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2017年4月16日 (日)

理事長と学長、総長の違い

2017.4.13付の日刊工業新聞「大学・産学連携」面に、清家篤慶応義塾長のインタビューを掲載しました。「600校の生き残り戦略 私大トップに聞く」の連載2回目です。前回のブログで触れたテーマ、私学の自立と自己財源増に向けた資金運用について書きました。

慶応は寄付金収入が、大学の中でもダントツに多くて、それを資産運用するのに長けていることで知られています。同時に、リーマンショックでの資産運用のマイナスについても、雑誌などではだいぶ騒がれました。今回の取材でも、リーマンショック直後の塾長就任時には、「金融資産の時価は簿価を530億円、下回っていた」と出ました。530億円?! なんという規模でしょう。それだけマイナスだった、って…。で、「一部を減損処理してその後、債券など安全なものに買い替えた」けれども、「私学は建学の理念を貫くためにも、自己財源を増やすことが欠かせない」と力説です。研究費や奨学金などに運用益を使える「第3号基本金」は「塾長就任時より約200億円多い、約600億円に増やすことができた」。これは日本の私学で最大だそうです。すごいですねえ。私学の財務は、会社のスタイルともだいぶ違っていて、企業経営者でもなかなかわかりにくいと聞いています。ので私の能力ではもちろん、突っ込んだ分析ができないのですが(笑)、それでも「すごいんじゃない?」と思う私大、おっと違った、次第です。

では、ここで私学のトップの立場を復習してみましょう! 理事長、総長、学長がそれぞれいる大学を取り上げます。 1)私学は「学校法人」が運営組織で、大学や高校etcを含めて法人全体を【経営】面でみているトップが「理事長」で一番上です。 2)そして法人全体の【教学】つまり教育と学術(研究ですね)をみている人が「総長」です。 3)その下に大学なら「学長」、高校なら「校長」が、それぞれの教育組織を見ている責任者になります。

大手私学の「総長」はこの三つを兼ねているケースが多いようです。

国立大学はどうでしょうか。こちらは「国立大学法人」という組織形態で、「学長」が理事長に相当する運営責任を担っており、私学でいうところの理事長兼学長になります。旧帝大などは「総長」を使いますが、これは自称です。国立大学法人法上は規定がなくて、「学長」で統一されています。複雑ですね。

それでようやく慶応に戻ります。ここは、学校法人慶応義塾のトップとして「慶応義塾長」を置いており、これは「慶応義塾理事長 兼 慶応義塾大学長」となります。私学のほかの総長と同じ、だけど慶応はこだわりがあって「塾長」なんですね。おまけに新聞では新字の「慶応」を使いますが、関係者は旧字の「慶應」の表記を使います。いや~、わかりにくいです。一般に「わかりにくい」は無視されがちで、よいことではありません。けど慶応だと、わかりにくくても、そのこだわりが通せちゃう(笑)。多くの大学に、そんな存在感の強さを目指してほしいと思います。

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