取材相手と年月をかけて【一緒に育つ】
かつて技術担当、今大学担当という私の経歴が「ぴったりだったな」と思う2件の大学の先生の取材がありました。かつては准教授で研究成果を取材させてもらっていたのに、今は研究科長になっていて、研究科の新しい動きをたくさん聞かせてもらい、一面記事などになったのです。「記者は名刺一枚でどこへでもいける」といい、初対面の研究科長に取材に行くことももちろん多いのですが、それでも昔から行き来があった先生に久しぶりにお会いして、しかもネタをたくさんもらって…となると、うれしいものです。それに「昔を知っている」ってなんとなく特別感がただようでしょ?
この件でもっとも展開が華々しかったのは、光触媒の件です。駆け出し記者のころ、最初に東大で光触媒の汚れ・雑菌分解の効果について、報道できたのは私って、前にも自慢しちゃいましたっけ? その後、どやどやと企業が光触媒活用で参入して、後半は他マスコミと入り交じっての取材合戦にはなりましたが、それでも一面トップも含め、ずいぶん書かせてもらいました。神奈川科学技術アカデミー理事長の時には少し疎遠になりましたが、この四月に東京理科大学の学長として本格稼働されたので、またあれこれお世話になることになりそうです。理科大が先日、開いた、幹部をそろえたマスコミ向けお披露目会では、先生が講演の最中に「このことを、記者さんたちもご存じかどうか…。山本さん、どうですか? え、山本さんも知らないのですか」とのお声がけ。恥ずかしいのと、うれしいのと、やはり半々ですねえ~。
最初の光触媒取材時に同席した、橋本和仁現東大工学系研究科教授も、当時は講師で東大に来たばかりでした。その後、東大の中でも先進的な先端科学技術研究センターの所長をされたので、「イノベーション25」とひっかけた斬新な切り口のインタビューができました(これは昔のブログに書いています)。それから、産学連携の実務も社会科学研究も手がける渡部俊也現東大教授に出会ったのも、やはり光触媒がきっっかけでした。TOTOの研究所長を、これまた若くして務めていたからです。
大学幹部になることを好まない教員の先生であっても、若手や中堅時代に知りあって、一緒に育っていく(笑)のは得るものが大です。今は著名の研究者でも「最初に取り上げてくれたのは日刊さんだったから」って、ずうっとファンでいてくれるのですから。
記者は質量とも優れたネタを集めるのが仕事だから、大御所の取材が中心になりがちだけど、それだけではいけません。大御所はシニアだから、そのコネはまもなくついえてしまう可能性も大きい(笑)。このことは若い記者にも伝えたいところですね。取材先も自分も、何年もかけて幅を広げ、一緒に育ち、その時々に、コミュニケーションできる関係が理想なのではないでしょうか。
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