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2016年10月

2016年10月30日 (日)

バブル気味の女性モノ記事で目を引くには

「学会、『女性賞』は有効か 女性研究者支援のあり方 男性以上の強い励みに 基本は研究業績だが… 女性の状況に配慮を」を2016.10.28付の最終面「深層断面」に掲載しました。約90の自然科学系の学会に横串を刺す「男女共同参画学協会連絡会」のシンポジウムを取り上げました。このシンポ、親しい先生が何人も運営にかかわっていたので、なんとか大きく取り上げたいなと思いました。とはいえ、女性モノは今、シンポもあちこちであって、代わり映えしないテーマでは取り上げにくい。ましてやこのシンポ、土曜日の開催だったので「うーん、休日に仕事をするだけの内容かな」と吟味しての参加でした。

そうしたら、大正解。おもしろかったのです。学会で「女性賞」の創設が出てきていており、それをテーマにした分科会に焦点を当てました。「それは女性活躍推進に有効なのか」「いやそんな賞は逆差別になる上、価値が低くてみっともないのでは」といった疑問を持ちますよね? それについて「なるほど」と納得させてくれる内容でした。参加したほかの学会の人からの質問も多数、出ていました。

もう一つの分科会のテーマ、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」もなかなかです。性別のほか出身や貧富、人種などに対する固定観念は、人を評価するときにしばしば顔を出します。沖縄科学技術大学院大学の副学長が「評価者が疲れたり急いだりしているとき、グループに少数の特徴的な人が目立つ時、業績情報が十分にない時などにバイアスがかかりやすい」と講演。なるほど~。女性、研究者の世界に限らないだけに参考になります。

それで「欧米の大学では教員の採用や昇進にかかわる人向けに、アンコンシャスバイアスの研修義務化が進んでいる」と紹介されました。これに対しその場でも、そのあとの全体会議でも質問の手が挙がりました。取材をしていると「私はおもしろいと思ったけど、ほかの人はどうなのかな? 記事にする意味はあるのかな?」と迷うことが時々、ありますが、シンポジウムのその場にいれば直接、反応がわかるので、自信を持って「よし、書こう!」って気になりますわ~。

そしてこの記事の掲載お知らせを取材相手にメールするのにも、「皆さんの企画がよかったから、こんなに大きく取り上げることができたのですよ」と私は伝えました。アンケートを独自に実施するなど、労力もかけていましたからね、記事によってそれをねぎらいう形になりました。イベントを企画する皆様、バブル気味のテーマであればなおのこと、「こういった切り口なら目を引くかな?」「関係業界のメンバーに切実なだけでなく、ほかの業界にとってもプラスの内容を発信できるかな?」とご思案ください。土日の開催でメディアを取材に呼びたい時にはなおのこと、です。私も協力しますよ。土日、たまになら。毎週はちょっと…、ご勘弁くださいね~。

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2016年10月24日 (月)

ネタ探し&アポに苦しむ

「けっこう待ちの仕事なんですよ、新聞記者って」という発言を聞いて、私はすっごく驚いた経験があるのですが、確か記者ってにそういう面もあります。事件記者は事件が起こらないと、記事が書けませんものね。昔の海外の映画でも、タバコをふかして暇そうな記者が数人でカードゲームしていて、事件が起きたら飛び出していく、ってシーンがあるじゃあないですか。

私の場合、毎日の「科学技術・大学面」は部の皆でつくっているので、「ネタ、今日はないんですよ」ということができなくもない。気は引けるけど、笑。けれども毎週木付の「大学・産学連携面」については、私が主担当とあって、「トップの記事と、連載or寄せには責任を持たないと」という意識を常に持っています。もちろん、部や支局のメンバーからの出稿もあるのですが、なかった場合は「私がなんとかします」という立場。よって「待ち」と逆、必死に「探し回る」感じになることもあります。

ノーベル賞が一段落した先週あたりがそうでした。夏の概算から9月の夏休み取得、ノーベル賞と数カ月の間は、忙しいのが見えていたため「早めにネタを探してアポもして確保」。「あれとこれが、この順番で取材になって、掲載タイミングはこのころ」と計画的に進めました。でもって、それが一段落してネタのストックがなくなって、「品切れ」に。く、苦しい…。狙った案件のアポが入らなかったりして、仕事が忙しくないわりに、あせっている状態でした。

今日あたりはようやく一息、の状態です。でもさっき、ヒント探しでシンポジウムの冊子をめくっていたら「△にスタート、ネタ!」と赤ペンを入れた頁を発見。忙しい時期だったため、チェックだけするも、アポを入れていなかったという案件です。改めて取材先にメールで連絡してみよう。「賞味期限切れ」となっていないことを祈りつつ…

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2016年10月16日 (日)

ラグジュアリー女性誌に大島まり先生を見つける

少し前に高級女性ファッション誌をめくっていて、親しい女性研究者を見つけました。東京大学生産技術研究所の大島まり教授、雑誌は「Precious(プレシャス)」 5月号です。もともと流体力学が専門で、私が初めて取材に伺った時にはすでに、独自の脳動脈瘤の血流シミュレーションなどのテーマに取り組んでいました。超レアの東大の工学系の女性教授できれいな人で、もうそれだけで「勝ち組」って思えるじゃないですか。40代に入ってから結婚、そして出産だなんていうのもまた、「すごい~」って思っていました。

それだけに、半生を振り返っての記事は、それまでの印象を覆す、別の観点から心に残るものでした。というのは、独自の研究テーマを見つけて確固たる土台を築くのに時間がかかっていたからです。「(流体力学の)私の分野は歴史が長く、研究者も多いため、続けていけるか自信がなくなって…」といったコメントが出ています。学生時代も、研究者になってからも、留学していますが、「それで道が開けた」わけではありません。悩んで、苦しんで、そして今のテーマに「これだ!」となったのは36歳の時だったそうです。

いいですねえ、こういう話。仕事で「すごいな」と皆から見られる立ち場の人が、失敗したとか辛かったとかいう話をしてくれると、強力に親近感を持ってしまうもの。なかなか表に出てこないものだから、貴重な話だという感激もあるのでしょう。大島先生のこと、さらに好きになってしまいましたよ~。

それで、メールを出しました。そうしたら、「雑誌で紹介されているようなラグジュアリーなブランドも持っていないのに…」と恐縮するお返事が。同感です。私もそのページを開く前は、「ひええ、ワンピース△円、こんな高いモノを買う人がいるのか」と驚いていたのですから。というかもっというと、その雑誌を1000円近い定価で本屋さんで手に取ったのではなく、古書のブックオフで10分の1の値段で置かれているのを立ち読みした(先生の掲載を知って、そのあとちゃんと買いました。100円で)という状況でしたからね…。
それにしても驚いたのは、お金をかけて美と豊かさを追求しているとみられる雑誌でさえ、こういったキャリア女性の半生を振り返る企画がなされるということです。全部で4人のキャリア女性が取り上げられて、こういう場合の定番は「国際」での活躍ですが、もう一つ驚いたのは3人が理系(医療1人の工学2人)だったことです。理工系女性のもうお一人は、パナソニック執行役員の小川理子さん。音響機器のエンジニア出身で、テクニクスブランド復活の総指揮をしてプライベートではジャズピアニストとしても活躍、ということで憧れが集まっちゃいます~。キャリアを積んだリケジョの話は今、大きな企画記事を執筆しておりまして、掲載後にまたご報告いたしますね。

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2016年10月10日 (月)

ノーベル賞の大隅先生は科研費を18億円もらっていた

「私の研究は科研費に支えられた 総額18億円 大隅氏ノーベル賞に結実」の記事を 16.10.10付の弊紙、科学技術・大学面に掲載しました。私がこのところ強力に力を入れてガンガン書いている科研費の切り口です。「基礎研究が大事」と強調する大隅先生に合わせ、メディアはこぞって「応用目的の研究ばかりに引っ張られてはだめ」という内容を書いています。うちは違う、とはいいません、弊紙もそう書いています。ですので、この情報を耳にした時、けっこう迷いました。「大隅先生は科研費で18億円もゲットしているの? もらいすぎじゃない? 基礎研究で地味でコツコツと、報われなくてもめげない大隅先生、って世間は思っているのに」というのが第一印象でした。

で、仲間に「この話、どう思う?」って聞いちゃいました。そうしたら「いいんじゃないですか。事実として関心の高い情報だと思いますよ」といわれて。「そうか。メディアは客観報道、だもんね。18億円を批判も擁護もしないで、まずは表に出してみよう」って、取材した次第です。

出稿後、「読売が大隅先生とひっかけて、科研費について書いているけど、その話とは違うの」との問い合わせがありました。「読売さんが書いているのは、挑戦的研究の新種目がスタートする、という話でしょう。それ、8月に私、一面トップで書きましたよ」と軽くかわした私(笑)。科研費は大隅先生の研究のような基礎を応援している、そこで挑戦的研究の改革がちょうど進んでいる、というだけですからね。私の方は大隅先生の35年間の各年度の科研費金額の棒グラフをばばーんと入れて、掲載といたしました。
 
なぜそんなに高額になったかという理由の一つが、科研費最大の種目「特別推進研究(特推、とくすい)を3回、採択されているからです。年約1億円に相当し、これを10数年にわたって確保でき、博士研究員(ポスドク)雇用などで研究を大きく進められたのです。すごいですねえ。そしてこのとくすい、実は進行中の科研費改革の議論で「著名研究者が何度も採択され、その分、ほかの人が採択されないのはいかがなものか」となり、「採択は1回だけ」と変更が固まっているのです。大隅先生の3回採択も批判の的だった、といえなくもない。けど、そうは書いていません。一人一回限り、という変更に対して、「『研究者の一世一代の挑戦を支援する』(文科省)ものとして、次のノーベル賞候補者の飛躍を後押しする」と、記事をまとめました。なかなかいい書きようではないでしょう?

この日の紙面は、7日にあった東工大の新研究院のシンポジウムで、ノーベル賞の今回の受賞者の大隅先生、以前の受賞者・白川先生、候補といわれる細野先生と三島学長が並んだ写真入り記事が入っています。その下にはたまたま(と思うけれど)、同じ日の昼に文科省記者クラブで会見をした細野秀雄先生の技術開発ニュースも入っています。関連のものを集めて見栄えのある紙面に仕上がりました。

ノーベル賞日本人受賞では毎回、なるべく他メディアで出ていない視点で私は解説記事を書くようにしています。青色LEDの時はJSTの支援で特許、技術移転対価がどんなふうになっているのかを、いち早く、メディアの中でもっともはやく記事にしました。昨年は大村先生が山梨大、梶田先生が埼玉大の出身者だったことから、大学改革と地方国立大の人材育成(研究、ではないのがポイント)の意義を書きました。さて今年はどうしよう! と思っていただけに、この仕上がりはうれしいもの。おかげでノーベル賞で疲れた日々の後にくる3連休、これをシアワセな気分で過ごすことができました~。

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