東大TLOの山本社長の言葉が心に染みて
2月23日付大学面で、山本貴史東京大学TLO社長を「産学官を結ぶ コーディネーター群像」の連載に取り上げました。最初に、共同研究費が数億円、ライセンス量が数千万円の大型案件の交渉話をもってきて、読者の興味を引くよう意図しました。そのほかにも、さすがこの分野の先駆者である山本社長だけに、話の内容も深くって。私の心にとくにしみ通ってきたのは以下のことです。「(日本)企業はだめな理由を多数言ってくるが、絶対に当たる新規事業はない」「(なのに)日本企業は石橋をたたいても渡らない」。これに対して「米国企業はリスクを把握したうえでチャレンジする」ということでした。
心に響いたのは、最近、あれこれ落ち込むことが続いていた自分のこととして捕らえたからです。いえ、私が、石橋をたたいても渡らないタイプなのを反省した訳ではないのです。石橋をたたかずに渡って、失敗するタイプでもない。周囲が「それは難しいのでは?」ということに対して、心配性の面もあるのであれこれサーチして、そのうえで「私はこれで行きます」と我が道を行くタイプです。山本社長が挙げた米国企業のよい例の方かな、と思います。
だから反省したのは、決断時のことではなくて、その後のことです。現在の苦労は、リスクを把握したうえで取り組んだ結果、思った通り大変だった、というものなのです。だから、「残念、やっぱりこうなったか。でも自分で納得して決断して始めたことだから、いいんだ。最後までやり通すしかないよね」と考えるべきなのでしょう。米国企業だって「残念、まあ事業開発というのはそういうものだ」とさらっととらえ、次の事業にチャレンジするということなのでしょう。
もう一つ、山本社長の発言で感心したこと。「産学連携のさまざまなコミュニケーションで、トラブルとかもめ事とか、嫌なのもたくさんあるのでは?」と質問したのですが、あまりそうでもない様子で。どうも、人から見ると揉めていて大変だと思われることを「僕は、揉めていると思っていないのかも」っていうのです。例えば相手は「山本社長と実はあの時、けんかをした」とある場で打ち明けているのに、「僕はそのこと、覚えていなかったんだよね。けんかしたつもりはなくて。まあ、仕事柄コンフリクトはしょっちゅうだけど」っていうのだから。なるほどね。そういうさらったしたところ、見習いたいなあ。ぐじぐじと悩んでいたワタシを反省です。
ところで、こういう発言をブログに書いてしまうのって、微妙ですよね。ほかのケースも含め、もし個人的なおしゃべりの場で聞いたのだったら「このこと、ブログに書いていいですか」って相手にまず、確認するでしょう。でも、今回はそうしていないのです。なぜかというと、「産学連携のコミュニケーションについて取材を」と頼んだ、公式の席で出てきた話だから。つまり、記事にしきれなかった部分の発言を、ここで活用しているのです。もちろん、取材でも「ちょっと、ここはあまり書かないで」とか「関係者を刺激するから、気を付けてよ」と言われた部分は、記事でもブログでも気を付けますけれどね。取材相手からよい考え方や姿勢を吸収できるという記者のラッキーな点を、ブログ読者にも共有してもらえれば、と思っています。
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