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2018年1月 9日 (火)

特許収支記事でコメントを入れた理由

「特許収入、支出の2.3倍 山口大、年平均2億円 外部資金の獲得効果寄与」 を2017.12.21付に記事掲載しました。昨年の案件で恐縮ですが、ぜひブログに書いておきたかったものですのでご容赦ください。山口大の知的財産センターが同大の特許関連収支を分析した内容で、「2012-16年度平均で年間収入は約2億円、支出の2.3倍になった」という話です。これは収入の定義を、従来の狭義のものから、「特許が核となって獲得できた競争的資金の間接経費」も含む広義のものに変えると、人件費もカバーして十分な黒字になっている、ということを示しています。

この記事の反響を山口大が教えてくれたのですが、予想以上のものだったそうです。大学関係者からは「本当か? どう分析するのか」という自分の大学でも計算するための(たぶん)問い合わせが来ました。驚いたのは政府関係の反応です。中央官庁、管轄の独法などいくつものところから矢継ぎ早で、「レクをしてくれないか」と来たそうです。すごい。知財はその分野の専門家以外からすると、今の流行じゃないですよね。AIとかソサエティー5.0とかの流行に比べると、うんと地味です。国立大の法人化の頃からずうっと「重要だ」けど、「国立大のような営利事業を手がけない研究機関では、稼ぐのは難しくて、お荷物」的な扱いをされてきました。それだけに「切り口を変えれば、こんなに貢献しているじゃないか」っていう話は、響いたのでしょうね。

この案件、もう一つ興味深いのは、私への問い合わせはなく、担当者・取材相手である山口大の佐田洋一郎知財センター長へ直接、連絡がいったことです。氏は知財分野で活躍して知られていて、でも分析結果はまだ学内で確認できたくらいの段階で、私の記事において名前を載せたから、そうなったのでしょう。

普通、ニュース記事には取材相手の名前が入った発言(コメント)を使いません。インタビューや記者会見のほか、読み物の記事には名前を出しますが。理由は複数あって、調査報道のようなものだと複数の取材先の話を組み合わせて書くため、「誰が発言した」とは出さないとか、ニュースはその中身で勝負するもの(発言者が著名人か無名かは関係ない)だとか、が大きいと私は思っています。難しい案件だと、「表に出たくない」取材先もいます。実際に「取材はOKだけど、名前は出さないでね」と頼まれることもあります。

でも今回、私は佐田氏の「特許事業を長年、続けている大学は同様ではないか」というコメントを、読者に伝えたかったため、意識的に入れたのです。このコメントがあれば「じゃあうちの大学も調べよう!」って思うでしょうし、このことを伝える以上、「だれが言っているか」を示す必要があると考えたのです。今回はこれで正解だったかな? 今年もいい記事を書いてまいりましょう!

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