取材も記事掲載もタイミング
少し前に政府関係のテーマで一面トップを掲載しました。これだけで「あ、あの記事だな」と思う人はほとんどいませんよね、笑。スクープは署名入りではありませんから。でも内容を話すと、取材の裏話があまりにあからさまなので、恐縮ですが記事の中身を伏せたうえでの、報告にさせてください。
皮切りは「この案件、そろそろ議論も固まってくるかなあ~」とまだざっくりとしか考えていなかったころ。この案件も一部、関わってくる、もっと大きな枠組みでのシンポジウムに出席していました。この案件に関わる重要人物が登場。中身を具体的に話してくれました。まだ自分の意識も「固まってくるかな」という低いレベルだったため、最初はぼーっとしていたのです。が、途中で「けっこうおもしろいじゃない」と考え出して、はっと気づきました。「これ、そのまま書ける内容では!?」と。休憩時間に当該人物に挨拶ということでそばに寄って、「この件、いつ頃に本決まりでしょうね」とさりげなく問いかけると「もうすぐ」との返事です。もうすぐ、かあ~。これじゃあ分からない。だって「もうすぐ」というのが「ひと月先」だったら、今書いたところで「本当にこれで決まりなの? まだ議論しているだけじゃないの」と言われてしまうから。タイミング早すぎ、でボツになってしまうかもしれません。
そこでこの内容で以前からやりとりしているAさんに連絡をとり、「来週の会合で報告。これでほぼ決定」とつかみました。来週! 早く書かなくては、他メディアに先に書かれてしまうかもしれないタイミングです。でももうちょっと確認しないと、記事を間違えるんじゃないかと心配です。会合のメーン担当に近いBさんにアタックしました。「今なら時間があるので、会える」といってもらったにもかかわらず、締め切りが迫り、さらにその後に外せない予定がはいっていてる…。タイミングの悪さを残念に思いながら、諦めました。
社内での記事やり取りも一山ありました。ウエブ検索すると、1年前のメディア記事で出てくるじゃないか、と。押し問答の末、「わかりました、別の切り口で書き直します」。別の切り口でも悪くはない。そう、これこそが本命だと読者に思ってもらえるよう、盛り上げるのに頭をひねりました。先のシンポジウムの資料をひっくり返して「これを強調しよう!」と思案します。でもPPTってテキスト文で書かれた資料と異なって、「こういうことでいいんだよね?」と悩む部分がありますよね。ちょっと自信がない。追加取材で確認したいところです。
一方で取材から戻る出先で、Bさんの下のCさんに電話しました。そうしたら電話を受け取った人が「はい、D室(Dの名前と肩書入り)です」というので驚いちゃって。間違えたふりをして電話をオフに。…Cさん、異動だったの忘れてたわ。あ、でも「D」っていったよね? Dさんが後任か、それならイケル。再度かけて、折り返し電話を移動しながら待って、駅のホームの隅でメモノートを広げてやり取りしました。「少し時間をもらえないか」と秘書さんに伝えた面談のリクエストは、難しそうな雰囲気です。ああ、もう時間もないし、ええい! 大筋で「問題ないですよね?」と確認して、あとの盛り上げ・詳細は勘弁してもらって、これで出稿だ!!
報道の記事で新しいことが公になる時、書かれる方は間違えられることを最も嫌がります。ですので「慎重に」「裏をちゃんととって」としばしばいわれます。もちろんその努力を重ねます。でも慎重に慎重を期していると、記事はどんどん削られて、なんの魅力もないどころか、何がニュースかさっぱりわからなくなって、挙句の果ては「誰にも振り向いてもらえない穴埋め記事」になってしまう。それにタイミングを逃すと、例えばこの話なら会合が開かれる前に載せられないと、(他メディアに対する)抜きにはならなくて、苦労は水の泡です。だから、あるところまで来たら、「よし、これで行く」と覚悟を決めて、踏ん切りをつけないといけないのです。そんな仕事なのだと、取材先の皆様にはご理解いただけると嬉しいです。
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