ある地方紙学芸部の30歳くらいの記者とやりとりするチャンスがありました。書評で私の「研究費が増やせるメディア活用術」を掲載してもらった関係で、です。おつきあいのある取材先の先生が書評委員(評者)をやっていて、「発行から日があいてしまったから、掲載できるかな」といいながらすぐに動いてくれて、その学芸部記者も「急いで載せましょう」と対応してくれて。そして、その記者が送ってくれた掲載紙に添えてあった手紙(メールでもできたはずなのに、手紙というところがさすがです)が素敵な内容だったのです。「(この本の内容からは)コミュニケーションの取り方、考え方が、(自身の)記者としても学ばされることが多く…研究者のみならず、記者もまた必携の一冊だと思いました」「ご著書に励まされ、当方も(記者として)がんばりたいと思います」って。
「そう、そうでしょう?」というのが私の本音です。「科学技術に限らない、メディア人と取材先とのコミュニケーションについて書いているので、現場で試行錯誤している駆け出し記者には、「けっこうおもしろいし、役に立つのではないかなあ」という気持ちなのです。でも一方で、かなり気を付けてきたのですよ。業界内&社内で、「なに、浮かれちゃって。ただの記者の一人にすぎないのに。これくらい、自分でも書けるわ」って反感を買わないように、って。だから同業者にはPRを控えめにしているのです。
そんな中、「こういう対応が嬉しい」というケースを一つ。同業者の後輩相手のランチの席で、実際の会話を9割、再現です。
山本「…それでね、少し前に本を出したのよ」。後輩「本? へえ、知らなかった。どれどれ」と裏表紙やまえがきにざっと目を通す。後輩「PR会社の人が書いた本で似たようなのがあって僕、それも読むのも好きですよ。企業広報とかこんな風に自分たちを見ているのかって参考になるから。でも、こちらのメディアの立場から書いた本ってないですよね」といいつつ、目次のある部分を見て吹き出す。後輩「ここ、なんですか。『著名人の学長、怒りの会見』って読んでみたいなあ」。山本「メディア人の裏話って同僚のを聞いてもおもしろいよね。夜回りの話とか、自分がするのは負担が大きくて辛いけど、話を聞く分には、へええって興味深い」、後輩「うんうん。メディアの社内研修でこんな話をすればいいのにねえ」。そして「これ僕、買います」。山本「きゃああ~、本当、ありがとう! ここで買っていってくれるの? じゃあランチ代はもちろん、私が持つわ」。
こういう展開が、親しいメディア人の間で嬉しい展開ですね。私が逆の立場だったとしてもこんなふうに振る舞うと思いますよ。…って、わかった? AくんとBくんとCさん。山本佳世子に何回かごちそうになっている、まだベテランとはいえない世代の記者の君たち。同業者間のコミュニケーションもしっかり学んでね~。