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2011年2月 4日 (金)

「この部分って書いていいの?」

取材のテーマそのものに対して、「これって書いていいの?」と迷うことはほとんどありません。そんな丸秘事項なら相手が先に、ダメだと制しているからです。けれど、取材を進める中で「この部分って書いていいデータなのかな?」ということが時々、あります。最近の例を二つ挙げてみます。一つは新プロジェクトの予算で、もう一つは協会会長選挙の候補者の得票数でした。

駆け出し時代に受けた訓練は、「聞いたこと、知ったことはすべて書く」というものでした。でも、少し経験を積むと、こちらが配慮してあげないと危ない取材先がある、ということも分かってきました。「「いやあ参っちゃったな、あのデータ、出たらまずかったんだよ」と取材先がいってきたりするのです。それがすごい情報なら「書いちゃダメっていわれませんでしたから」と毅然と(?)跳ね返し、読者のメリットを守ります。でも、たいしたことのない情報なら、取材先が「かわいそうだったな」と気になります。

予算の件は、個別取材で出してもらった資料に書かれていました。でも公募プロジェクトの公表事項以外では、金額はあまり表に出さないでしょう? 巨額で大ニュースっていうほどではないけれど、規模が示せるなら、プロジェクトの本気度が分かって、やっぱり読者には情報としてプラスのはず。書いた方がいいと判断しました。そこで、「この予算は~なのですか?」とちょっと別の角度からの質問をしてみました。もし、公表が好ましくない場合はここで、「あ、これは出さないで」と相手が気づいて反応してくれると思ったからです。結果、その反応はなく、安心して記事に書き込むことができました。

もう一つは発表の資料配付です。次期会長選出に向けた選挙結果で、3人の獲得票数が30、27、21票と載っていました。1位と2位がけっこう、競っていたんですね。最初は「当事者としては書かないでほしいだろうな」と思いましたが、なにしろ配布資料に載っているんですからねえ。私が配慮して書かなかったとしても、すでに公になってしまった情報です。それに、例えば大規模人気大学の学長選だったら、得票数の結果は衆人の関心の的であるのは間違いないでしょう(通常、表には出てきませんが)。というわけで、「書くべきだな」と判断しなおしました。「△先生も意外に健闘したんだね」って読者にプラスの情報になるでしょう。落選者の票が1票しかなかったら、協会もさすがに公表しなかったかもしれませんが。

記者は取材先Aと取材先Bの間で、どっちにも寄らない(寄り切ってしまわない)コウモリだと口にしてきましたが、このケースも同じですね。「この情報を出したら、読者は喜ぶか? 取材先は困らないか?」の両方を勘案し、読者と取材先のどちらにも寄り切らないのですから。これって何といいましょうネ。ダブルコウモリ? コウモリの二乗? それとも新種のコウモリかなあ?

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