適度にこだわり、適度に任せる
この冬、初めてセミオーダーでスーツを仕立てました。茶色とかグレーとか、紺(または黒)以外の服を好む私ですが、ダークスーツが居並ぶ場にはそれなりの…と考えます。ので、堅い席に対応できるよう「季節ごとに一着は紺を持っておきたい」と思っています。その中で、なんとか「紺だけど、ちょっと人と違って素敵、というものがほしい。多様な生地から選べるといいな」というのが、オーダーに魅力を感じた理由の一つでした。
寒さに弱い私は、材質は「絶対にウール」。&さりげなく美しい生地をセレクトします。ただ、厚さのイメージがよくわからない。厚さを、特定の大きさあたりの重さでおーとなしの表示するというのだけど、「360グラムでは、室内では厚すぎますよ。コートなし季節の上着くらいです」「こちらは300グラムですよ」といわれても、ねえ。5センチ四方くらいのサンプルがリストに付いていて、触ってはみるけれどイマイチ分からない。いちおう選択しましたけれど、「果たしてこれで大丈夫だろうか」と不安でした。実は「夏に冬物オーダーすると低価格!」というのでお願いしたため、着ている服と注文する服の生地にギャップがあったこともあります。
【解】がみつかったのは帰宅してから。「スーツを買った時に付いてくる、修理のための端切れを保管しているじゃないの!」と気づいたからです。それを引っ張り出してきて、「実際に着ていて具合のいい厚さと、イマイチの厚さのスーツはこれとこれ。その端切れがそれとあれ。この二つの端切れを持って行って、店頭のリストと見比べよう!」と気づいたのです。私って天才~(笑)。そして実際に持って行ったら、「あら、生地模様が手持ちスーツと似ている…」と発覚し、チェンジすることにもなりました。
もう一つのオーダーの魅力は、「何も悩まなくても自分にぴったりのサイズ・シルエットのものが手に入る」という憧れでした。ところがこれは、やってみて、そうではないことを知りました。フルオーダーではないので、「脇のくりは直せない」といった限定があるのは、仕方ないと思うのですよ。でも、「ウエストサイズ(&ももとか腰とか)はこれが具合いいのか、さらに1.5センチ出したほうがゆったりしていていいのか、逆に1.0センチ詰めた方がぴしっと決まっていいのか、わからない」ということに、ショックを受けました。もちろん、お店のスタッフがアドバイスしてくれるのですよ。でも、「ぴったりの方が素敵ですよ」というスタッフの意見は鵜呑みにできず、「きついと結局、着なくなってしまうから」と考えてしまう。…結局のところ、最後は自分で決断しなくてはならないのです。
「最後は自分で決断」ってオーバーな表現かな。でも、△万円も出すのですからねえ。というわけで、仕上がって職場に2回ほど着ていってから、もう一度、調整してもらうためお店に持ち込む結果となりました。直しにすぐ対応してもらえる点は、オーダーならではかもしれませんね。
「こだわるなら、お任せするという発想は捨てる」「あれこれ考えるのが面倒なら、お任せして文句をいわず受け入れる」のどちらか。振り返ると、これはどんな相手とのコミュニケーションでも共通のことですね。相手がお店のスタッフでも、病院の医師でも、同僚でも、仕事相手でも。取材ではあまり事前準備を綿密にしない私ですが、よりよい生地、おっと違った、よりよい記事のためには、もっと手をかけた方がいいのかなあ。
でもこだわりすぎると、こだわったことに対しての回答しか得られないもの。取材のやりとりも【のりしろ】があると、話がおもしろい方向に展開していく。その結果、当初思っていたのとまったく違う魅力的な内容を引き出せることがあるのです。だから、適度にこだわり、適度に任せる。このバランス感覚が重要なのかもしれません。
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