優秀な研究者は基礎研究の社会アピールもうまい
新聞記者なので、また聞きの話はなるべくブログでも書かないようしているのですが、今回は特別です。文科省の元幹部の講演で出てきた話で、ぜひとも紹介したいと思ったからです。一般にウケにくい基礎研究のアピールをどうするかということです。
閣僚が居並ぶ前で研究の話をする、つまり優秀と評される著名2研究者の2つのケースです。名前は伏せられています。一つは、研究者が「私の研究は基礎なので、イノベーションには関係ありません」と発言をし、閣僚が顔を見合わせてしまったそうです。元幹部は、科学技術の環境整備を盛り上げようと思ってその研究者を呼んだのに、これでは…とがっかりしたそうです。国は、社会を変えるイノベーションという観点で、研究を応援しようという雰囲気になっている。なのに、「科学技術と社会は関係なし、別に社会なんてどうだっていいんです」と【開き直った】発言だったわけですから。私のブログ読者の皆さんは、科学技術コミュニケーションの意識をそれなりに持っているはずですから(笑)、この発言がマズイということはすぐわかったと思います。でも思うに、この大先生は「自分は偉いから閣僚の前で話してくれと頼んできた。偉いんだから自分は、思うままに好き勝手なことを言えばいいんだ」と勘違いしたんだろうなと振り返ります。想像ですけれど。
一方、もう一つはよかったケースです。その研究者は「私の研究は基礎ですが、世界の最先端の技術の粋(すい)を集めないと進まない分野です。ですからこの研究の推進は、社会イノベーションの創出につながることでしょう」と言ったそうです。なんと。ここまでいうなんて。中身を聞いていないのでなんともいえませんが、きっと「いいすぎ」でもあるでしょう。でも、得意とする分野がかけ離れている場合は、これくらい踏み込んで言わないと、いけないのかもしれません。研究者は概して、正確さにこだわるせいか地味になってしまいますから、なおさらです。
さて、この優れた研究者はどなたでしょうね。私は、おそらくA先生、と予想しています。だってA先生は、研究内容は飛び抜けて難しい基礎、にも関わらず一般向けの講演会や本で大人気、研究資金も大変な額を引き出しています。「科技コミュ力が非常に高いな」と以前から思っていました。が、白状すると私はA先生の講演にも本にも、ちゃんと接したことがありません。まずいですね、私。次回のチャンスは逃さずに、どんな話しぶりで多くの人を引きつけているのか、探りに行くことにします。
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