荒れた記者レク
私の担当ではまれな、緊張の記者レクがありました。一通りの説明の後の質疑応答で、「レクの内容にかかわる重要データを公開してもらわないと困る」ということが、怖い記者の口調で繰り返し続きました。最初は2人ほどだったので「特定の記者の反感かな」と思ったのですが、口を挟むのが4人ほどに膨れあがり、女性記者も参入です。事前の状況を把握せずに出席した私は、その場で自分が攻撃されている訳でもないのに、血圧が急上昇するようなオソロシイ場でした。「いったい何があったの?」。後日、情報収集に動きました。内容の具体的なところは伏せますがここに書いてみます。
これ、そもそも記者側も読者も関心の高い案件でした。ところが仕組みがものすごく分かりにくい。分かりにくいのに、世間の耳目を集める、もっとも扱いの難しいものです。そのため事前の資料配付も段階で、各社の記者が「こんな話を出すというのに、△のデータが出ていないなんて、おかしいじゃないか」と問題視です。そこで「△のデータを出して」とかけあうも、発表する担当部署の対応がよくなくて、出てこない。間に立つ仲介者も心配して、「これは絶対、説明責任で追及されますから、用意した方がいいですよ」と2回も声をかけたけれど、ダメだった。それで、記者側が「厳しい態度で臨むべし」と団結した状況でした。
確かにそのデータは、微妙なものではありました。「A高校では学年全生徒を対象に、教員側が基準を明らかにしないまま、勝手な評点を付けた。それがばばーんと個人名を掲げて、正門前に張り出された」みたいなものでしたから。評点を付けた担当者が「個人の評点は公開しない」と当初、考えたのは、それなりに理があると私は思いました。でも。メディアとの間のコミュニケーションに、失敗しちゃったんですねえ…。レクの後、データの一覧表がメールで各社に通知されました。それを受けての各社の記事は様々。最初の担当部署が提供したデータで抑えた社もあれば、最終的に公開されたデータを載せた社もありました。記事の反響もかなりのものになりました。
「A高校で初めて行われた特殊な評価は、高校側の最初の意図とは違うものの、公開せざるを得ないものとなってしまいました」として、その後の周囲の反応も例えてみますと…。成績がうんと悪かった生徒は、実際以上にヒドイと誤解した親やら塾の先生やらに攻められて、泣くに泣けない状態です。ちょっと点数の悪かった別の生徒に「何がよくなかったのでしょうね」と山本さんが尋ねると、「△の件がよくなかったのかなあ、と思うんだけど。なんでだったか僕もわからない。山本さん、教えて」と返ってきました。隣のB高校の学年主任の先生は「各生徒ががんばっているところに、あんな基準のわからない評点を付けるなんて、A高校はやっぱり3流だな」と非難しています。C高校の元校長も、開いた口がふさがらないといっていたそうです。そしてA高校では校長が、教育委員会に呼ばれてお小言をいただいた、との話が耳に入ってきました…。
レクが今回、荒れた要因は、メディアとレク担当部署の間のコミュニケーションのトラブルといえるでしょうか。担当部署は、「通常は関係機関に対して強気が通る」殿様的な部署なんですよ。メディアに対してもその姿勢でいこうとしていた様子が、端々からうかがえます。たとえ「データは出せない」としても、なぜダメなのか根気強く説明をするとか、「これはダメだけどこの形でならどうか」とレクの前に代案を出すとか、努力が必要だったのに。分かりにくい上に、世間の注目が高い案件を抱えた、重要な部署であるからこそ、姿勢を低くする意識を忘れてはいけない。今回のトラブルを経て、A高校がいい高校になることを祈っています。
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