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2010年9月

2010年9月29日 (水)

鶴と鮭と取材

記者クラブ詰めの記者は本社に上がるのを避ける傾向があるのですが、私は月2回程度で上がるように心がけています。上司や仲間とも、時々は顔を合わせたコミュニケーションがベターだと思うからです。合わせて、決まって顔を出す先があって、その一つが論説Yさんの席です。今回は…

私「あ、Yさんいたいた。聞いて下さい~、私、勤続20周年のお休みを、9月の連休に合わせて取るんですよ」。Y「お、もうそんなに(入社してから)なるか」。「でも管理部に、『20周年のお休みって、あまりみんな取らないって聞いたのですが』と問い合わせたら、『ほとんど取らないね』っていわれちゃいました」「俺は取ったけどな」「そう? (大御所の)Yさんがとったのなら、堂々と休んでいいですよね。これがあるから遠慮して、夏休みは2日しかとらなかったのだし。うん、やっぱりYさんに聞いてよかった」「で、どこいくの?」「道東です」「おお、ちょうど俺も行ってきたとこだよ。ここに会いに行くといいぞ」と、Yさんは名刺をコピーしてくれました。

釧路市丹頂鶴自然公園の関係者でした。「近く、著者登場(本の著者インタビューのコーナー)で載るからな」「??」。いきさつを確認したところ、旅行でここへ行き、ミニ講演会をやっていたので聞いてみて、まあまあだったので即売の本を買って、宿泊の夜に読んでみたらけっこうおもしろい。で、翌日に電話をしたら幸い、著者がいるというので、再び行って、取材をしてきたとのことでした。すごいですね~。さすが論説。記者の鏡。ということで、私も最終日にここへ行きました。飛行機の時間が迫っていたので、30分だけでしたが。

私の場合は鶴じゃないんですよ。鮭。北海道のサケ。シーズンでしょ。いくつかの川で鮭の遡上が見られると観光パンフレットに載ってはいたのですが、初日にすごい場面に遭遇したのです。夕方の砂浜の海岸で大勢(その日は休日)の人が竿を持ち、大挙して押し寄せる鮭を次々とつり上げ、足元にはあの大きな鮭がごろごろころがっている状態です。こちらは地元1人プラス4人というグループで、初めての光景に狂喜乱舞状態となりました。釣り人にあれやこれや質問し、「私も持たせて!」と両手で持って記念撮影。そのあげく、なんとイクラがたっぷり入っている雌の鮭(3くらいあった)を一匹、タダでもらってしまったのでした。翌朝、連れの実家に冷凍便で送って、そのお裾分けがそろそろうちにも届く頃でしょう。

そんな思わぬ場所に出くわしたのは、私が仕事で親しくなった地元のUさんが、地元でないとあまり行かないところに連れて行ってくれた帰りだったからです。Uさんありがとう、連れの私に対する評価は鰻登り、いや鮭の川上り状態です。お礼はやっぱり、仕事でお返ししましょう。…Uさんの大学ネタ、記事でとりあげますよ。仕事相手に対する感謝は、仕事で返すのが理想。実態より過剰に扱わないように注意しつつ。今回はまあ、仕事における感謝ではありませんが。…でもね、実はUさんの大学訪問、旅行計画を立てる時にちらと考えたんですよ。ここの学長インタビューもしたことないし、って。でも、すぐに打ち消しました。だって休みだもん。20年も働いてお疲れ様、っていう記念だもん。取材はまたの機会に、って即決しました。これってY論説委員とは180度違う姿勢かなあ。ううん、いいんです。だって鮭なんだもん。鶴とは違うんですから(???)。

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2010年9月13日 (月)

これからの産学官連携施策が絡みあう

概算要求の事前記事が民主党政権になってから、ほとんどなくなりました。役人は勝手に話してはダメという政治主導のためです。それまでは8月末に向けて、取材合戦に神経をとがらせていたのですが、それがなくなってある意味、シアワセ~(笑)。

ところが概算発表後に、急ぎまとめ記事を載せるに当たっては、概況がすぐにつかめない反動が。いつもなら、「ああ、これは1面で書いた。この案件も知っている。そうか、こんな施策が出てきたのは~のせいね」と、ある程度は頭に入っているから、記事が書きやすいのです。それが今回はよく見えなくて…。ところがちょうどこの時期に、というか予算絡みゆえこの時期に、でしょうか、複数の案件が出てきました。結局、全部で5件、情報という入力と記事での出力があれこれ絡みながらの走りとなりました。

1) 8.31 「産学官連携基本戦略 複数の産学で特許活用 文科省骨子 マネジメント専門家育成」  ~委員会で議論のものの先取り、基本戦略は仮称段階

2) 9.1 「オープンイノベーション推進 JST、産業革新機構と協定」 ~会見 

3) 9.3 「文科省11年度概算要求 産学連携・イノベーション 『明日に架ける橋』プロ で拡大 …略」  ~文科省3時間会見からのピックアップ

4) 9.10 「JSTと産革機構連携 技術と市場 連動を加速 研究・事業を総合支援 〔死の谷〕越えへ相乗効果」  ~2の解説

5) 近々掲載予定(すでに発表済み) 「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略 策定」  ~これは1)の正式決定後の資料配付

これらは全部、からんでいるのです。つまり…

「産学官連携はこれまで、研究成果はいいのも出てきて知財化など進んだのに、それを活用して実用化するところにつながっていない。これらの間の〔死の谷〕を越える「明日に架ける橋」プロジェクトを推進する。これは中川副大臣が旗を振って議論してきたプロジェクト。事業化の知見はない科学技術振興機構(JST)と、国の巨大な公的投資機関として動きだした産業革新機構が提携し、いろいろな大学の知財を集めた〔知財ファンド〕と、大学発などのベンチャー投資で、高率で事業化が進むようにしていく。これは2013年度までの中期計画である〔基本計画〕の柱であり、2011年度の概算要求の中心でもある」ということです。

時系列的に一つの取材で一部分が見えてきて、どうやら絡んで執筆したほうがよいようだと判断するも、情報入手日が前後して、どの大学面の掲載日に載せるのか、急ぐから科技面かも含め、だいぶ混乱しましたよ~。例えば1)は委員会で取りまとめるものだから当初は8月頭にでそうだと踏んでいたのに、修正が相次いで次の委員会でとなり、その日付は8月末に決定。けれども、概算要求の記者会見日はその前なのか後なのか、直前まで分からなかった。どっちが先かで、状況の判明の仕方と記事の書き方が変わってくるのだから…。

「新聞なんか発表情報による記事ばかりだから、紙面がなくたってウエブ情報で分かる」という人はいるし、簡単な内容ならそうだと思います。でも、こういうのは違うでしょう? 発表と、オリジナルと、解説と、1)~5)を読んで頂けると、だいぶ理解が進むというものだと思います。というわけで、例年とはだいぶ違う大変さとおもしろさを味わった概算イベントとなりました。

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2010年9月10日 (金)

東大・石川正俊教授のテレビ放映

「テレビに出るよ」との情報をもらったときの心がけはこれまで、「さっぴいて受け止めること」でした。取材先の先生にそういわれて、実際に写ったのは30秒ということが、時々あったからです。今回も、「30分番組といっても、どこでどれだけ出るか分からないから」と、暇でも困らないように実は通販カタログを傍らに置いて、テレビの前に座ったのでした。ところが、今回は違いました。5(日)のTBS「夢の扉」は、一人の人をずっと取り上げる番組なのだと、知らなかったのです。実際は全編、東京大学大学院情報理工学系研究科の教授の【石川正俊ワールド】だったのです。

紹介された研究成果は、私はいずれも知っていました。でもやっぱり、ロボットをはじめ映像受けするコンテンツを持っているし、いつも意識している(研究室HPからユーチューブに飛んで見られるので、世界中からスゴイアクセスがくるという)だけあって、テレビを通して動画を見ると関心することしきりでした。基本技術は、1000分の1秒ごとの画像が撮れる、超高性能動体視力を持った「ビジョンチップ」です。これをどう応用するか。一つは【絶対に負けないじゃんけんロボット】。1000分の1秒単位で、人間の手の動きを察知して、何を出すか確実に予想できるので、ちょびっとだけの〔後出しじゃんけん〕によって必ず勝つ、という仕組みです。【百発百中のバッティングロボット】も、人間が投げた玉の位置を1000分の1秒単位で把握できるから、絶対にバットに当てることができる。最近の大注目案件が、【パラパラ動画のスキャンで、書籍電子化も楽々勝】(これは私の命名)です。本のページをぱらぱらとめくるだけで、カメラが1000分の1秒単位でその画像をスキャンしてくれるので、これまでは印刷された本のページを一ページずつ繰ってカメラで読み込んでいたのとは、段違いの効率化が図れる、というものです。大日本印刷との連携で実用化直前にまで開発が進んだそうです。あと、番組最後に文科省で委員をしている産学連携推進委員会の会議風景の画像がちらり。こちらは「(文科省前で語るシーンとか)たくさん撮ってもらったのに、ほとんどカットされてしまった」(本人のメール談)そうです。

私が先生に初めて、お会いしたのは、東大が法人化前に産学連携室を立ち上げたときの、初代室長だった時でした。その後、40歳代で東大副学長(産学連携担当)になり、全国の産学連携担当者が「東大はどう動くんだ」と注目している改革案が続々と出てくるところを、記事を書かせて頂きました。その後、副学長を終えて研究に戻り、今度は弊紙のロボット担当記者がガンガン記事を書く形にバトンタッチです。

私が訪問したときの技術自慢話では、やりとりはこんな感じです。石川先生「最近はこんなのを開発したんですよ。 ~で△で□なんですよ!」、山本「はあ」、先生「もっと驚いてよ、すごいんだから」。これ、特定技術の分野が分かっていない記者なり一般人、すべての反応だと思うのですよ。具体的に「何がすごいのか分からない」。それが画像だと簡単に理解できてしまいます。

ネット時代の情報発信はとりあえず棚に置いておいて、テレビ報道が新聞報道に優る圧倒的な優位性として、映像の分かりやすさ、浸透のしやすさがありますよね。複雑できちんと文章で説明しなくちゃいけないケースを除くとみんな、やっぱり新聞よりテレビが好き。何だかよく分からないのは、取材先のこういう反応です。「いやあ、山本さん、この間は記事にしてくれてありがとう! おかげで、その後にAテレビとBテレビも来てくれたんですよ!」って。これって私の記事とテレビのどちらをより評価しているんだか、感謝されているんだか、複雑な気分です…。

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2010年9月 2日 (木)

一人二役

デスクが夏休みをとるので来週は2日、本社で替わりにデスク業務をする予定です。「大学面を組む日にするのがいいだろう?」という意見はもっともだと思ってOKしたのですが、その後で気づきました。「大学面の原稿を組む日には、本社でデスク業務にかかりきりだよね? ということは、大学面の原稿が十分でない場合は、その前日までに私が文科省クラブから写真や図もそろえて出稿を完了しておくんだよね? ついでにいうと、確認用に資料をどさっと本社に運んでおくか、もはや確認は不要なくらい、きっちり書いて出稿しておくんだよね?」って。というわけで、今、忙しくて頭がスパークしている状態です。

来週、掲載しようと考えていた読み物記事があります。内容もけっこうあるので、長めに書いて、原稿不足をカバーするのにもってこいです。そこでデスクに「△について書きたいんだけれど、~とか~の事情を考えると、どう書くのがいいかな」と相談したところ、返事は「好きにしていいよ。デスクなんだから」。す、好きにしていい? そ、そういわれるとそうだけど。大丈夫かしらん。そんな【自作自演】、というか【一人二役】で…。

実は以前から、「フリー」で仕事をするって怖いなあと思っていました。だって、仕事の質の善し悪しを自分だけで判断したうえで、顧客に仕事の結果を渡すわけです。悪かったら、いつのまにか顧客が離れていくだけで、だれも本人のために改善の助言をしてくれないわけです。私の世代だと、デザイン系の大学を出てすぐ、フリーデザイナーになるということも少なくなかったのだけど、「やはり相当、社会的評価が高まってからでないと、フリーになるって危ないなあ」と思っていました。会社員であればちゃんと、周囲が「これ、マズイよ」といってくれて、上司が指導してくれるのですから。…なんて20代じゃないんだから、「そんなことを今いっているんじゃ、マズイよ」っていわれそうですね。

それにしても、来週のために今、忙しくしているなんて変な感じ。夏休みのためカバーし合うのはお互い様なので、これは仕方がないです。ただ、なんか…、「忙しいけど、(自分の)夏休みが控えているんだから、いいの~」って錯覚してしまいそうなのです。

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