自費・有休で学会に参加
所属する学会は4つ…というのが社会人博士学生時代の状況でしたが、修了後は会費負担も重いことから学会を絞ることになりました。「産学連携学会」はその生き残り側の1つです。取材として会社の経費で、国内外の学会取材に飛び回るということは容易ではない事情から、今回は自費・有休で参加しました。仕方がない、自身のライフワークになりつつあるものですから。今年は佐賀市での第9回大会でした。
社会科学系の学会は学術の厳密性にうるさくて、閉鎖的で、その結果、学会員が少なくて運営も大変…というところが少なくないのですが、この学会は違います。共同研究センターの先生などが中心で、産学連携の実務者を大切にしているからです。企業人の参加もあるし、毎年は無理だけど今年は地元で開催だからという参加者も少なくなくて、今回は約300人が集まったそうです。文科省と経産省の産学連携担当課長は例年通り、今年はさらに農水省の担当課長クラスのご出席もありました。JSTセッションも開かれていて、産学連携関係の助成金申請書の効果的な書き方レクまであるんですよ~。
私は自分の発表もしますが、ほかの参加者と違って、記事のネタをと期待しているため、要旨集をひっくりかえして「これとこれは発表時間が重なるから、じゃあこちらの先生は懇親会でアタックするとして…」などと頭を巡らせます。真剣に資料をにらんでいて、はっとして、「あ、これ業務じゃないんだから、あまりに必死になる必要はないんじゃん」と我に返ります。でも、地方大学の先生に会えるせっかくのチャンスだし、ここでネタを稼いでおくと結局はあとでの仕事が楽になるので、再び「あまりに必死になることはないけれど」と思いつつ、要旨集をにらむのでした。
記事分析の研究をした小樽商科大学の澤田芳郎先生が、「日刊工業新聞の場合は、どうかな?」とコメントを求めてきて、そのコメントがその後の発表で引用されちゃうというのもありまして、なんか不思議な感じ。澤田先生は京都大学の共同研究センターにいらした時からのおつきあいですが、いつも独特の発表をしています。昨年の第8回大会(函館)での講演タイトルは「産学連携の風俗産業モデル」(京都大学の金多隆准教授との共同)。ほかの先生と「みた?澤田先生の要旨」なんて話題騒然です。これはですね、産学連携活動を風俗産業に重ね合わせた分析です。つまり…コーディネーターは「ポン引き」。歓楽街を訪れた「客」(企業ですね)に声をかけ、「嬢」(大学の研究者)の魅力を言葉たくみに訴えて引き合わせる。客に不満が残ってもそういうものだと説明し、怒る嬢もなだめ、それで片づかない場合に呼び出すのが「ヤクザ」、つまり大学の知的財産部である…。
す、すごいでしょ。でもこれがまた、すばらしく言い得て妙で、さらに遊郭になぞらえて「太夫」(教授)や、遊女上がりの「やり手婆」まで出てくる。大企業が「旦那」なら、中小企業は「町衆」とか。そして、「風俗産業と産学連携はなぜ似るか」という考察をしています。こんな発表があるなんて(さすがに論文では難しいでしょうけれど)、学会の懐の深さを感じさせますね。
学会としては産学連携の活動事例や、統計的分析ももちろんあって、この例を挙げるのにはちょっとためらいました。でも、学会の要旨に出ているんですからね。あ、学会発表タイトルは確かウエブで公開していたし。ということで紹介しちゃいました。みなさん、来年の開催地は高知ですよ。おもしろい発表を聞きに、いらしてください~。
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