別分野の研究開発の〔イメージ〕をつかむ
「この分野ってこんな感じなんだ!」と知ることは取材の楽しさの一つです。同様の楽しさを、文部科学省審議会の中の「航空科学技術委員会」委員業務の中で感じました。案件は、次世代超音速旅客機(「コンコルド」の先のもの)の国際共同開発で、ソニックブームという特殊な音の発生抑制に向けた実証実験「DSEND2(ディーセンドツー)」です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で実機(モデル)を使って上空1キロメートルなどで行われるもので、昨夏に失敗したことから要因究明と対策を重ね、外部の委員に評価をはかったうえで、今夏の再挑戦につなげるというわけです。
感心したのは、「~の影響を考えて補正を入れていたが、…については問題にならないと判断。それが実際は大きく、失敗の原因となった」「…についての補正数字でシミュレーションし直したところ、××のグラフが実測値と一致。その数字なしで行った昨夏のシミュレーションでは、グラフのカーブがこんなふうにずれていることから、改善が確認された」という流れでした。
さらに検討を重ねる中で、ほかにも考えられるリスクの洗い出しと対策が行われ、項目としては全部で九つも! の対策が採られたとの説明でした。さすが、5年間で40億円という大型の実証プロジェクトです。これだけの念を入れて取り組むのだなと感心しました。私は修士まで実験系だったけど、机の上でのビーカーを使っての有機合成だから、「失敗したのはきっとこういう理由なのではないか。じゃあこのやり方で、とりあえずやってみて、また考えよう」という、けっこうテキトーな対策を採っていたので、「分野や規模でずいぶん違うものだなあ」とびっくりです。
委員会では、この研究開発の中間評価票の内容を議論しました。委員のほとんどは航空技術の専門家で、専門家は同分野の別グループの取り組みに対して、一般に厳しいもの。専門外だとよくわからないので、厳しいことはいえないのと対照的です。で、専門外の私は、「直接要因に加え、背後要因もこれだけ検討し、対策したうえでの再挑戦となる。その姿勢は好ましいものだと感じた。もちろん大規模な取り組みなので、失敗に対して開き直るというのは適切でないが、、実態としてその姿勢が伝わる文面にしてよいのではないか」と発言。JAXAに対して優しい態度をとってしまいました~(笑)。
実はJAXAは弊社に別の担当がいてシッカリ取材しているので、せっかく委員をしていても新たな記事執筆にあまりつながっていなくて、申し訳ない気がしていました。でも、担当の経験がある分野以外で、こういったチャンスに「別分野ではこんな具合に研究開発が進められている」という〔イメージ〕を身につけることは大切なこと。その意味で委員会出席は、記者としての私、私が所属する新聞社にも、プラスといえるはず、と振り返りました。
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