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2014年6月

2014年6月26日 (木)

科学技術白書、90頁が2頁に負ける

2014.6.23付の弊紙科学技術・大学面に、「科学技術白書 高度人材を生かす 流動性・多様性の向上重視」を載せました。寄せ付けなのでそこそこ大きい記事です。白書ってなかなか「これぞ」とテーマが見えにくいのですが、今回は、副題が「可能性を最大限に引き出す人材システムの構築~世界で最もイノベーションに適した国へ」ですから、私としてはイケルな、と判断。博士人材の問題は、今なお一般・産業社会の感じ方と政府・大学側の思いにずれがあるので、そのずれを改めて振り返りながら、「今後はこうするべきだと白書ではまとめている」と書きました。

ところが。一般紙の記事をみてびっくり。どこもSTAP細胞問題に絡んだ研究不正について書いているではありませんか。研究不正の件、会見でも質問、出ましたよ。でも答えは「白書をまとめる時期には間に合わなかったので、2頁で採り上げるにとどまった」と文科省。来年の白書ではメーンテーマになりそうだな、と私は思っただけでした。それが、どこもこのたった2頁でしか触れられていない研究不正を採り上げたわけです。白書全体は356頁あり、「今年のテーマ」と位置づける研究人材の部分は90頁だったというのに。今の社会一般の関心事は何か、という一般紙の切り口としてはしようがないのだろうけれど。白書ってまとめるの大変じゃないですか。だから文科省の担当者としては寂しいだろうな…と思いました。

なんか私だけ文科省サイドに立っているようで変ですね。会見も私は論説懇談会と、記者クラブの常駐記者向けレクと、両方出ていました。論説だけど現場(編集委員)でクラブ在中というのは、科技分野では唯一(ほかの分野はたまにいる)なのですよ。そこで社説も思案した(結局、別の仲間が後日対応の予定)こともあって、しっかり書きたくなりまして。となるとやっぱり、人材育成の話で「そうかこういう形で、社会が思っている問題点を解決しようとしているのか」と、読者に理解してもらいたかった、という背景があるのです。

それから前回の、大臣の本のその後です。記者クラブメンバーには一人一冊の配布があって、内容は教育のことに多く触れていることから、閣議後会見の質疑応答でも出ました。前回、ブログで「閣議後会見ではプライベートの本の話はだめなのね」と書いたのですが、そいういうわけで、「プライベートといっても趣味の本ではないので、会見で話していいのですね」と変更することにします。

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2014年6月16日 (月)

下村大臣の新刊、記事スクラップで上手にアピール

官庁内で毎日、新聞報道各社の記事スクラップのコピーが回覧されます。文科省では一般紙と、専門紙と別々の束で、それぞれその日の一番、注目すべき記事が最初のページに位置されています(広報さんの選定で、そういう意図なのだと想像しています)。13(金)にはちょっと変わった記事が。それは下村博文文科大臣の新刊の「広告」でした。

この本、なんといっても題名がすごい。「9歳で突然父を亡くし新聞配達から文科大臣に 教育を変える挑戦」です。どこまでが題なのかと思いきや、全部が背表紙に記されていました。ので、「9歳から…大臣に」が主の題名で、「教育を変える挑戦」が副題なのですね。オシャレとは思わないけれど、だれもが手に取りたくなる題名でしょう。ご経歴は多少、知ってはいましたが、私もやはり同書を読んでみたいと思いました。

この新刊の表紙コピーは、少し前の幹事の時に、広報さんから「PRなのですが、張り出してよいですか」との確認があり、記者クラブに掲示されました。「そうか、文科省の内容ではなく、本は大臣個人の活動によるものだから、さりげなくのPRなのね」と納得。閣議後会見では大臣が、文科省とマンガ「宇宙兄弟」とタイアップのポスターの話をするのに対し、「自分の本をこの場でPRしたいだろうに、そうはいかないのはジレンマだろうなあ」と思っていました。

そして一般紙の記事スクラップ。「記事」じゃないんですよ、正確には。「広告」。でもまあ、新聞に載っていて、省内関係者としては知っておいた方がよい「情報」なのは確か。なので、。「なにこれ」と批判されない形で、ギリギリ許されるとの判断で載せたのではと推測します。スクラップの束の一番上、何もしなくても目に入る位置ですからね。上手です~。

ちなみに、日刊工業新聞は専門紙の記事スクラップの方なのですが、一般紙と一緒ではないことで、そのスクラップの束の一番上にくる可能性が比較的、高いのがよいところです。とはいえ、予算とか文科省「らしい」のでは、必ずしも一番上に持ってきてもらえません。きっと官僚が「おっ」と思う記事をセレクトしているのでしょう。そんな自信作が掲載された日は、自分の記事ながらスクラップの上にあることを確認してしまいます。

最近のでいうと6・10の23面「人財戦略 キーパーソンに聞く 文部科学省科学技術・学術政策局長 川上伸昭氏 産学連携で人を育成」とか。これ、「ひと&会社」面という23番目にくるぺージですからね。そのままだと、読み落とされる可能性が大。専門の広報さんがしっかりチェックしてくれるから、こうして省内で大勢の目に触れられることができます~。それから5/21の3面「東京医科歯科大 医歯学で五輪選手支援 食事・メンタル・身体管理 アスリートの知見集約」とか。オリンピック関係はあまりかかない弊紙ですが、大学&オリンピックものということでユニークでしょ。さて、次はどんな記事で「おっ」と思わせようかな?

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2014年6月 9日 (月)

名刺交換もトラブル経験も一度あれば…

文科省幹事業務が「大過なく」終了しました。仕事に後ろ向きで何もしていないようで、本当は好きでない言葉なのですよ、「大過なく」なんて。ですが、幹事業務についてはこの表現がはまるのです。なにしろ弊社が幹事の時には、なぜか大事件が起こりがち。昨年の2013年の今頃は、某独法の不祥事とトップ交替でしたし、何といっても2011年の東日本大震災に当たりましたから。

もっとも今回、こちらが周囲をばたばたさせた案件もありました。文科省でのレク(会見)は幹事が司会をして、場を仕切ります。これに対し、文科省へ面談に来た知事らに、話題のテーマについてコメントをもらうなどのぶら下がり(廊下などで立ったまま)の場合は、幹事の仕切が不要です。クラブ所属の全社にかかわるものではなく、「関心のある社はどうぞ」という位置づけだからです。そのどちらかよく分からない案件がありまして。弊紙にはあまり関係のない文教テーマで「仕切りは必要はない」と思っていたら、そうではなかったというケースで、文科省広報さんなど慌てさせてしまいました。すみませんでした~。一度、あるタイプのトラブルを経験していれば、「こういう時はこう振る舞うもの」と判断できるのですが、なかなか「すべてのトラブルを経験済み」とはならず…。数限りなくあるトラブルをすべて、経験したいといっているわけではないのですが(笑)。

ほぼ、大過なく終わりそうと見えてきた先週末、文科省記者クラブと文科省研究3局幹部の懇親会がありました。今回は研究関連の独立行政法人の広報課長や担当役員も出席で、なかなか盛大な会でした。最後、クラブを代表して幹事からといわれ、私が挨拶をすることになりました。急にいわれて「うううーん、どうしよう、話す内容はよし、これで」と了承。少し頭を整理する時間があるかなと思ったら、即、「それでは」と始まり、頼まれてから10秒後に話し始めたのでした。独法広報さんなど私も初めての方が多かったので、「一度、このような場で名刺交換し、会話をしていれば、互いに近しく感じるものです。メディア側も『この件、どうしようかな』と迷う場合でも、名刺交換を一度していれば、『じゃあ問い合わせしてみよう』と気軽に反応できますから。このような場を通して、お互いによりよいコミュニケーションが進めばと思っています。ありがとうございました」といった内容でした。トラブルも名刺交換も、経験値0と1とでは大違いだけど、1を経験してさえいれば、あとはなんとかなるというわけですね。

でもね、もしかしたら本当は上記に書いたような内容を私、口にしていないかもしれません。だって、前々から準備していた内容ではなくて、頼まれて10秒後に話し始めたことだから。せっかくなので名刺交換をした方々には、このブログのURL付きメールを送ることにしました。言いたかったのはこのことなのですよ~、と伝え直すために。

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2014年6月 2日 (月)

別分野の研究開発の〔イメージ〕をつかむ

「この分野ってこんな感じなんだ!」と知ることは取材の楽しさの一つです。同様の楽しさを、文部科学省審議会の中の「航空科学技術委員会」委員業務の中で感じました。案件は、次世代超音速旅客機(「コンコルド」の先のもの)の国際共同開発で、ソニックブームという特殊な音の発生抑制に向けた実証実験「DSEND2(ディーセンドツー)」です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で実機(モデル)を使って上空1キロメートルなどで行われるもので、昨夏に失敗したことから要因究明と対策を重ね、外部の委員に評価をはかったうえで、今夏の再挑戦につなげるというわけです。

感心したのは、「~の影響を考えて補正を入れていたが、…については問題にならないと判断。それが実際は大きく、失敗の原因となった」「…についての補正数字でシミュレーションし直したところ、××のグラフが実測値と一致。その数字なしで行った昨夏のシミュレーションでは、グラフのカーブがこんなふうにずれていることから、改善が確認された」という流れでした。

さらに検討を重ねる中で、ほかにも考えられるリスクの洗い出しと対策が行われ、項目としては全部で九つも! の対策が採られたとの説明でした。さすが、5年間で40億円という大型の実証プロジェクトです。これだけの念を入れて取り組むのだなと感心しました。私は修士まで実験系だったけど、机の上でのビーカーを使っての有機合成だから、「失敗したのはきっとこういう理由なのではないか。じゃあこのやり方で、とりあえずやってみて、また考えよう」という、けっこうテキトーな対策を採っていたので、「分野や規模でずいぶん違うものだなあ」とびっくりです。

委員会では、この研究開発の中間評価票の内容を議論しました。委員のほとんどは航空技術の専門家で、専門家は同分野の別グループの取り組みに対して、一般に厳しいもの。専門外だとよくわからないので、厳しいことはいえないのと対照的です。で、専門外の私は、「直接要因に加え、背後要因もこれだけ検討し、対策したうえでの再挑戦となる。その姿勢は好ましいものだと感じた。もちろん大規模な取り組みなので、失敗に対して開き直るというのは適切でないが、、実態としてその姿勢が伝わる文面にしてよいのではないか」と発言。JAXAに対して優しい態度をとってしまいました~(笑)。

実はJAXAは弊社に別の担当がいてシッカリ取材しているので、せっかく委員をしていても新たな記事執筆にあまりつながっていなくて、申し訳ない気がしていました。でも、担当の経験がある分野以外で、こういったチャンスに「別分野ではこんな具合に研究開発が進められている」という〔イメージ〕を身につけることは大切なこと。その意味で委員会出席は、記者としての私、私が所属する新聞社にも、プラスといえるはず、と振り返りました。

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