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2010年8月

2010年8月25日 (水)

モノづくり連携大賞 その後を追う

20日大学面に、モノづくり連携大賞の受賞グループの追跡調査を載せました。06年度スタートで昨年度までの4年分、40受賞グループのアンケート回答からまとめました。通常の表彰事業は過去の実績に対するものだけど、この賞は産学連携の仕組みに工夫があって、要素技術がちゃんとして入れがよいとしています。【道半ば】で受賞となるケースも少なくないので、「その後どうなったかを調べなくてはネ」と当初からいっていたのです。

これからを期待しての面が多分にある賞なので、「その後、うまくいかなくなった」も当然出てきますし、それでよいとしています。うまくいかない事例もまた、読者にとって重要な情報となるでしょう。だからアンケートの結果も自由筆記の中から、どんどん発展している回答と同時に、苦労しているところも記事にしました。本当は後ろ向きの話なんて出したくないところなのに、きちんと答えてくれた関係者に感謝です。ま、アンケート実施主体が賞をくれた機関なのだから、答えざるを得ないでしょうけれど(そのわりに、未回答2件があったのは…、恩知らず??)。

もっとも気になったのは、受賞理由で注目された仕組み自体が、実はその後にだめになった九州大学グループの金属微粒細化プロセスのケース(08年度特別賞)です。三菱UFJ信託銀行がこの技術開発に注目し、日本で初めての知的財産信託による特許ライセンスを手がけましたのですが、三菱UFJ信託銀行がその後、知財信託事業の全面撤退を選択したと知りました。受賞の半年後くらいかなあ、知財信託全体の話を聞きに、私も同行にいったことがあります(銀行取材はこれまでこれ一件かも)。たしか法改正で信託銀行ならこの事業が可能となって、同行がトップバッタ-というか同行のみが始めて(ほかは様子見)、数大学で実施していたはず。そうかあ、だめだったんだ~。新しいことはリスクが伴うのは仕方ありませんね。ほかにもいくつか、「産学連携の仕組み」自体が難しくなったのとか、仕組みは生きているけどプロジェクトとしての別問題が持ち上がったのとか、記事に載せました。

実はこの調査、この記事だけで終わらせるつもりはありません。ちゃんと個別取材して連載をと思案しているのです。数年を隔てて、同じグループに取材して記事にするなんて、専門記者ならでは、でしょう? 

そう、受賞グループの中には「あれ、うちの活動はその後、けっこう発展しているのに、どうして今回の記事に取り上げてくれなかったわけ?」と思った人もいるでしょう。大丈夫です、その案件はたぶん、【取り置き】です。よりおいしく料理して読者に提供しようと、置いておいているもだと思います。というわけで、対象グループの方々は拗ねないで、近く始まる取材お願いを、快く受けて下さいね!

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2010年8月16日 (月)

「ガラスの仮面」でライフワークを考える

少女漫画「ガラスの仮面」の、蜷川幸雄演出の音楽劇「ガラスの仮面~二人のヘレン」を見てきました。この漫画は超長期連載、コミック44巻・文庫24巻の総発行部数5000万部、いまなお継続中という大型作品です。平凡(にみえる)主人公と、社会的条件にも恵まれたライバルの2少女(ただし、双方はかなり早くから相手を高く評価している)が、舞台対決を続け、ともに大物俳優に成長していく物語です。演劇の世界を扱っているため、今回の「奇跡の人(ヘレンケラーが、井戸の水で言葉の意味を習得するクライマックスの舞台劇)」をはじめ、いくつもの劇中劇が出てくるのが魅力の一つです。

漫画が好きかと問われると「並」と答えるところですが、「ガラスの仮面」は特別です。スタートの1976年、私は12歳になる年でした(あ、正直すぎる記述? これは日記としての自分の記録用なのでいいんです~)。お小遣いが少ない私は、おもちゃなどたくさん持っている近所の友達のところから、漫画雑誌も借りていて、スタートの第一回を読んで「おもしろそう」と思った記憶があるのです。第一回をオンタイムで見てしまった、それも定期購読もしていないのに、というのがすごいでしょう! 大好きなのだから、大人になって購入する選択肢もあるのに、コミックなど手元に置かないままで来たのもまた、すごいでしょう(?)。ケチではないんですってば、たまにしか使わないものには場所を割かない、合理主義というだけですってば。 

舞台は、元の漫画を知らない人でもすごく楽しめる(演出が蜷川幸雄ですから)けれど、私はあの場面、この場面、ずうっと「そうそう! そうだったわ!」と狂喜乱舞しながらの鑑賞でした。会場の彩の国さいたま劇場には、登場人物の相関図など解説などがあったので、同行者と別れてまでじっくり見たあげく、その足で帰りに漫画喫茶に行って、新しいけど未読だったコミック2冊を読んでしまったくらいの感激でした。

それでようやく、このブログとしての本題(笑)。作者の美内すずえにとって、これが代表作どころではなく、おそらく駆け出し時代を除いて、この作品が仕事のすべてとなっているわけです。別の漫画で考えていたストーリーも、劇中劇の劇として使ってしまっているそうです。途中は休載やら、6年ぶりのコミック単行本発売やら、スローペースの時もある。でも、浮き沈みの激しい人気商売ながら、今なお多くの人を引きつけている。舞台を見ながらそのことを思い出し、収入を得ること以上の本当の「ライフワーク」となっていることに、改めて感心しました。

私たちの仕事もこんなふうにありたいですね。専門職でなくて、仕事の担当が替わったり、転職もあったりしても、【それまでのすべての仕事が、今の自分のありように生きている】と胸を張れるいうような、そういう仕事をある程度の年齢以上になったら、目指すべきだと思いました。

それにしても心配なのは、ガラスの仮面全44巻の存在でしょうか。昔なら、手元になければ動けなかったのに、今だと漫画喫茶ですぐに読める。ただし、この間確認したところによると、1冊約1時間、つまり全巻再読破すると、44時間かかるのね…。仕事で落ち込んだ時に、元気を出すため読みに行くといった、心のファイアウォールとしての、特別な存在でキープしておきたいところです。

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2010年8月 9日 (月)

目立たないよう振る舞う時

このところ目が痛くて、コンタクトレンズ装着ではなくてメガネをかける時が増えました。痛みの理由は判明しないのですが、目医者に何度も通って、コンタクトを約30年(すごいキャリアでしょ)続けてきたハードから、ソフトに変えても目が痛い。だから、メガネは本当は好きではないけれど、コンタクトより刺激が少ないだけにこちらを優先せざるを得ません。そのため、「あれ、前回の取材の時と印象が違うね」と思われる方が増えることでしょう。

実際、ある会合でそれまでに6回くらい会っている先生に声をかけたところ、反応が悪くてどうしたのかなと思っていたら、その後、「山本さんだって分からなかったよ」といわれたのです。夏場だと、髪を下ろしているのではなく後にまとめていることが多いし、これに大きなサングラス(メガネの上にかけられるものを入手した、と以前のブログでも自慢しました)と日傘を持ち歩く私ですから、道ですれ違ったくらいだと、絶対に私と気づかれることはありません。

目立たないように振る舞って、だれにも気づかれずにいたい時に、これは便利ですね。あまり得意でない分野の会合や会見にちょろっと顔を出して、すぐに退席してしまう場合などがそうです。とりあえず、資料だけ受け取って、後にしっかりした取材を考えましょう、という形ですね。あと、このお盆の時期もそう。取材は入れないでおいて、片づけ三昧(棚、取材メモ、配布リリース、名刺、パソコンデータ etc)の日は、洋服も汚れてもいいラクチンものを選ぶからです。

でも、このように時間に余裕がある時期こそ、外に出るということもあるわけで。「山本さん、高層ビル最上階の△ホテルの高級ランチをごちそうしますよ。今の時期ならゆっくりできるでしょう?」というケースとか(笑)。「取材が入っているから」と断ることなく、今週あたりはすぐにOKしちゃいますって。その場合、メガネではなくコンタクトレンズなのはもちろん、髪は縦ロール(少女漫画のヒロイン)で、お姫様ドレスでお待ちしています~。

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2010年8月 4日 (水)

トラブル解決はまず、人対人で

ちょっと難しいけれど紹介したいという内容で、ある支社エリアのA大学のB先生を取材しました。東京での講演を聞いて、記事で紹介する価値があると判断したので、講演後に名刺交換をしてご挨拶。手元に講演のパワーポイントがそろっていたけれど、中身が複雑だったので、その後にメールで質疑応答のやりとりを何回かして、記事にしました。ところが。だいぶ(1カ月くらい)たってから、うちの部のデスクを通じて、その支社の編集部長から連絡が届きました。A大学からの抗議というのです。

詳細は省きますが、3点挙げられていました。1点は「△と書いてあるが、□が正しくい。違っている」というもの。うーん、ここは細かい点なので、私が理解不十分で間違えて書いたということですね。これは謝るしかありません。でも幸い、記事の大きな流れで問題になる部分ではありませんでした。それから2点は明らかに向こうの誤解で、「そんなことありませんよ、こちらは~で対応しましたから。問題ないでしょう?」というものでした。支社編集部長が幸い、親しい人だったので、私の説明を聞いて、「なるほどね。分かった、上手に応対しておくよ。A大学は支社にとって大事なスポンサーでもあるんでね」と受けてくれました。

私がその時に思ったのは、「B先生、記事に問題があると思ったら、すぐに私に連絡してくるのが筋じゃないですか?」ということでした。知らないうちに勝手に書かれたってわけではないのですから。B先生が「ここは~で、…ではなくて、あとあれはまだ正式決定でなくて」と慎重だったのは、最初から気づいていました。でも、「うるさそうな先生だから、こんなのボツにしよう」とするには、もったいない(社会に知らせる意味がある)と思ったため、メールを何度もやりとりしながら、取り組んでみたのです。それが、B先生ではなく大学の本部や広報を巻き込んで、文書で抗議してくるなんて~。3点のうち、2点はB先生の大学幹部に対する説明がイマイチで、誤解が生じたとしかが思えないし。もしかしたら、B先生が問題視したというより、広報担当役員などが「この記事はなんだ!」と騒いで、こうなっちゃったのかなあとも考えました。

ここでどう動くか? B先生からの抗議だったら即、私も電話なりメールなりで対応します。でも、今回の形ではね…。上を通して公式にいってきたわけだから、こちらの答えも支社を通しての公式型でいくべきだろう、と判断し、私からは何も連絡をしないことにしました。つまり、「取材先と記者」という人対人のやりとりではなく、「大学本部と、支社」という組織体組織のやりとりです。大きなミスをしたのならこういう形になるのは仕方がない。けれど、今回のはそれほどの話だったのかどうか…? 少なくとも1点について、私が間違えたということがあるので、あまり威張ってはいえないのですが。ただ、きっと私とB先生は、今後親しくなることはないのだろうなと想像するのでした。

取材におけるトラブルは、なるべく減らさなくてはいけないけれど、どうしてもゼロにはならないものです。記事としてきちんとしたもの(相手のいいなりPR記事ではないもの)を書こうとする以上は、ね。だけど、そこで人対人で、双方がきちんと説明し理解し合い、せっかくの縁なのだから、その先もおつきあいしていきたいと思っています。「災い転じて福となす」で、トラブルがあった相手とその後、すごく仲良くなったというのはよく聞く話ですから。皆様にも報道関係者とトラブルがあったとき、「だからマスコミなんか嫌いなんだ!」と叫ばないで、多くの記者はこのように思っていることを思い出していただければ、と願っています。

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