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2016年11月

2016年11月27日 (日)

映画「オケ老人!」に職種の新旧を思う

文科省クラブの元関係者の身内が、公開中の映画「オケ老人!」に深くかかわっている、と知りまして、鑑賞してまいりました。文科省をはじめ役人に大人気の「シン・ゴジラ」は見に行っていないのですけれどね。ストーリーは、ダメなオーケストラを主人公が立て直すという音楽ものとしては一般的なものですが、それなりに共感して楽しみました。

共感その1。「音楽はテクニック重視で厳しくやるのではなく、上手いも下手も助け合って楽しくやらなくっちゃ」。私は同世代女性に多いパターンとして子供のころピアノを習っていたのですが、練習が嫌いでした。中高大と吹奏楽(曲としてはクラッシックのアレンジが多い)をし、高校はコンクール重視の厳しめの部活動。でも私自身は下手でコンプレックスが強かったので、このメッセージは重要です。映画では対立する2つのオケに絡む著名フランス人指揮者が、この考えを皆に浸透させてくれました。
 
共感その2。「うまくいかないことが多くっても、がんばらなくちゃね」。杏さんが演じる主人公の苦労、奮闘ぶりを通してとくに、30歳前後の同世代の女性を励ましています。おばさん世代の私としては見ていて「そんなに自分を責めなくていいんじゃない」って思いかけました。でも高校生時代の楽器のコンプレックスをはじめ、「私を含めて皆、若い時ってそうよね」と納得。すでに郷愁、ですわ~(笑)。

そして共感その3。電気製品の修理店をやっている老人組オケのリーダーと、振興家電量販店の経営者でもあるバリ組オケのリーダーが対立していたのですが、最後は和解のハッピーエンド。オケはともかくビジネスの対立をどう解決したかというと、量販店の一角に古い家電にも対応する修理専門コーナーが入るという形になったのです。これ、エンドロールの片側のショット画面に出てくるので、気づいていない人も多いかもしれません。私は日刊工業新聞の記者(ぜんぶひっくるめて経済記者、という言い方がされます)ですからね、職種の新旧の上手な融合に「ほほ~」と感心しました。

職種の新旧でいうと、新見南吉の「おじいさんのランプ」です。ランプが家庭に浸透し始める時代に上手に商売を広げた主人公の家庭、しかし電気が通じるようになってランプは時代遅れになりつつある…、というストーリーです。新見南吉は「ごんぎつね」の作者だというと、作風を想像できるのではないでしょうか。物悲しくて切ない。最後のシーン、ありったけのランプを樹に吊るしておじいさんは…。ああ、素敵。物語、読み直さなくちゃ!

私のリアリストの面からの感想としては、「おじいさん、そんな早まらなくてもビジネスの最後の一押し、上手くできたかもしれないのに」っていうのがあるんですけれどね、笑。現代社会もウェブによってあらゆる業種、職種が大変革。さらに「AIが人間の仕事を奪う」といわれる昨今。センチメンタルな思いも大事にしつつ、新時代の波をかき分け泳いでまいりましょう。

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2016年11月18日 (金)

自然の美しさを、新鮮な気持ちでめでたい

久しぶりにつくばへ取材に行きました。紅葉を予想してはいましたが、思っていた以上の美しさに驚きました。行けども行けども紅葉の並木や森が尽きません。すごいです。駅から車で20分、敷地に余裕がある大きな研究機関もいくつか通り過ぎたので、なおさらだったかもしれません。

マイクロバスのほかの同乗者は慣れているのでしょう、きょろきょろと落ち着かないのは私だけのようです。確かに海外旅行でも、行きは景色に大興奮であっても、帰りは疲れてぐっすり寝込んでいたりするし…。美しさにも慣れちゃう面がありそうです。
翌日、文科省の建物内で気づきました。記者クラブは12階で、普段の通行ルートからほんのちょっとはずれた窓際から、国会のあたりの銀杏並木の色づきがよく見えることを。いえ、もちろん景色がいい場所だと知ってはいました。上の階(研究開発3局と高等教育局は、さらに高い階にある)に出向いたときは、もっと眺めがいいことも気づいていました。

でも、意識して「紅葉はどうかな」と覗いてみる面はこのところなかった。さほど仕事が忙しいわけでもないのに。よいものに慣れきってしまってはもったいないです。反省。季節季節をめでられる場所に常駐していることに感謝して、よく味合わって、そしてまた、仕事に励むようにいたしましょう。

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2016年11月13日 (日)

手袋はどこへ

衣替えの季節は「おかしいなあ、あの服(小物)はどこへいったのだろう」というものがいくつか出がちです。今回は手袋です。それも3つ。仕事用は今のシーズン向けと、真冬向けと、それに自宅使いの古いのと、三つもある寒がりの私です。いったどこにいったのでしょう。真冬ものは昨年、駅で落とすも執念で?取り戻したという”love tebukuro”状態なのに…。

仕様がないので別の布手袋で対処します。えっ、まだあるのかって? 先に挙げたものは風をきっちり通さない皮革もの三つです。これに対して布ものは新聞を読むときに使うもの。オールシーズン、朝の通勤で新聞を広げるのに、手が汚れるので使います。机の中を掃除する時なんかも利用します。作業用って感じでしょうか。これも真夏用の薄いものから秋冬用のとやっぱり三つくらい。やっぱり、手袋マニアですかね? 

まったくもって「どこにいったかわからない、そのまま」のものも、時に出てきます。大物では私、浴衣の下駄を紛失しました。自宅で、ですよ。どう考えても、出先でなくすってことはないでしょう。あんな大きいのにねえ。数年前の引っ越しの時に「さすがに出てくるだろう」と思ったのに見つからなかった…。というわけで、モノを紛失しやすい私は近年、なくすかもしれない高価な買い物をしなくなりました。えへん。と自慢しても仕方がない。革手袋のお三方、そろそろ私の元に出ていらっしゃい~!

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2016年11月 5日 (土)

知ってそうで知らないJST

科学技術振興機構(JST)は、大学や研究機関の人にはよく知られた文部科学省所管の法人です。でも、知ってそうで知らないことが結構あるのではないでしょうか。私もそういう状態でした。2016.10.31付で「JST20周年 ノーベル賞受賞者の研究支援 実用化へ産学連携拡大」で、そういったトレビア(?)をまとめて書きました。

例えば、JSTは研究費配分機関(ファンディング・エージェンシー)という性格を持っていて、その点は科学研究費助成事業(科研費)を担当する日本学術振興会(JSPS)と同じ立場です。ところが、戦略的な研究遂行の主体として、成果最大化を使命とする「国立研究開発法人」となってもいます。この点では理化学研究所などと同じタイプの法人で、JSPSとは別のタイプの法人となっています。

記事には書いていませんが、少し前にロイター通信が選出した「Top25 グローバル・イノベーター 国立研究機関」というランキングで、「JSTが世界第3位、日本では第1位」に輝いています。まあ、輝いていますといってもあまりメディアに取り上げられていないんですけれど。このランキングのその他の日本の研究機関は、産業技術総合研究所が7位、理研が13位で、JSTが圧勝です。JSTは研究機関なのですね~。

「えーと、JSTは市ヶ谷に東京本部がある(本当の本部は埼玉です。これもトレビア)けど、研究所はないんだよね?」って思いますよね。そうです、研究施設も研究者も独自には抱えていません。ですが、全国の大学・研究機関の研究者を、各種の支援事業や調査研究などによりネットワーク化していて、それがJSTの力そのものになっている。よって「ネットワーク型研究所」と称しています。「なんだ、それ?」って感じがしないでもありませんが(笑)、仕組みとしてはそうなっているんですね。こんな変わった立ち位置はJSTだけなのです。

それから、JSTの予算は、ERATO(エラトー)、CREST(クレスト)、さきがけの3兄弟(重みを考えると、それぞれ10歳違いの兄弟って感じかな)と、数年前から走り出したACCEL(アクセル)の「戦略的創造研究推進事業」が、半分を占めています。そうなんだ~、そんなに大きいんだ、と私は今回、初めて知りました。それから産学連携事業ですが、こちらは2割。「3兄弟+に比べるとたいしたことないんだな」というのも意外でした。という感じで今回、取材と記事執筆で私自身、知ってるフリして知らなかったJSTの復習をしちゃった、という形になりました。

それから11.1付に、社説「JST20周年 『おもしろくて役に立つ』研究を支援」を載せました。科研費は研究者にとっての「おもしろい研究」を、産学共同研究は企業にとって利益を期待する「役に立つ研究」をそれぞれ、支援します。これに対し、「JSTは間に位置して、両方を追求する」と書きました。もうちょっと説明すると、JSTの3兄弟+(なんか気に入ってしまった、この表現)は「目的基礎研究」といったりします。政府の方針に沿う目的を持ちながらの、基礎研究です。ちなみにノーベル賞受賞が決まった大隅先生のオートファジー研究は、研究者の自由な発想に基づく「学術基礎研究」です。のでJSTの支援は受けていません。JSPSの科研費一筋、であることは少し前のブログで出てきましたね(と、講義をする先生のような口ぶりです)。

ちなみに、この「おもしろいか、役に立つか」は皆さん、ご存じですね?(と、先生の口ぶりが続きます)。「価値のある情報は、おもしろいか役に立つか」。山本佳世子著の「研究費が増やせるメディア活用術」にも載っています。知らない方は即、この本をチェックしましょう。と、さりげない(?)PRでもって、締めです。「では本日の授業はこれで終わりにします。お疲れ様でした!」。

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