ノーベル賞受賞者の出身と学位取得の大学
「ノーベル賞、知の継承成果-『地方大出身』受賞続く」を2015.10.12付一面で書きました。今年のノーベル賞、大村智北里大学特別栄誉教授は学部が山梨大(教員養成の学芸学部)で、社会人大学院生(修士)が東京理科大で、博士号取得(論文博士)が東大(薬学博士)と東京理科大(理学博士)です。梶田隆章東大宇宙線研究所所長は学部が埼玉大で、大学院修士・博士が東大です。すごいですね、大村先生お一人で4大学のPR効果。さらに女子美術大学の役職経験まであるとか。関連するあちこちの大学が「本学出身のノーベル賞受賞者である△先生は…」と、沸き立っています。
私は地方・中小規模の大学の学生は、研究者なり法曹の人材なり、上の教育を受けてのキャリアを考えた時に、専門性の高い大学へシフトしていくのでいいと思っています。研究にはお金がかかるし、お金の点では効率性も重要だし、研究型大学とそうでない大学があるのいたしかたない、と。今の文科省の「国立大支援の三つの枠組み」が結局、関係者に受け入れられたのは、このような共通認識があるからだと思います。その分、地方・中小規模の大学は、地域で活躍するなど地に足がついた基本的な教育を、しっかりとする。人生は方向転換やらやり直しやらがしやすい柔軟性が大切で、その可能性を下支えする教育を、より重視してほしい。大村先生なんて最初の職業は、夜間高校の教員で、それが研究で経済的にも社会的にも大成功、美術品にも造形深くて「人生、大満喫」。刺激されちゃいますよね~、笑。
このことを、科学技術振興機構(JST)の相澤益男顧問にぶつけて、こんなコメントを掲載しました。「…学歴や職歴などの多様性は創造力の源泉だ。研究型でない大学も、その後の発展の土台となる基礎教育は絶対に負けないーという意識を持ってほしい」と。
自分の主張を、取材先の言葉と重ねて発信できる。新聞記者の醍醐味の一つなのです。
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