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2016年5月

2016年5月29日 (日)

母校への寄付、所得控除でなく税額控除で

国の財政が厳しい中、大学はどこも、法人や個人(卒業生など)からの寄付集めに動いています。このほどちょっとした転機が起きました。今年度から、国立大学の学生の就学支援についての個人寄付で、所得控除だけでなく税額控除も可能になったのです。収入がよほど多い人を除くと、税額控除の方がお得です。私立大ではすでに可能だったのですが、2015年末の文科省の税制改革要望でこれが通りました。私は記者レクの後、即記事にした(一般紙は1月入ってしばらくしてから書くなど、意外に遅かった)のですが、それは「大学からの寄付お願い攻勢ににさらされている卒業生は、関心があるはず」と思ったからです。

例えば、年収1000万円規模の人が10万円の寄付をすると、これまでの所得控除(の中の寄付金控除)だと、10万円に対する税金分の2万円強が確定申告で戻ってきていました。それが新たに可能になった税額控除だと、4万円弱が戻ってくるのです。つまり「10万円を寄付したが、税金に回っていた4万円が寄付に生かされることになり、よって新たに寄付として支出するのは6万円ですむ」という仕組みです。「6万円だけがんばったら、10万円がんばった顔ができる」といいましょうかネ。

こういったことを理解した上で今回、母校の某大学にちょっとがんばった金額で寄付をいたしました。私、お金のことはあまり得意じゃないんですよ。おまけに上記の例でさえ、2万円と4万円の差と判明し、「理解するのが面倒なわりに、差はそうたいしたことないような…」。(笑)。資産家がガッポリ寄付する時は、だいぶ違うのだと思うのですが。ただ、「この面倒な仕組みを自分でちゃんと考えて理解して、制度を活用して、身銭を切って寄付をした」ことに満足感を覚えました。

こうなってくると、大学側には「本当に有意義な形で活用してね」と念を押したくなります。卒業生と大学の関係はこうして強化されてくるのですね。外からの取材で想像するのとは違う、中に入っての実感です。「会社勤めは一般に、国税の所得税も、地方税も天引きだから、税金の使途に対する関心が低い」との声を聞いたことがあります。逆に、資産家だと税金で持って行かれる分が高額になることもあって、パナマ文書の件のように税に対して(過剰に)真剣になるのでしょう。ということで、お勤め仕事の卒業生は、大学寄付をするということで、どちらにも偏らない適切な認識を育てていくのが、リーズナブルかもしれません。

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2016年5月22日 (日)

演出家・蜷川幸雄氏の叱り方

演出家の蜷川幸雄氏が亡くなり、演劇関係でお世話になった身内が葬儀に出席してきました。著名な俳優さんの、本当の思いが反映された弔辞に感動したそうです。蜷川さんといえば灰皿投げが(やや誇張された)有名なエピソードですが、厳しいことは確かです。私も、身内の手配でゲネプロ(舞台が始まる前日などに行われる最後の仕上げの通しけいこ)を見に行ったとき、「明日から本番というのに、今こんな指摘をするの」とびっくりしたことがありました。数カ月前と絶好のタイミングで出版された「蜷川幸雄の仕事」(蜷川幸雄、山口宏子著、新潮社)も読みましたが、ここでも多くの大物演劇関係者の声として、それがわかります。

蜷川さんは主役級に大物俳優だけでなく、人気急上昇中の若手タレントも起用しますが、大物だろうが著名であろうが、関係なく叱り飛ばすそうです。普通、関係者は、大物や人気者に対しては持ち上げになりがちですよね。その中で、格段に厳しい対応をされて彼らはショックを受け、その後の連日のけいこで必死になり、そして蜷川さんを敬愛するようになっていくのだとか。つまり、蜷川さんはかなり意識的に、俳優を叱り飛ばしている、とのことを聞きました。なるほど~。

そこで、科学技術の研究に対する評価や議論と重なることに気づきました。先日、私もとある評価の場で、審査の先生がかなり辛辣な指摘ばかりをするので驚いて、「厳しいですね」と感想を伝えました。そうしたら、「これくらいは全然、たいしたことないですよ。科研費など公式の審査の場はもっときついことを言われますから。今、若手研究者の彼らを鍛えておかなくて、どうするんですか」と返ってきました。なるほど~。

私も大勢の人の前での発言となると、下手に出るというか、おもねってというほどではないけれど、控えめになってしまいます。でも、いつもそれでよいのか? と自問しました。場合によっては、そんな態度は「その場しのぎ」と批判されても仕方ないのかもしれません。とはいえ、「適切に叱る」ということは一般的に、難易度が高い。「一人で怒りに煮えたぎって、本人はストレス発散となるかもしれないけれど、周囲は皆、迷惑」とか、「ただの的はずれ」とかありますし…。

ということで私はとりあえず、「発言はいつも控えめ」という態度を、改めることにしました。その場でふさわしい態度とは何なのか。本質的なところを考えて行動したいと思います。

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2016年5月10日 (火)

「学術」って何?

「科研費改革が本格化 多様性から新たな芽 etc」を2016.5.9に書きました。科研費は「学術研究」を対象とする唯一の競争的研究費です。でも、「学術って何?」 わかりにくい言葉ですよねえ。取材の中で「学問とも言い換えられる」と知り、なるほどと記載しました。でも、まだわかりにくい。

パンフレットなどでは、学術研究とは「研究者の自由な発想に基づく研究」としています。でも私は、これは誤解を生むのでよくないと思うのです。「何にも縛られない中から、思わぬ発想が生まれ、それが発展して社会を支える土台の知となっていく。だから自由が重要なのだ」と私はわかります。研究者も「学術/学問の自由」ってよく口にします。でもこれが、「大学人は、税金を使って好き勝手にやっている」という一般社会の印象とつながっているのではないかしらん。

これに対して、大学教授は中小企業の社長と似ていて、一国一城の主。でも納税者としての組織人の多くは、上司に無理難題を押しつけられたり、組織の論理に涙をのんだりしている。だから「我らに自由を」と一方的にいうのは、ねえ。「柔軟な環境でないと知は育たない」とかなんとか、いいかえる必要があるのではないでしょうか。ということで、私は、学術研究とは「研究者の豊かな発想や予想外の結果から新たな”知”を創造し、社会全体の知的基盤構築に貢献するもの」という定義にしてみて、記事を書きました。これならどうでしょうか? 気に入ったら皆様もご活用くださいね。

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2016年5月 7日 (土)

女性が男性優位の組織で働く時

最近、女性と男性のーダーシップやコミュニケーションの違いに関心を高めており、いくつかの本を手に取りました。そうしたら「そうなんだ!」と思うことが続出です。今になって気づく奥手の私。年下世代で企業など組織で仕事をする女性には、ぜひ「伝えたい」と思いまして、二つの本で自分用にメモをした内容を、紹介します。

「ビジネス・ゲーム」 ベティ・ハラガン (光文社) より

◎企業組織に入った女性は、男性社会の“ルール”に基づく競争に入ったことを意識すること。外国人が旅行者ではなく住居者になるのと同じで、コミュニティーの“言語”や“価値観”も身に付けなくてはいけない。

◎これは、野球やサッカーなどのチームスポーツの決まりごと同様。男性は子ども時代にこれらのスポーツ経験があることも多く、組織のルールを自然に身に付けているが、女性はそれを知らないまま。普通にしていると、はじきとばされる。

◎具体的には… 自分の持ち場を守る/上の指示に逆らわない/負けても必要以上に落ち込まない/与えられたチャンスには堂々と応える など。

「なぜ女は男のように自信をもてないのか」 

      キャティー・ケイ&クレア・シップマン (CCCメディアハウス) より

◎自信とは「自分にはできる」という確信。これがあれば、リスクあるものに対して決断、行動することができる。

◎成功や達成は、能力より自信の有無が大きく作用する。自信があれば、挑戦してくじけずに取り組める。自信がないとチャンスも生かせず、最初から諦めてしまって伸びない。

◎自信は試練と達成を経て生まれる。失敗は早いうちに小さなものを重ねて、耐性と次への挑戦意欲を獲得する。女性が思いがちな誠実さ、努力、愛情だけでは不十分。完璧主義や心配症なのもマイナス。女性は周囲を気にしすぎ、考えすぎ。傷つきやすく、失敗を忘れられない。

◎女性は自虐的、うまくいかなかったときは自分を非難する。成功は運や周囲のおかげとする。男性はその逆。テストの結果が悪くても、男性は「もっと努力すべきだった」と考えるが、女性は「私にはやっぱり能力がないんだ」となってしまう。

◎昇進の提案を、男性は自分の能力が不十分でも受ける。女性は能力が十分でもためらう。

◎例え能力が不足していても、本人に自信があるとそれが態度に表れ、人を引きつけプラスに働く。

◎女子は男子より、感情のシグナルをキャッチしやすく「いい子」になってしまう。親や教師もそれをほめる。間違えることや危険を冒すといった自信をつける上で重要な行動をしなくなる。

◎男子はをスポーツやゲームなどで楽しみながら競争し、悪ふざけやからかいをしあいながら成長する。女子はほめられることばかり考えて、批判を避ける。学校から社会へ場が移る時に、ルールや称賛の定義が男性社会用に変わるが、女性はそのことに気づかない。   


どうでしょうか。なるほどと思いませんか? 私はかなり、目から鱗でした。今になって気づく奥手の私、と先に書きましたが、正しくいうと「今まで知らなくてもやってこれた新聞記者の私、それも大学担当で」というところでしょうか。新聞記者も、取材先の大学人も、組織の一員というより一匹狼型が大勢、いる世界です。だからこれまで、こういう点に悩まずにのびのびとやってこれた。でも、一流企業の社員や役所の官僚であれば女性は、悪戦苦闘して疲れ果てる前に、「なるほどこういうものなのか」と気づくことが、有益だろうなあと思いました。

このテーマで関心がある方、ぜひ私と意見交換をいたしましょう。ご連絡、お待ちしています!

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2016年5月 2日 (月)

「お姉さま」への取材を2件

「女性管理職活躍のために 育てるプロセスで優遇を 21世紀職業財団会長 岩田喜美枝」を2016.5.2付の4面「パーソン」に掲載しました。厚生省から資生堂役員に入ったキャリア女性として知られている方です。あるところで聞いた講演の内容がとてもよかったことから、「取材(この記事は寄稿の形ですが)に行こう!」と決められるのが記者のよいところです。「能力や経験のない女性を無理に登用するのではなく、難見度は高いが成長に欠かせないポストの対象を、積極的に女性にせよ」という発言に加え、物腰や考え方も柔らかくて、さらにファンになっちゃいました。

私、「男性と完全に同等」というバリバリのビジネスウーマンは苦手だと最近、わかってきました。体力もないし、自分としては、男性社会にフィットしないなあと思うから。その点、多様な働き方を考えざるを得ない女性、それも若い世代も、岩田さんには憧れるだろうなと思いました。でも。原稿にも書きましたが、意外と厳しいことをいってもいるんですよ。「ワーキングマザーの支援で仕事の量は減らす必要があるが、仕事の質は下げてはいけない」って。優しい時と、厳しい時のバランスが優れているのでしょうね。

もう一件は、2016.4.25付のbooks面の「書窓(しょそう)」。エグゼクティブの読書習慣を紹介してもらうコーナーで、ファンクショナル・フルイッド社長の藤岡恵子さんにご登場願いました。実は社長はものすごい活字中毒。「食後も入浴中も就寝前も、常に本を手にしている」って書き出しにしちゃいました。本はぴったりの企画でしたね。

藤岡社長もまた個性的で。法学部を出た後に仲間と化学工学系の会社を立ち上げて。理系の学びが必要だと通常の受験から始めて工学部に入り直し、博士号取得までいっています。文理の文章についての話に花が咲きました。「レポートでも文系はとにかく長く、しつこく書く。理系の教員には『もっと短く』っていわれましたよ」と聞き、「理系出身の私が、記事について文系の指導者にいわれるのと逆なんだな」と思いました。

個性と存在感と魅力ある私にとってのお姉様を、これからも意識して取り上げて参ります!

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