« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »

2012年8月

2012年8月26日 (日)

ノウハウを伝えるということ

「ノウハウ」という言葉にはいい印象、悪い印象の両方があります。「手抜きですませる裏技」という意味を持つこともありますが、私は前向きの印象で使うことがすくなくありません。「無意味な精神的疲労を避け、早く本質的なものに到達するため、先達が後進に伝える大切なこと」ととらえているのです。今回の本「研究費が増やせるメディア活用術」でも、多くの人の目に触れる「まえがき」にそのことを記しました。「ジャーナリストによる類書が少ないのは、ノウハウ本はあまり高尚でないイメージがあるからでしょうか。けれども私は、本書がノウハウ本であることに誇りを持っています」と。

実は駆け出し記者の頃、早く力を付けたいと思い、技術に限らず一般の記者のノウハウを記した本を探したことがありました。ところが事件記者の実録とジャーリズム精神の本などは多いのですが、記者として動く時のあれこれを記した、今回の本のようなものはみつかりませんでした。理由としては「記者の仕事は職人仕事。現場で四苦八苦して(オン・ザ・ジョブ・トレーニングと称している)身に付けるべきもの。ノウハウ本を求めるのなんて邪道だ」とみているのではないかと想像しています。でも「大勢の人が身につけた方がよいノウハウは、伝授していいのでは? その先に、それぞれの個性をプラスして何ができるかこそが、問われてくるのだから」というのが私の考えです。

先日は、博士研究をした研究室に在籍する、技術経営(MOT)系の社会人学生の後輩らに、論文投稿のノウハウを伝えてきました。博士号を得るための査読論文は3本必要、というのが一般的です。一つの学会で3本でも構わないのですが、それだとその分野の(その分野でしか通じない)研究者になってしまう。私の今後の活動には、それはあまりプラスではないと考えて、五つもの学会に投稿した(得るものも苦しみも多かった…)経験を、話してきました。

厳しい論文査読はこれから、という皆にはよい刺激になったようです。例えば、「むちゃくちゃ厳しいコメントで投稿論文を批評する査読者だが、実はまったくの無報酬で多大なエネルギーを費やし、新たな研究人材を一人前にするための指導をしてくれている。感謝を忘れてはならない」という指摘は、皆にとって〔目からうろこ〕だったようです。

 会の後のCCメールでは皆の奮い立つ様子が明らかで、こちらも感激してしまいました。「『相手が真剣に取り組んでいるのなら助けてあげよう』という思い。支援を受けた方は期待に応え、そしてまた次の世代につなげていく。優れたコミュニティーとはそういうものなのでしょう」と、学会や査読者、指導教員、そして先輩それぞれの気持ちを重ねてコメントしました。併せて「研究は、基本的にはすべて一人でするもの。皆でもたれあってするものではないですよ」と釘を刺すことも忘れずに。

そう、ノウハウを共有し励まし合うコミュニティーと、独創的な視点を貫いてやり通す個の立場と。社会の豊かさにつながる重要な活動は、どちらか一方ではなしえないと実感しています。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年8月19日 (日)

本の応援者と持ち去り人

著書「研究費が増やせるメディア活用術」では、取材先を含む多数の知人にアピールをし、意外な反応をたくさんいただきました。期待していた人が意外にそっけなかっくて「あれ?」と思う一方、予想外の人が応援者になってくれて、さらに別の人へ紹介する役を買って出てくれました。

応援者の例を挙げてみます。
その1.Y大学のS先生はご所属の産学連携部局の「メンバー必携にしました」と【お触れ】を出してくれました(強権的でない範囲で、感謝です)。さらに、自身が講演する時に「こんな本がおすすめです」と私の本を紹介するPPTのシートまで用意してくれました。
その2.一般社団法KのE事務局長は、シンポジウムの司会をする中で本を採り上げてくれました。その後の懇親会で「本を出されたんですね」と周囲から声をかけてもらい、アピールしやすくなりました。
その3.某官庁のS室長は、関係する研究所を管轄するセンターへメールでお知らせしてくれたうえ、「講演の設定もOKだそうですよ」と広報セクションに声をかけてくれました。役人の場合は動いてくれないだろうなと(自身の予算獲得にプラスになる情報ではないから)思っていただけに、「役人っぽくない」相手を見直しました。

このような動き方をする人は、コミュニケーション上級者といえそうですね。私の本を紹介して頂いてとても感謝していますが、一方的にお世話になっている関係ではないからです。「あなたや周囲に役立ちそうなこんな情報(本)がありますよ」と紹介し、その情報がgood(役に立つかおもしろいか)ならその紹介者の評価も上がる、というかかわりにおいて、著者と紹介者はWINWINの関係といえそうです。

その4.T大学のK先生は、「アマゾンの書評、よくない評価が書いてありましたが、ちっとも気にすることはありませんよ!! 私がアマゾンで購入してよい評価を書き入れますから待っていてください」とメールしてきてくれました。あの忙しい先生がアマゾンをみていたこと自体、びっくりなうえ、その先生は私が贈呈した本に加え、研究室で二冊購入・回覧してくれているのですから。その心遣いに感激です。

その5.「お世話になっているので贈呈しますよ」といったところ、「私は自分で買うから大丈夫。ほかの方に贈呈するのに活用して」とお返事をしてくれた方々。T大学のO氏、友人のF・Mさん、学会NのS氏など。「本当に親しい人は、(著書のことを思って)購入するものだよ」といわれ、目からうろこです。私も今度からそういう心がけで、知人の活躍を応援するようにします~。

その一方、トンデモナイ反応だとびっくりしたのが「持ち去り人」です。独法Kのイベントで、「見本 持ち帰らないでください」と大きく書いて、Kの蔵書サインも入れた本を置いていたら、イベント何回目かに持ち去りが発生してしまいました。いい大人が、仕事の席で、2000円もしない本を盗っていくんだ…。「ヒドイ人がいるものですね」と先方からメールをもらった時、私は同調すると同時に、「きっと中身が魅力的すぎて、『本屋から取り寄せて待っているなんてできない』と思ったのですね」とメールしました。すると相手から「少し読むつもりだったのが、どの節も役に立つから、止められなくなったんですよ」との反応が。私と似た【プラス思考】タイプのようです。

それからもう一件、私自身の体験がありました。技術コミュニケーションの講演のあとの懇親会(20人くらいの着席)で、「お見本、みてみてださい」と回していたところ、帰り際に危ない状況となりました。私「すみません、こちらの本、ご購入頂きました?」、相手「購入、していないけど」、私「それでは申し訳ありませんが…」、相手「ほとんど読んじゃったけどね」。じゃあ、置いていけばいいじゃないですか!! とはいわずに、私「皆様、ご購入いただいていますので」と、すんでの所で取り返しました。いやあ、たいした度胸ですね。大丈夫かな、この人。名刺の肩書きは、地方国立大の産学連携部局の教授でした。たった数時間、同じ場にいた私が目撃するような素行の悪さでは、職場の評判は押してしかるべし。ほかの仕事からの転身だといっていたし、おそらくは特任の職だろうから、次回の雇用契約の延長はきっとないと思うよ。

でもね、こんなことが起こるのも、私の本がスバラシイから。自画自賛のレベルが上がっていますね。でも、嫌なことが起こった時にけんかしたり、いらいらしたりするよりは、自画自賛で切り抜けるテクニックっていいと思いません? あ、これもまた自画自賛にはまっている気が…。

| | | コメント (1) | トラックバック (0)

2012年8月16日 (木)

風邪とともに去りぬ

夏風邪、ひきました。主因はないまま喉の痛みと咳で一カ月も引きずっていて、ちょっと強い冷房にあたると、重病人みたいな咳になってしまいます。そのため、夏の旅行など大きなイベントはクリアしたものの、暑気払いのお誘いなどいくつか断る羽目になって残念です。

実は2-3年ごとに長引く風邪をひいていて、免疫力アップの食事や体調管理に努めてきただけに「またなのか」とがっかりです。睡眠が大事だと考えて、毎日毎日△時間(恥ずかしくて△の数字が書けない)も寝ていて、片づけるべきことはあれもこれも残っているのに、あ~あ時間がもったいない。でも、周囲と話をしていて「私の母もいつも横になっていた」というケースが少なくないのに気づきました。そう、社会で目につくバリバリ仕事をしている人は、能力だけでなく、体力も職場や家庭の事情にも恵まれた一部の人にすぎません。世の中には思うように活動できない、いろいろな意味で弱い人が大勢いることを思って、ひがむのを止めることにいたしましょう。

今回、こんなブログを書いたのは、潔く「今夏は休養の時期」と考えてぐじぐじしないために「宣言」しようと思ったのが一因です。もう一つは、ブログタイトルです。映画タイトルの「風とともに去りぬ」を「風邪のせいで、華やかなはずの夏が手をこまねいているうちに去ってしまった」という内容とひっかけられると気づいて、嬉しかったということです。「山本さんもオヤジギャグに励んでいるんだね」って? むむむ。ギャグとかだじゃれをいう人は、サービス精神が旺盛なよい人なのだと、私は信じているのですが、ダメかしら?

| | | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年8月 7日 (火)

企業連載の評判はgood

「大学活用法 企業の産学連携戦略」の外からの評判が、わりといいので途中報告です。某独法理事からは「よく(こんな形の企画が)できましたね」。某大学知財本部教授からは「力作長編ですね。当本部ではメンバー全員必読にしています」。某企業広報からは「興味深く読ませて頂いています。取材、当社もぜひ受けさせて頂きたく思います」。という具合で、うれしいですね!

連載の取材をすると同時に、新しい話としてのニュースをゲットすることが目標です。でも、取材中に身を乗り出す内容はたいてい発表済みで、まあ何件かニュース記事も書けたというくらいです。思うに、エレクトロニクスなど技術広報に積極的な一部を除いて、企業の研究開発周辺はネタが出にくく、記者もあまり取材に行かない。そのため、発表するほどでもでもないネタだと、なんとなく〔たゆたっている〕状態で、そこにたまたま記者がくるとニュースとして紹介できる、という具合ではないかと想像しています。

相手が大学や研究機関の場合とは勝手が違い、とまどうことも少なくありません。当初中心となった私に加えて科技部記者で回すようになって皆、同様に困っているののが、「なかなかアポが入らない」。ようやく返事が来たと思ったら「今回は遠慮したく…」との回答のことも。大組織だから調整や取材を受けるかどうかの判断など、大変なのですね。科学技術部メンバーは、大学の教授などに直接、電話して、その場でアポが入る形に慣れているから、「締め切りに間に合わない~」と焦る羽目になってしまうのです。

さらに私は当初、交流会などで様子をうかがえた企業からアタックしてきたのですが、いよいよそれも尽きてきました。そのため、おつきあいのあまりない企業にも、がんばってアタックしなくてはいけません。手元にはあるのですよ。重要な研究開発型の大企業リストが。その社名をみつつ、ウエブや四季報で広報の電話を調べるところから始めます。ある意味、まったくのシロウト…。でも、紙面にご登場いただく企業の幅を広げる、それも大学や独法が中心の科学技術部で取り上げるには、絶好のチャンス。ということで、なんとかがんばることにします。とりあえずまずは、夏休みで鋭気を養ってから…。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »