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2009年12月24日 (木)

トラブルに対するコウモリの心得

まもなく一年が終わります。今年は幸いにして大きな表記ミスはなく、といっても直前にデスクが発見してくれたりしているのですが、なんとか訂正を出さずにすみました。取材先ともめるトラブルも発生しませんでしたが、社内の後輩が困っていてアドバイスしたケースがあったので、それを紹介します。

一つは、ちょっと日刊工業の定番とはいえない、けれどわりと著名な人のインタビューで。よくあるもめ方ではあるのですが、「これは書かないでといったはずなのに、載っている!」というやつです。「説明をしに行くはめになっちゃったのだけど、山本さんならどう対応しますか?」って聞かれたのです。

これって、1時間ほどの取材のどこを指して「言った」「言わない」「了解していたはず」「していない」か、結局のところよく分からないんですよ。だけど、企業担当をしていると、若い記者は厳しめの指導を受けるのです。「相手が悪いケースでは絶対にこっちは折れるな」とか。他紙との記事掲載でもめた場合は、「こっちが譲ったら、『次回はうちだけにいいネタを用意して、お返ししてよ』と念を押すこと」とか。私もそうやっていた時期があるけれど、これはマスコミ慣れした広報ならともかく、そうでない相手には難しい。自分に非がないと粘ると、だいたい火に油を注ぐことになってしまう。これは仕事に限らず、どんなトラブルでもそうですよね。

こういう時に私が選択するのは、【時間をとってもらった相手に、嫌な思いをさせて申し訳ないです】という意味で、とにかくまず、謝ることです。それで「どこの表現の具合が悪かったのですか」と相手の言い分をとにかく、聞く。相づちを打ちながら、相手が言いたいことを全部、言ってもらう。そのうえで自分の非が明確なら、それを口にして謝る。こちらに非がないと思っても、「おっしゃったことはメモしていたのですが、そう意味だとは思わなかったのです」とか、「この辺ですれ違いが生じたようですね」とか、下手に出て説明する。つまり【確認が甘くて、申し訳ありませんでした】ということを伝えます。だいたい、これで納得してもらえると感じています。

もう一つ、別の後輩の去年の話、日刊工業のOBが広報みたいなことをしているケースでした。大学に会社が絡んでいたため、OBを通しての取材申し込みがらちがあかなかった(返事をほっておかれた)ため、当事者の大学の先生に直接、アタック(正式の取材ではなく、立ち話のようにして確認)して書いたというもの。それに対してOBが不満を持って、記事にした後輩が落ち込んでいたんです。実はそのネタ、私がとってきて後輩につなげたものだったので、私にもOBが電話をかけてきたのだけど、「いやあ。まいっちゃったよ」と唸るだけ。「なんだ、まずいところはなさそうじゃん」と、後輩にこんな感じのメールを送りました。「今回の件、落ち込むことはないですよ。取材で不当な手段、例えば脅しや金銭を使ったのでなければ、何も問題ありません。OBに対して気兼ねをせずに、読者によい記事を提供したのですから、偉かったと思いました。記者は常に自由でいること。たとえ取材先や周囲とどんなに親しくなったとしても」。

実は私、それほど相談を受けるタイプじゃないのですよ。「アタシって人望がないのかしら」と思ったことがあるくらい。これだってつまり、「年に1回ずつ、後輩の相談に乗った」くらいなわけで。でも年の功で、コウモリの心得はちょっとだけ多く、習得してきているんだな、と振り返ったわけです。

仕事で活動的に動いていれば、トラブルが生じることがあるのは仕方ありません。でも、なるべく理解しあって、また次の仕事につなげて、ウインウインの関係を築きたい。仕事に限らず何についても、そして新しい年でもそうあるべく、がんばっていきましょう。では、よいお年を!

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