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2011年6月

2011年6月21日 (火)

自費・有休で学会に参加

所属する学会は4つ…というのが社会人博士学生時代の状況でしたが、修了後は会費負担も重いことから学会を絞ることになりました。「産学連携学会」はその生き残り側の1つです。取材として会社の経費で、国内外の学会取材に飛び回るということは容易ではない事情から、今回は自費・有休で参加しました。仕方がない、自身のライフワークになりつつあるものですから。今年は佐賀市での第9回大会でした。

社会科学系の学会は学術の厳密性にうるさくて、閉鎖的で、その結果、学会員が少なくて運営も大変…というところが少なくないのですが、この学会は違います。共同研究センターの先生などが中心で、産学連携の実務者を大切にしているからです。企業人の参加もあるし、毎年は無理だけど今年は地元で開催だからという参加者も少なくなくて、今回は約300人が集まったそうです。文科省と経産省の産学連携担当課長は例年通り、今年はさらに農水省の担当課長クラスのご出席もありました。JSTセッションも開かれていて、産学連携関係の助成金申請書の効果的な書き方レクまであるんですよ~。

私は自分の発表もしますが、ほかの参加者と違って、記事のネタをと期待しているため、要旨集をひっくりかえして「これとこれは発表時間が重なるから、じゃあこちらの先生は懇親会でアタックするとして…」などと頭を巡らせます。真剣に資料をにらんでいて、はっとして、「あ、これ業務じゃないんだから、あまりに必死になる必要はないんじゃん」と我に返ります。でも、地方大学の先生に会えるせっかくのチャンスだし、ここでネタを稼いでおくと結局はあとでの仕事が楽になるので、再び「あまりに必死になることはないけれど」と思いつつ、要旨集をにらむのでした。

記事分析の研究をした小樽商科大学の澤田芳郎先生が、「日刊工業新聞の場合は、どうかな?」とコメントを求めてきて、そのコメントがその後の発表で引用されちゃうというのもありまして、なんか不思議な感じ。澤田先生は京都大学の共同研究センターにいらした時からのおつきあいですが、いつも独特の発表をしています。昨年の第8回大会(函館)での講演タイトルは「産学連携の風俗産業モデル」(京都大学の金多隆准教授との共同)。ほかの先生と「みた?澤田先生の要旨」なんて話題騒然です。これはですね、産学連携活動を風俗産業に重ね合わせた分析です。つまり…コーディネーターは「ポン引き」。歓楽街を訪れた「客」(企業ですね)に声をかけ、「嬢」(大学の研究者)の魅力を言葉たくみに訴えて引き合わせる。客に不満が残ってもそういうものだと説明し、怒る嬢もなだめ、それで片づかない場合に呼び出すのが「ヤクザ」、つまり大学の知的財産部である…。

す、すごいでしょ。でもこれがまた、すばらしく言い得て妙で、さらに遊郭になぞらえて「太夫」(教授)や、遊女上がりの「やり手婆」まで出てくる。大企業が「旦那」なら、中小企業は「町衆」とか。そして、「風俗産業と産学連携はなぜ似るか」という考察をしています。こんな発表があるなんて(さすがに論文では難しいでしょうけれど)、学会の懐の深さを感じさせますね。

学会としては産学連携の活動事例や、統計的分析ももちろんあって、この例を挙げるのにはちょっとためらいました。でも、学会の要旨に出ているんですからね。あ、学会発表タイトルは確かウエブで公開していたし。ということで紹介しちゃいました。みなさん、来年の開催地は高知ですよ。おもしろい発表を聞きに、いらしてください~。

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2011年6月13日 (月)

取材時に舟をこぐ

眠くなりそうだな、というランチ後の取材や会見で必須なのは、目覚まし用の強力メントールガムです。いつも持参しています。先日は文科省の委員会を傍聴して、その時は「ガムでは不足かも」と思ってコーヒーを飲んで出席。およよ、公開の委員会なのに委員で舟をこいでいる人がいる。眠っていることはわりと大勢、気づく状況だと思うんだけど、さすがの度胸だなあ~。席順資料で名前を確認しちゃったりして。そしてもっと驚いたのは、その人がのちに目を覚まして、意見をいっていたことでした。す、すごい度胸…。

取材時でもっとも危険なのは、メーンの記者に同席させてもらう設定の時です。今はめったにないけれど、若いうちは先輩に付いていったりすることが多かったですよね。自分が書かないと思うとすっかり気が緩んでしまって…、先輩の話が難しいこともあったりして…。

うちの科学技術部では、技術系大学院生のインターンシップを手がけていて(公募しているのではなく、相手大学とのクローズドの形)、前に連れて行った学生が本当に体を揺らしているのを見つけた時も、驚きました。自分の若い頃を棚に上げて、ですが。いったい、この状況をどう解消したらいいんだ? と迷いました。結局、彼の膝を叩いて、「眠ってちゃだめよ」と起こし、取材相手には「すみません、大学とこちらと、いったりきたりで疲れているようでして」と謝るという形をとりました。ほらほら、寝ぼけてないで、あなたも謝んなさいって!

実はこれには後日談が。このインターンシップ報告レポートは、大学のウエブにアップされるので、いつもその前に「この内容でいいですか?」とメールがきます。彼のレポートを読んでいたら、「取材に行く前は資料をしっかり読み込むのだろうと思っていたら、指導者の山本さんは電車の中で昼寝という選択をしていた。これもよりよい取材のために大切なのだな、と実感した」みたいな文章が…。は、恥ずかしい。私も「昼寝を挟んで、スッキリした頭で仕事をするのよ」と話した(助言したつもり)記憶があるし、彼は性格はいい子だったので、嫌みではなく本当に「コレは大事なんだ」と思ったのでしょう。でも、これウエブに載るの? 名指しで? …結局、「カットして」というのも大人げない気がして、そのままOKを出してしまいました。あ、お願い、読者の皆様、どこに載っているか探さないでね~。

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2011年6月 9日 (木)

土曜デスクでの記事スクラップ

〔土曜デスク〕という名の本社休日出勤が、日刊工業新聞の編集委員に課せられていて、先週は出番でした。平日とは違う社内態勢下で、〔電話当番〕や通信社からの原稿ファクスをチェックする役割で、あとはのんびり仕事です。人が少なくて、スペースも大きな顔をして使えるので、持参のおやつや記事など〔お店を広げる〕のがうれしかったりします。

ここで定番にしつつあるのが、自分の記事をスクラップ帳に貼る仕事です。なにしろ時間を食うし、記事の分類で場所もとるので、通常の記者クラブの席ではなく、本社の土曜デスクの時がぴったりです。ネットで過去記事が出せる時代だけに、さすがに「スクラップはもう止めようか」と私も思ったことがあります。でも、他の人の記事はある期間が来たら不要としても、自分で書いたものについては、やっぱりスクラップ継続で思い直しました。理由は、過去記事はキーワードや日付検索に限定されていて、自分が忘れているような内容はまったく活用できないからです。例えば、ネタに困っているとき、2年前のスクラップを広げると、「そうだこれ、その後の展開を取材してみよう」と、けっこうよい発想が出てくるものなのです。

ちょっと用事があって、古いスクラップめくった時のこと。「えっ、これ私が書いたの?」という記事が続々、です。なんといっても驚いたのは、私の博士研究の指導教員の研究成果を、9年前に1面で書いていたことでしょうか。4年ほど前、博士の入学相談に行ったときは、「研究室公開の時にお話しましたよね、よろしくお願いします」なんて会話を交わしていたので、互いに、この記事については、相手を覚えていなかったということです。まさに、〔お互いさま〕で、苦笑いといったところでしょうか…。

かつてを振り返って、「私もがんばっていたなあ」と思い出に浸るのも、ありです。バイオ燃料電池なんて、最近の話題かと思っていたら、9年前に自分で特集を書いていましたわ~。色素増感型太陽電池も、8年前にデカデカと書いてある。私ってけっこう先見の明があるかも。と、自己満足に浸って次の仕事のやる気を得るというわけです。

土曜日に大きなニュースがあると、緊急記者会見が開かれて休んでいる記者が出てきたりで、大変なのですが、幸い私は当たったことがありません。〔電話番〕で幸せです。先日、取材先に「山本さん、論説委員兼務になったの? A新聞社の論説幹部は黒塗りの車が使えるって聞いたよ」といわれました。いいですねえ、A社さんは。〔黒塗り〕と〔電話番〕で対抗してみましょうか?

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2011年6月 2日 (木)

記事とホームページの情報に違いがあったら

私の記事に対して、採り上げた組織の一員から「(その組織の公式)ホームページ情報と違っています。誤報なので訂正してください」という連絡がありました。訂正するような大事の間違いか、という最初の驚きと合わせてショックを受けました。実は、問い合わせた人が十分、状況を把握していてくれれば、こうは考えなかったという内容だったのですが、これまで体験したことがなかったのでびっくりしました。わりあいと続いて二つあり、そこに共通点があるようなので考えてみました。

まず、私が驚いたのは「ホームページと記事など、情報が違っていると思ったら、どこに問い合わせるか?」という発想で、自分と違いがあることでした。もし私が同じ立場でこの経験をしたとしたら、ホームページ情報を管理している、自分の所属組織の事務部門に尋ねるはずです。「記事にこんなふうに書いていましたが、どうなっているんですか」と。だって、所属組織の方が、知り合いのいないマスコミ某社よりずっと、近しいのですから。でも今回の連絡は、「所属組織に尋ねるより先に、記事発信者に抗議した」形になります。これが第一です。

第二は、「誤報なので訂正してください」といった、きつい言い方をしてきたことです。これもまた、私だったら「情報にずれがあるのですが、どうなっているのかお教え下さい」っていうところでしょう。「誤報」とか「訂正」とか、こちらの血圧が上がる(私は低血圧なので、少々は身体にむしろいいのかもしれないけれど)ような表現はちょっとネ~。相手とか状況が微妙だったら、〔売られたケンカを買う〕みたいになっちゃいますよお。

時間がたって今、思うのは、「連絡してきた人はともに若い人で、社会経験が浅いから、こんな反応をしてしまったのだろう」ということです。例えば、「誤報」とか「訂正」とかが、きつい表現だということは、年長の新聞好き一般読者なら分かっていても、新聞を読まない若い世代では知らないのでしょう。今回、この情報の入手法については、新聞記事ではなく、ウエブで情報を知った可能性が高い(一人は確実)のです。つまり、「私たちの読者は月5000円近い産業専門紙を購読してくれる、意識の高い組織&社会人。これらの産業に比較的近い人たちの常識と関心を基本に、取材・執筆をすべし」とこれまで思っていたのですが、ウエブの読者だと、これが成り立たないのですね。

もちろん、記事の一部は日経テレコンとか外部のウエブ情報媒体に提供していることは知っていました。弊社のホームページは震災直後に、普段の読者と違う大勢の人からアクセスがあったことも、知ってはいたんです。でも、こういったウエブを通じて、私の記事の読み手が考えてもいなかったところまで広がって、考えてもいなかった反応が起こった。これが今回の予想外の出来事だった、というわけです。

「私にけんかを売ろうっていうの!」と、いきり立ったわけではありません。ほんと、ほんとよ~。頭に血が上ったのは、確かでしたが。でも、たとえ情報は正しかったとしても、その情報がどのように受け止められ、どう波及していくかは、自分の手を離れてしまって予想外の形で起こることがまま、あるもの。これを忘れずに、謙虚な気持ちで皆様の声を聞いていかなくてはいけません。「私にけんかを売ろうっていうの!」と思ったりせずに。はい…。

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