交渉の場に乗り込んで行って、8年の間に23カ国の【公正な】投票を5回も実施して、新標準にしたという取り組みなのです。それから特別賞には、釧路公立大学が弟子屈(てしかが)町と連携した、摩周湖の環境保全のためのマイカー規制実施に向けた調査がありました。観光客の意識アンケートだけでなく、消費実態調査、地域経済への波及まで、しっかりした社会科学的手法で関連づけて分析しています。

予備を含めた審査課程をみてきて思ったのは、「対立する意見があっても、公正な形で十分、議論したうえでなら、結果がどういう形になっても納得できる」ということでした。例えば釧路公立大の件は、文科系大学の観光での地域連携ですから、モノづくり連携大賞の受賞案件になるのだろうか? と議論になりました。でも審査過程で賛成、反対の意見を尽くしたうえで、入賞を決めたのです。だから「対象案件じゃないんじゃないの」ともしだれかにいわれたとしても、胸を張って説明することができるわけです。

政府の事業仕分けの件も同様に感じています。これまで国民一般は知らないところで、官僚ベースで予算を決めていたプロセスが、公になったという点は画期的ですよね。でも、「賛成派と反対派が同じ土俵で、公正な議論を十分に展開したか」と問われると、大いに疑問符が付くというところでしょう。初年度からスラバシイ形に仕上がる訳にはいかないものです。そのために今回は、科学技術関係の巻き返しも含めて、まだ紆余曲折があるでしょう。でも来年度以降も実施するなら、「公正な議論が実施されたと、国民全体が納得できる形に」ぜひしてほしいと希望しています。

======================

この1カ月ほど多忙でブログがお休みでしたが、ようやく一区切りです。国内出張に海外出張、事業仕分けがらみの会見の一方、社のイベントでお手伝い…。産学連携の事業仕分け関係の記事も十分でなく、現在、まとめ記事の準備中です。も~体力的にもぎりぎりでした。倒れないために、週末などどれだけ睡眠時間に費やしたことか…。え、多忙をぼやくのに睡眠時間の多さを自慢するのはおかしいって? いやまあ、ひ弱なジャーナリストも中にはいるってことでご理解を…。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »