取材先のクレームに慌てない
親しい取材先の組織A(の記事を書く企画の中で、Aが支援する組織Bの具体例を紹介することになりました。Aと、Aが連れてきたBを、ウェブ上での同席で取材して、記事にしました。その後、AがBのクレームを持ってきました。Bの「あの部分は記事にかかないでと伝えた。削除してもらえないか」というメール文面を見て、頭に血が上ってしました。しまった、ミスしたのか! 取材中に「書かないで」発言があったのは覚えており、だから気をつけたはずなのに…。この後にどう対応すべきかと緊張しつつ、取り急ぎ「ご指摘の件、不具合を生じまして申し訳ありません」とメールで返しました。ミスは迅速に対応することが、コミュニケーション上、とても大切です。どこに非があったかは後回しにして、行き違いがあったのは間違いないわけなので、「嫌な気持ちにさせてすみません」と最初に伝える方がスムーズにいくと、私は過去の幾多の失敗から学んできたためです。ところが。さらにやりとりする中で、削除してほしいという部分は8行にも及ぶことがわかりました。えーっ。そんなに大量に削除したら、「とんでもない大ミスをしました」って読者に大々的に知らせることになるじゃあ、ありませんか! 過去の紙面データベースの場合は、ぽかっと8行分の白地ができることになります。「いったい、どんなことをしでかしたの?」って、白地がかえって大いなる関心を引いてしまいます。
それをきっかけに、はたと冷静になりました。Bの指摘する部分と、記事部分と、自分の取材メモとを見直します。すると「C社の名前は×」とメモしています。「大手企業/他社関連会社」と側に書いて、下線を引いています。「注意するのは、C社の名前を使ってはいけないということで、大手企業といった表現なら問題ない」という意味です。その時に私は「では、大手企業との表現で」と言ったはず(紙面にはそう書いた)。あわせて「この話はすべて書かないで」とは言われなかった、と自信を持ちました。
もう一つ言うと、8行分の内容は「他のところでもたまにみられる活動」であって、客観的にみて格段、秘密にすべき内容とは思えません。むしろ「この形でうまく行きました」と読者にぜひ、紹介し、Bの評価を高める内容ではないかと思いました。
それで。Aに再度、連絡しました。Aの窓口は若手担当者で、そのためAはBがいったとおりにメールを転送してきたのだと気づきました。その後の連絡で、Aの担当者は「Bも、ちゃんとダメだといったか自信がない、といっている」「うちのトップ(取材の前半だけ同席していたので、その部分は聞いていたか心配だったけれど)は、Cの社名前以外は、別に何も言わなかったといっている」と返してきました。なんなんだ…。結局、ミス(というか勘違いなのか)はBにあったという結論で、削除の対応もなしとなりました。
ああ~よかった! 取り乱して本社の上司に連絡する前に、正しく判断できてセーフでした。一般的な意味での「トラブルをすみません」はいいますよ。でも訂正など紙面の価値を損なう対応については、きちんと合理的に対応しなくてはいけない。今回、いきなり頭に血が上ったことを反省しました。8行分の削除、という高飛車なリクエストが、頭を冷やしてくれました、笑。
思うに、Bは「ウェブだから簡単に直せるだろう。このあたりはCに何か言われると嫌だから(まとめて削除できれば安心だ)」といった気持ちがあったのかな、と。というのはAは弊紙を購読しているはずだけど、Bは業態からして購読していないと思われて、つまりウェブで見ただけだろうから。「Bがずうずうしい」というより、「Bは取材に慣れていなくって」という感じかなと考えました。でもこちらは、まだ慣れていないも駆け出し記者(若手)というわけではないのですからね。そう、苦手なものが来ても、びびらない。何があっても、なんとかなるし、なんとかする。そういう気持ちで参りましょう~!