【アンケートリテラシー】を身につける
弊社の文科省記者クラブの幹事業務が先週、終わりました。私が仕切ったレクの一つが、「理系出身者は文系出身者より年収や役職者比率で優位」という慶応大学・京都大学などのグローバルCOEグループのアンケート結果でした。弊紙はけっこうスペースを取って明日付で掲載です。
今回のはCOEだけあって、もっとも厳密な社会調査手法を採用していました。全国で標本配分数を決めて、選定対象者が調査協力は嫌といった場合は代替をこう選んで…というしっかりしたものです。アンケート(ちなみに、アンケートという言葉は調査という意味が含まれていて、弊紙のパソコンソフトで『アンケート調査』と入力すると『アンケート』と校閲修正がかかります)にはいいかげんなものがたくさんあって、だけどいったんマスコミで報道されると、結果だけ一人歩きしちゃうので、私は注意しています。少し前にきちんと把握する必要があって、社会科学や統計学の教科書をひっくり返して、最低限は身につけたのですから! そして、社会人になる以上、大学の学部教養あたりでほとんどの人が基本を学ぶようにするとかすればいいのに~、少なくとも報道にかかわる人はそういうことを理解している必要があるのではないかな、と思っています。
そこで私がお薦めするのは、「『社会調査』のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ」、谷岡一郎著、文春新書です。「社会ですごい話題になったあの調査、こんなに偏りがあるのに、それをマスコミ人は何もチェックしないで、情報垂れ流しじゃないか!」 と大手新聞社の実例を使って辛口で述べられています。
「マスコミの皆さんに…次の三点はチェックしてほしい」と挙げているのは、1.何を目的とする調査か(主催者は誰か、仮説は何か) 2.サンプル総数と有効回答数は何人か。どう抽出したか 3.導き出された推論は妥当なものか です。あと、別な個所で 「比較できないサンプルを使っているのはだめ」というのもありましたね。
1.は「こういう結果ではないか」という、よくいえば仮説、悪くいえば意図が入ってくるため。2.は数が少ないのはもちろん適切でないし、回収率が低いと暇な人しか回答していないという偏りになるし、ウエブでの調査なら高齢者はそもそも排除される傾向だろうとかあるから。あ、これらは私の理解による解説です。
けれども 3.の推論は難しいですね。先日の会見でも、アンケートのデータを受けて、「なぜ、そうなった?」ってQ&Aがたくさん出ました。でも、「なぜかという調査は、今回はしていない」のが本当のところです。だから、私も「~が影響している、と同研究グループは説明する」「~と考えている」と表現しました。見出しはまあ、「~」となっちゃうのは仕方ないとして、読者は「~なんだ」って信じないで、「~という理由は推測なのね」と理解する力が必要です。社会調査論の分野には、「アンケートリテラシー」とかいう言葉があって、報道人や一般人にとっての重要性が強調されているのではないかと思いました。それでウエブで検索したところ、「データリテラシー」という言葉が使われていることを知った次第です。
ところで、この本の著者の谷岡氏ですが、大阪商業大学の学長で、ほかにギャンブル社会学の本などもあるようです。実は、1年前にカタール出張に行ったとき、現地で一緒になって取材もした方です。本をもっと先に入手して、気が付いていれば、あれこれ議論してもっと盛り上がったのになあ。東京だったらすぐ出かけているのだけど、大阪だとコレといった取材もないのに行くのは難しくて。私の「そのうちどこかで、もっとお話してみたい人」リストに載るお一人です。ブログに載せることで、どこからかツテが降ってこないかなあ~と思いつつ。
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コメント
これぞ、大手どこかで「支持率と視聴率」は同じようなものだと聞いたことがありますよ…。などは「クロスオーナーシップ」で真実かどうか?難しいですね
投稿: watoson | 2010年12月17日 (金) 22時32分