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2011年1月

2011年1月26日 (水)

細胞シートの再生医療、リーダーは工学研究者

東京女子医科大学・先端生命医科学研究所で細胞シートの再生医療を手がける、岡野光夫先生の取材に昨年末、行きました。記事は1・7付の先端融合イノベーション事業のまとめに加え、1・24付の社説です。岡野先生、すっごい有名になりましたねえ。日本における医療系のイノベーションの立役者として、政府の注目も大きくて、大型予算をあちこちから得ています。

私が最初に取材にいったのは、20年近く前のこと。まだ熱応答性の高分子材料で、細胞培養皿を試作したレベルでした。「この培養皿を使って細胞をシート状に培養すれば、温度を変えるだけできれいな細胞シートを得られる」という研究成果を、おもしろいなと思いましたが、まさかこんなになってくるとは。今は患者の口粘膜を培養した細胞シートで、角膜再生や食道再生のヒト試験が進んでいるし、この先は多種の細胞シートを重ね合わせて臓器そのものを人工的に作るのが、実際の目標だというのですから。

社説で強調したのは、岡野先生が高分子の工学研究者であるということです。自分の分野で研究成果を出せれば満足、後はだれかが使ってくれればうれしい、として終わるのが普通の基礎の研究者でしょう? でも医療系は病院で日々、患者を治すことに忙しい医師が中心で、新しい医療システムを構築するところまでやってはくれない。だから、岡野先生は、工学の基礎研究者でありながら、「これは自分がすべきことだ」と心を決めて、その実現に向けて邁進しているのです。その点が素敵だし、ぜひ多くの大学や製造業の研究者を刺激したいと思って、社説に書いたのです。

というわけでこの社説、気に入っているのですが、掲載後に読み返しての反省点が一つ。岡野先生が取材で口にしたかっこいい表現を、地の文(コメントを引用するカッコではない文)に使っていて、あたかもそのかっこいい表現が執筆者のオリジナルみたいに見えることです…。これ、「絶対にマズイ」ことではないと思いますよ。インタビューではないので、コメントばかりを入れられないという事情もあります。でも、取材された方としてみては、「ちょっと、なあ」って感じるかもしれません。この内容の社説ですから、オリジナリティーの重視は当然のこと、それだけにこれは失礼だったと反省しました…。

この埋め合わせではありませんがもう一つ、岡野グループの記事を準備しています。グループのキーパーソンのお一人で、これはまた岡野先生とは違う意味で魅力的な人です。記事の形式はインタビュー、相手が実際に口にした表現を、カッコで引用するのを中心に書いていける形式ですから、今度は比較的、大丈夫。そうはいっても一言一句、その通りに書くわけではないので、「私はこんなふうにはいっていない!」とがっかりされないよう、気を抜かずにやらなくてはいけません。

この取材に過程で、岡野先生がかつての東大・鶴田研出身で、同じ時代の仲間に東大の片岡一則先生とか、東京工大の赤池先生とかがいるのに気づきました。かつてバイオ工学をよく取材していたため、それぞれにお会いしていて、いずれも目立つ存在でした。それだけに、「個性派研究者の素地は、やはり研究室で育まれたのかな」と思いました。次のチャンスにはこんなことも聞いてみて、また読者へヒントとなる情報を提供することにいたしましょう。

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2011年1月20日 (木)

取材先のイベントが重なったら

年明けはリリースが全般に少なくて、一方で年度末が近いから国の予算がからんでいる事業関係はイベントが目白押しです。よって、イベントは本来は「そのうち取材にいくべきネタ探しに」とか、「おもしろい内容なのであとでゆっくり読み物記事に」とかいった意識で参加するべきなのですが、そうもいっていられない。「ニュース記事としてすぐ書けないか?」という目でつい、チェックしてしまいます。来週の24(月)と25(火)は、なんと三つのイベントがバッティングしています。

その1。文科省支援事業の大フォーラム。すぐ執筆ではないけれど、読み物記事になるかな、という分科会が多数あり。「今すぐのニュース記事ばかり追っていては卑しいよね」と考え、ウエブ登録をしようとしたらすでに満席。あの分科会も、その分科会も。さすが文科省の大予算事業ですね。悪口じゃないですよ、数年前にこのフォーラムのパネルディスカッションで、パネリストをさせていただきましたから。聴講1000人を前にしてのパネリストは初めてでしたもん、感謝しています。それで今回は、事務局を務める会社に「取材なので入れてもらえませんか」とメールするも返事がない。事務局はスムーズな開催が役目だからマスコミ対応は役割外かな、と思っていたら、「連絡が遅くなりすみません。報道席を用意していますからどうぞ」との電話が。恐れ入ります。報道席って前の方でしょう。スクリーンや発表者の顔がよく見えるのはよいのだけど、居眠りをしてしまうとその姿もほかからよく見える気がします…。

その2。経産省系独法のセミナー。こちらも例年モノで大がかり。全部に出るのは辛いなと思って、親しい幹部に「オススメのセッションはどれでしょうかネ」と問い合わせ中。こちらは私の動きが遅くて今日、メールしたところだから、間に合わないかな…。オシャレなホテルで行われるけれど、ちょっと遠いので、「このセッションだけ」と行きにくいのが難点。あ、これって囲い込み? 「他のイベントもあるけどそっちには行かないで、一日ここに参加してください」って狙いかも。

その3。私立大学が企業にPRするセミナー。これは半日だし、その場で記事2本が予想されるので優先です。懇親会はマスコミ人も有料だというのでちょっとパス。主催者の皆様、無料で懇親会に誘った方が、そこでのコミュニケーションンで記事にしてもらえる可能性が高いので、ご思案下さいね。となると、関係者へのあいさつは休み時間に済ませて、効率的にいきましょう。

という感じで、あれこれ考えて行うので、参加決定はどうしてもぎりぎりです。「定員が一杯でもう締め切ったのに、山本記者が今頃、いってきた」という場合でも、嫌な顔をしないでぜひ、ご対応くださいね~。

別件。メガネが出てきました。どこから出てきたかは…恥ずかしくていえません。前々回のブログで大口をたたいたことをきっかけに?メガネはブラックホールに吸い込まれ、前回のブログでそれを謝りました。そして今回のブログでは…「新しいメガネができあがって、2日目に出てきました」というしょうもないご報告です。でも、壊したりなくしたりすると困る必需品ですから、2本くらいあってもよいというお導きなのでしょう。常に前向き。というか、常に自分のよいように解釈する私です。

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2011年1月14日 (金)

先端融合イノベーションと、ブラックホール

1月7日付記事で「先端融合領域イノベーション事業 産業特性生かし成果着々」を掲載しました。事業期間10年、1件当たりの国の支援が年約7億円、企業も同等の支援という、開始の2006年度にはまだ珍しかった大型プロジェクトです。その後、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」など規模の大きなものは増えましたが、産学連携の観点で一件当たりをみると、これが圧倒的でしょう。しかも私は、開始前年度の初夏に、この事業がスタートすることを一面トップで書いたこともあって、ずっと注目してきたのです。今回、親しい取材先の一人に「なぜ今(取材するの)、って気もしますが」といわれたのですが、答えは「国の予算をたくさん使っている事業は、採択時だけでなくその後のチェックをマスコミがすることも必要だと思うのですよ」というものです。社会部ネタだと「その後」もけっこう取材されているけれど、科学技術関係は手薄でしょう? 政府の仕分けはその意味でも斬新だったと思いますから。

ラッキーだったのは、京大・キヤノンの生体イメージングです。たまたま、キヤノンが京大にこの案件関連で寄付する記者会見が東京であり、その直後に取材をお願いできたので、10人近い関係者が顔をそろえてくれたのです。堅い京大と奔放なイメージのあるキヤノンですからね。医学部教授の「なんと無礼な、こんな野人たちと組むのかと思った」というスタート当初の感想コメント(記事に書きました)は効いているでしょう? それが今や…という事例で取り上げました。

実はこの記事は、「手間がかかる割にニュースはあまり得られないだろうな」と思いつつ取り組んだのです。技術ではなく、産学連携の仕組みとしての効果に着目したもので、3年目の再審査(成果を出すのに皆、必死のころ)とずれた時期の取材だったからです。東大と富士通研究所など5社との量子情報エレクトロニクスなんて、技術内容にはまったくついて行けないことが分かっていたので、最初から産学連携の企業スピンアウトベンチャーに焦点を絞って取材したくらい。でも、やってよかった。「私しかこういう追い方をする記者はいない。一度、記事にしなくては」と気になっていたのですから。大学面が1月から金曜のみになり、少し取材・執筆に余裕がでてくる(はず)ので、こういうエネルギーをかけた記事も時々、手がけたいと思います。

それから別件です。大事ななくしものがありました。オレンジ色の派手なケースに入ったメガネです。もっとも考えられるのは洗面所あたりで落としたという状況なのですが、見つからない。この1週間、「コンタクトレンズは仕事の時間を優先し、自宅では裸眼も」としたのですが、なにしろ視力は0.04です。文字など読めるのは、目から30センチメートル先まで。机に顔を付けるようにして版画の原版を掘っていた【棟方志功】状態でした。それに、好きで5パックも購入した食料品も行方不明。店から受け取ったことは覚えているのに。というわけで、我が家にブラックホールがあり、そこに吸い込まれたのではと思うような紛失物続きなのです。

ひとつ気になるのは、前回のブログで「自宅でモノなんかなくしても、平気だもーん」と大きな口をたたいたことです。ここで謝ります。「モノの皆様、私は大変、失礼なことを言いました。どうぞ許して下さい。皆、人々の生活を支える大切な役割を果たしてくれています。モノづくり新聞を掲げる会社の記者でありながら、思慮不足で申し訳ありませんでした」。これで大丈夫だとよいのですが。明日、メガネが出てきたりして。昨日、新しいのを作ったばかりなのですが…。

えっ、今回のブログ、前半と後半で関係あるのか、って? 関係ないですよ。ブログタイトルをよーく見て下さい。「先端融合イノベーション」と「ブラックホール」の間にはじ点( 、のこと)が入っているでしょ。別物の2つのテーマを書きます、と最初から宣言しているんですから。気づかなかったあなた、もっと思慮深くならないと、オイシイ話も逃しちゃいますよお~。

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2011年1月 6日 (木)

今年の取材対象はアラフィフを重視

元旦から日があいてしまった時には「明けましておめでとう」ではなくて、「新年おめでとう」を使うそうで、もっぱらそれを多用している私です。今年は産学連携にしろ科学技術にしろ、同世代のアラフィフ(アラフォーだったはずが、40代の上半分に入ってしまった…)の先生を積極的に取材していきたいと思っています。だって団塊世代の大学人が65歳定年を迎える「2012年問題」があり(60歳定年の企業の大量退職時とずれている)、この先の大学を引っ張っていくのは私たち世代なんだなと思うからです。政治やビジネスの世界では、40代トップというのも昨今は少なくないのですから、彼ら・彼女らに「負けてなるか」でがんばりましょう。

日記好きの私だと前にいいましたが、昨年で「10年日記」が終了し、2冊目の10年日記を購入しました。すごいでしょう? 所々はあいていますが、一日3行程度のメモの集積で、これはちょっとした宝ですね。私はイベントがあった時や、仕事で超悔しい思いをした時に書く日記(たまにしか書かないけど長いタイプ)は、だいぶ前にパソコンに変えているのでバックアップをとっています。少し前に銀行預金も一式、生体認証に変えました。写真だって大事なのは、自宅と職場とダブルで置いているという慎重さ。もう、泥棒が入ろうと、火災が起ころうと平気だもーん、といいたいところですが、10年日記だけはね~。コピーするのもさすがにおっくうで、となると替えの効かない唯一のものなのです。

今回の年末年始は「一年で新聞社がもっとも暇な日」と思われる日に、出勤当番をしました。デスクや部長の休日出勤は、紙面組みの仕事があるのですが、編集委員が交替で出ているこの当番は、まさに電話当番。あと他紙のスクープチェック係。そのどちらもほとんどない日でした。「昔の本社屋は暖房が全館一斉型でさあ。正月に出たら寒くて寒くて、雪まで降ってきて寂しくて、二度とやりたくないと思った」と親しい編集委員はいっていましたが、今はそんなことありません。共同の大机にめいっぱい、自分の書いた記事を広げて【スクラップ三昧】でした。

弊社本社は東京・日本橋小網町にあり、隣に小さな「小網神社」があります。最近は七福神巡りのパンフレットなどを使ってお参りする人が増え、朝10時の出勤時には5,6人を見かけました。昼休みに外へ出ると200人?くらいの列。すごいなあ~。私は混み混みが苦手なのでもちろんパスです。ところが帰宅する19時には…だれもいない。そこで急に気が変わってお参りしていきました。「今年は△と○と□と☆と…、よく学びよく遊ぶ型でまいりますので、ご支援下さいませ」って。では皆様、今年もよろしくお願いいたします!

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