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2013年5月

2013年5月31日 (金)

小さくても重要な記事とその反対

「次期会長に榊原東レ会長 日本化学会」を29(水)の日刊工業新聞、科学技術・大学面でオリジナルの抜き(他メディアに出ていないもの)で掲載しました。2014年5月からの次期会長なのでまだ先ですが、ほぼ間違いなく「そうなる」ことが新たに分かった、というのはやっぱりスクープといっていいのではないでしょうか(そういってほしいです、笑)。ちょうど今、産業競争力会議の民間議員として、さまざまな発言が採り上げられている渦中の人です。経団連副会長と内閣府総合科学技術会議議員という、産業界と学術分野の最高峰といえる機関での経歴もある方が、会員数3万人、企業人比率が2割の大規模学会を率いることになったという記事です。人事ニュースは、たとえ大企業の懸案社長レースであっても、一面トップということはないですよね。この記事も見出しは1段で小さく見えますが、ニュースバリューはそれなりではないかと思っています。

一方。この逆の記事も最近、見つけました。N紙の27日夕刊一面、3段見出しの「大学に眠る技術発掘 文科省 事業化目標を2倍に」です。最初、「えっ、何のこと、どんなニュース?」と私も反応しました。私のメーンの担当分野だとすぐわかる見出しでしたから。そうしたら。驚きの内容でした。「何でこれが記事になったの? ちょっとおかしいんじゃない」という驚きです。「(大学の)研究者支援の事業プロモーターに野村ホールディングスなど4社を新たに選んだ」って、文科省の大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)で、4月後半に発表になり、4/26付で私も書いた内容そのままです。あとはこの事業の説明が全体の8割。最近始まった事業ならともかく、1年前スタートの事業なのに。START事業は私はこれまで、7回くらい書いていますよ。

N紙が「一カ月くらい後に、知らん顔して書いてくる」という話は時々、聞いていて、幸いにしてそういうN紙とのぶつかりを経験していなかった私は「社内の記者の競争が激しいと、詳しい事情をしらない上司や読者をだましてでも、つまらない記事を大きくした方が勝ちなのかなあ」と思っていました。そのうえでの初めて経験だったので「これがそうなんだ」と驚くと同時に、「それにしてもSTARTはベンチャー支援の事業で、N紙の読者はそれなりに知っているはず、みっともない記事として逆効果だと思うけれど」という感想も持ちました。

まあ、衆人に見えやすいズルをした人・機関を激しく非難する必要はないので、これくらいでストップしましょう。どちらかというと「頭に来た」というより、「拍子抜けして、そのことに驚いた」という感じでもありますし。ということで、記事の大きさは一つの指標にすぎません、その分野を詳しく知らない人は気を付けましょう。そしてこちらは「分かる人はちゃんと評価してくれるもの」と心に言い聞かせることにしましょう。新聞記者に限りません、どんな仕事でもそうですね、職業人のプライドはそういう形で醸成されていくものではないでしょうか。声高に自慢しないでもね。あ、自慢していますね、このブログで明確に…。

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2013年5月28日 (火)

政府関係の仕事が回り出す

政府の成長戦略と連動した文科省の施策として、科学技術・大学面で5・22付に「スーパー・グローバル大学(仮称)」を、5・23付に「理工系人材育成戦略(仮)」をそれぞれ執筆しました。大ネタではないけれど、どちらの言葉もまだメディアで紹介されていなくて、文科省系記者の皆の目に触れたのは、5・22の教育再生実行会議の提言素案でしたから、それなりのヒットです。4月に担当が文科省行政全般に広がって、「うまく取材のコツがつかめない」とブルーな気分だったのですが、調子が出てきました~。

実は、その前に「がぜん、元気になる」変化がありました。それは17日の安倍首相の成長戦略第2弾のスピーチについてブリーフィングを受けた時のことです。それまで、大学改革についていろいろなキーワードが出ているけれど、それがどうアベノミクスと関係があるのか今ひとつわかっていませんでした。年俸制とかガバナンス(統治)改革とか、学長リーダーシップとか教授会の役割とかのキーワードです。それが、ブリーフィングをきっかけにつながって、「そうか! 大学改革と成長戦略がつながるのはこういう意味なのか! 大学担当が長かった私でこうなのだから、ほかの記者も、読者もほとんどわかっていないのでは」と気づいたのです。それで「これは、スクープではなく解説の形であっても、私ならではの記事になる!」ということでハイになったのでした。

書いたは、27日付2面の社説「成長戦略と大学改革 産業創出へ教員能力生かせ」です。経済成長に資する大学改革とは…、国立大を中心に研究者(教員)が新産業創出に力を発揮できるよう、ネックとなっている教授会など伝統的な組織や仕組みを壊すのが狙い、と解説しました。

大学人は全員、国のために新産業創出を考えよ、といっているわけではありませよ、もちろん。それができる能力と技術と意志を持った教員には、フルに力を発揮してもらいたい。そのために今、邪魔になっている事柄をなくしていこうということです。例えば、年功序列型の大学教員給与は、海外や企業などと大学の間の人材流動化を妨げているから、年俸制にすれば、いろんな働き方の優れた人材が大学を活性化してくれるだろう、という判断です。伝統的に教授会が強い大学では、教員評価で論文重視、採用は弟子筋の日本人男性、教員にデメリットが多い学部・学科再編は絶対反対、となりがちです。それを教授会の決定権や教授らの選挙による学長選出をなくせば、学長の断行(優れた学長であることが必須ですが)で、産業貢献度の高い教員を評価したり、女性や外国人をどんどん採用したり、時代に合わない再編を行ったり、できるだろうということです。

大学・産学連携面が3月に終了して、同面の大事な取材先・読者だった皆さまに申し訳ない気がしていました。「以前なら大学面で大きく載せられたのに、今だと小さな記事になってしまい、すみません」という感じです。でも、今回の展開で「一般紙の記者にやられっぱなしではなく時には返せるし、専門記者をしてきた私だからこそ、書ける部分もある」とのことで、自信が出てきた状態です。

ある教授にいわれたのですが、「研究でも仕事でも、教員や指導者ができることは、取り組む方向が○か×か、×なら軌道修正の助言をして、自信を持たせることだけ。実際に何かをするのは、本人(の力)でしかない」というのが心に響きました。ベテランになったのにちょっと様子が変わると、がっくりきたり、自信を持ったりで、我ながら情けないと思っていました。でも、いくつになっても新鮮な思いを持てるというのは大事なこと。その中で、新たな自分の力を、社会にプラスになる仕事ができる力を、伸ばしていくようにいたしましょう。

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2013年5月24日 (金)

たまには若い人

31歳。どうです。准教授。すごいではありませんか。でも、任期付きだから、たいしたことない? 違います。東京工業大学で終身雇用型の助教のポストにすでに付いていたのに、それを捨てて、東京農工大学のテニュアトラック制度(研究成果をうんと出せる環境を特別設定して、任期付きで採用し、任期終了時の審査で研究成果がしっかりしていたら、終身雇用型の正規教員に採用するという仕組み)に応募して、この春から初めて指導学生を持ったという研究者を取材しました。

日刊工業新聞の科学技術・大学面で若手研究者を採り上げる「拓く 研究人」(隔週水曜)というコーナーで、22日付に東京農工大の山中章徳准教授を紹介しました。4月スタートの企画で、私の最初の取材の番が回ってきて、若手なら何でもいいというわけにはいかないし、どうしよう? と頭をひねりました。それで、数年前スタートの文科省事業のテニュアトラックで、高い評価を得ている東京農工大を取材したことを思い出し、ここで光っている先生を選ぼう! と思いついたのでした。

先生の研究内容がまた、いいんですよ。鉄鋼という伝統的な材料に、フェーズフィールド法という20年前に登場した伸び盛りのシミュレーションを適用するという仕事です。オールドでニューなところが、日刊工業新聞に合う気がします。シミュレーションは得意分野ではないものの、計算式など詳細な手順を書かずに記事にしてしまえる、という点で便利でもあります。山中先生の出身は、神戸大学(iPSの山中先生と混同しそうですね)で学部の後、通常は5年の修士・博士を3年半で終えたとのこと。日本学術振興会の優秀な博士学生向けの支援も受け、学生時代から研究費で辛い思いをしたことはなさそうです。農工大のテニュアは、初年度1000万円、次年度500万円を用意してくれますから、これを使ってシミュレーションと対をなす実験設備を整備しているのだそうです。最後のおしゃべりで「出身が旧帝大じゃないというコンプレックスがあるのかな」と口にしていましたが、それくらでないと嫉妬の嵐が激しすぎるのではないかなあ。

それで、なぜ今のポストへの転身をしたかですが、自身の研究は先達から学ぶ成熟分野ではなくて、材料だけでなく流体や細胞の運動にも応用の可能性が広がっているという旬のテーマ。東工大の大講座制では講座の一員として活動する場面も多いので、このテーマに没頭するというわけにはいきません。「この魅力的な研究テーマで、他の人がどんどん成果を出していって平気なのか? 今の安定雇用より存分に研究に取り組むことの方が重要ではないか?」と考えて、テニュアに応募したのだそうです。かっこいいですねえ。少し前に日本IBMの北城さんに対して、同様の言葉をブログで書いたのですが、「今度は若い人」です。

若手研究者取材も実は嫌いではありません。「初めてマスメディアで採り上げてくれたのが日刊工業新聞でした」とその人の人生の記憶に残る存在になりうるから。さらにその先、時々に取材して、ネタ元として活用し続けられるという、記者としてのメリットもあります。互いに20歳代だった時から、そんなふうに交流してきた同世代の親しい先生も、何人かいるんですよ。これからは、うんと年少の研究者の伸びていく様を見守る楽しさが、出てくるのかもしれません。えっ、おおお、お母さん?? いや、いくらなんでもまだそんな年齢では…。ちょっとまって、早く結婚した同級生のお子さんがいくつだっていってたっけ? …と、「たまには若い人」で変な焦り方をしてしまう私でした。

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2013年5月20日 (月)

もんじゅの質問で下村文科相が

下村博文文部科学相の閣議後会見では、しばらく私が幹事として最初の質問を発する役割を負っており、17(金)の朝(参議院内で9時前)は何を聞こうかと前日に考えました。もんじゅ関係がこれだけ取りざたされている以上、触れないわけにはいきません。日本原子力研究開発機構における高速増殖炉もんじゅの点検もれに対して、原子力規制委員会は15(水)の会合で、「内部体制が整うまで、試運転再開の準備も中止」と命じる方向にしました。「再開」の「準備」すら「中止」って、いかにヒドイかというのかよくわかりますね。

これを受けて、原子力機構を所管する文科省は16(木)に、「保全計画見直しなど必要な措置を取るように」という是正措置要求を機構に出しました。文面見るとたいしたことをいっていないのだけど、独法通則法に基づいた対応なので、けっこう重いとのこと。うーん。それって、一般社会の人にはわからないよね。激しく報道されている部分からすると、規制庁が機構に厳しい指導をしているけれど、文科省は何もしていないように見えませんか? ということで、この点をマイルドな言い方で(弊社には社会部がないので、強い口調で質問することは一般に、あまりありません)聞いてみることにしました。

ところが会見の冒頭、大臣からの発言で、機構理事長が辞任したと発表。新しい話だったので一気に各社とも色めき立ちました。ええええ~、これを受けて私の質問、どう変えたらいいの? 辞任って自分から「辞めることにしました」という話だから、更迭したってことじゃないんだよね? 焦りますがよくわかりません。仕方がない、用意したままで問いかけることにしました。 

ところが最初、私の意とするところがうまく伝わりませんでした。大臣がじろっと(気のせい?)みて、「どこに対して?」などと聞き返され、やっぱり失礼な質問だったということかしら、とドキドキ。「一般社会からすると、文科省の対応はあまりはっきりしていない印象があるかと…」などとうろたえてしまい、「そんなことはありませんか?」と、親しい相手との一対一のインタビューみたいな言葉(会見ではあまり使いませんよね)まで口走ってしまいました。

少し間があいて、16(木)の状況を詳しく説明してくれました。つまり昼に文科省が機構の理事長を呼び寄せ、文科省次官から是正を求めたとのこと。その数時間後に、理事長が次官に電話で、辞意を示し、その後に大臣がそれを了承したという流れだったそうです。そうなんだ~、じゃあ文科省が何もしないで、理事長が辞めるって言ってきたわけではないじゃないですか。一般人としては、「文科省がちゃんと動いた結果なのね」と思うじゃないですか。ということで、いちおうは私の質問は意味をなす結果となりました。

週末、自宅で反省しているとふと、気づきました。大臣会見って、HPからユーチューブに飛んでやりとりが全部、世界に(日本語ですが)発信されているんじゃなかったっけ?! 恐れながらPCを開いたところ…。恥ずかしがって私の声は小さく絶え絶えで、院内会見のため録音状況が万全でなかったこともあるのでしょうか、私が何をいっているかほとんど聞こえません。よかったような、情けないような。ちなみに編集はされていないのだそうな。最初に「幹事の○社△から、質問です」と名乗る人もいるのですが、私は「幹事から質問です」しかいっていなくって、よかったかも。明日からの閣議後会見(週2あります)はもう少し、マトモな世界発信を心がけることにいたしましょう…。

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2013年5月10日 (金)

世界遺産になってもならなくても

富士山の世界遺産登録のニュースは文化庁を抱える文科省の記者クラブ案件で、これはゴールデンウイーク谷間の4/30(火)に動きが出て、翌5/1付一般紙は一面トップなどで大変なイベントでした。日刊工業新聞ネタではないので、クラブの雰囲気を見ているだけでしたが、慌ただしかったですね。だって、ユネスコの世界遺産委員会の諮問機関、イコモスの発表がありそうだとの連絡が入ったのは夕方のこと。GW谷間でのんびりした感じは一変です。GW明けの発表といわれていたのが急遽変更で、欧州の事務局側は5/1のメーデーを避けるのでその前になったとか。深夜零時を挟んで、正式な第一報やらレクやらがあったようです。

実はこの夏、仕事先の数人の親しい人との間で、富士登山行きがほぼ確定しています。イコモスの発表前のGW連休には、【プレ富士登山】ということでトレッキングを敢行。慣れていない私ですが、登り3時間強、下り3時間弱でまいりながらも、「富士山に登るために」と歯を食いしばってやりとげました。

数年前、社会人大学院生時代に若い学生らの富士登山企画に乗り損ね、その時は恐ろしい強行軍だったので乗り損ねてよかったのですが、やはり「一度は富士山に」というごく一般的なミーハー感覚がありまして。周囲に話しているうちに、企画をしてくれる友人が出てきたのです。現在、週末に自宅周辺4時間ウオーキングなどもして、運動苦手な私なりに意識向上に努めているのです。

世界遺産となり、大変な混雑となるだろうという点はとても辛いのですが、世界遺産ということでがんばりの後押しになる面も確かにあるでしょう。ということで、「世界遺産になってもならなくても、がんばろう」という姿勢です。

それにしても、夕方になって夜中の会見が入り、翌朝付の紙面の執筆に取り組むだなんて恐ろしいことです。いよいよ日刊工業新聞の今年の記者クラブ幹事が、来週からスタートします。どうぞ恐ろしいイベントだけは入りませんように…。

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