博士(学術)の学位を取得いたしました!
東日本震災が生涯の記憶となるこの3月、私は博士(学術)の学位を東京農工大学から取得することができました。産学官連携をテーマに研究と本業の相乗効果を出し3年半と比較的、短期で取得できたのは、取材先や職場の皆様のご理解、ご支援があったからこそ、です。博士とくに社会人の場合は、学部や修士の学生と違って学位取得に至らないケースも多く、相当な覚悟をしていました。それだけに、涙ぐむ大変な時もありましたが、基本的には常に前向きに、人間性を高める人生の重要な1時期として取り組めたことは幸せであり、かかわってくださったすべての方々に感謝しています。
私の場合は、研究のオリジナリティーとなる仮説に対し、調査研究として取材やアンケートを活用し、その結果を弊紙の記事にまとめた後に、統計学的手法などで分析して論文にするスタイルでした。そのため、私の活動内容を十分にご存知ではない方に「公私混同か」と見なされるかもしれないと心配し、公には社会人大学院生をしていることを伏せていました。ブログでは「半分仕事、半分プライベートの大プロジェクト」といった言い方をしていたことをお詫びします。
博士論文のテーマは「工学系大学発ベンチャーを中心とする産学官連携コミュニケーションの研究」です。11年の専門記者の経験から、「コミュニケーション」の観点で産学官連携をとらえ、社会科学の研究者とは違う、現場の工学系研究者・技術者の立ち位置から研究したのが特徴です。理工系の視点でと望んだため、所属は工学系の化学工学専攻(修士までは化学だったため)でした。ですが、学際的な内容(学術という博士号は、学際分野の研究に対して付くタイトルです)なので5つの学会に顔を出し、4本の査読論文を完成させ(正確には最後の英語論文を査読修正中)、これらの集大成として博士論文をまとめることができました。多彩な現場経験と深い思考から、新しい知を切り拓く手法を、博士研究を通して身につけたことは大きな財産となりました。さらに、大学院教育や学術研究の本質的なところに触れられたことも、今後の私の仕事の質を高めるのに寄与してくれるでしょう。
査読論文の1本は科学技術コミュニケーションというウエブジャーナルで公開になっています。査読者の指摘とそれに対する回答書はA4で13枚とみっちりだったのですよ。フリーで読めますので、お時間あるときにでも見ていただければうれしいです。URLは http://hdl.handle.net/2115/44523 です。大学図書館のリポジトリ(貯蔵庫の意味)を通じて、少し先には博士論文自体も公開になりますので、また改めてご連絡しますね。
多くの科学技術関係者は、このたびの大震災と原子力災害で今後、従来通りの思考ではいられないことを実感するようになりました。けれどもなお、多くの社会的課題の解決は、科学の知をなくしては難しいのも確かです。私も博士号について思うたびに、このことを思い出すに違いありません。そんな貴重な体験を胸に、科学技術と産業にかかわる皆様とともに、未来に向けて進んでいきたいと思います。
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