« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »

2022年3月

2022年3月27日 (日)

2022年3月第4週。東北大「被害はあっても、大丈夫」

東北大の記事を、通常の大学もので掲載するその前日。3.16深夜に、宮城・福島地震の大きな揺れがやってきました。「東北大の被害はどうだろうか。親しい皆の安全性は確保できたのだろうか。記事としても、現況とあまりにずれてみっともないものになっては辛いな…」と気になりました。が、朝PCを開くと広報さんから「掲載ありがとうございました! 地震被害もこれから詳細確認ですが、大丈夫です!」的な元気なメールが入っているではありませんか。「学内外、対応は大変なはずなのに、ウチの新聞をもう見ていてくれたの?」ってびっくりです。その後、同大幹部とやりとりする中でも皆、落ち着いていて「こういう時のために準備を重ねてきたのですよ。東日本大震災の経験を存分に生かしています~」みたいな余裕を感じます。さすがです。写真は同大の地震緊急ページです。Photo_20220326112001

本日、紹介する記事は、それを受けて執筆した東北大の初動状況です。記事はこちらから。

新幹線も止まっているのは痛手だろうと心配だったのですが、さらにその後の幹部とのやりとりで「公務で東京に出向くのは飛行機です」と知りました。そういえば東日本大震災の時には、飛行場がメタメタだったはず。主要交通手段が二つあるというのは大事なんだな、と実感しました。ちなみにプライベートでは「格段に安い高速バス」になるようで、手段は三つ以上というわけですね。卒業、入学の時期だけに学生も大変かと思いますが、こうしてたくましい東北大生が育っていくのだな、と頼もしく思いました。

 

| | | コメント (0)

2022年3月26日 (土)

Webシンポ、登壇者の方式は二つある

応用物理学会は材料系でエレクトロニクスの企業人も参加する大規模学会です。私は研究開発でこの分野を担当したことがないので、先日の春の年会のシンポジウム参加が初めてでした。新型コロナウイルス感染症対応で、オンラインとオフラインとのハイブリッドでの開催というのは、同学会でも初めてだったとのことです。そのため出向いてみると、人出が「あれ?」という具合でした。写真は会場となった青山学院大学の相模原キャンパスのお昼時です。Dsc_2091 す、少ないですよね。発表者以外は皆、現地に出向かない選択だったのかなと想像します。

参加したのはシンポジウム「ジェンダード・イノベーションを通して考える応用物理の男女共同参画」です。意欲的なタイトルでしょう? 私は先日、取材・記事化したばかりのお茶の水女子大学のケースも交えて、基調講演をしました。企画の委員の先生方も「打合せはWebでずっとやってきたので、顔を合わせるのは初めてなんですよ」といっています。まあ、会場の人もまばらなので、多少スムーズにいかない点があっても問題ない状態でした(笑)。

ZOOMを使うとは知っていたのですが、「あれっ、そうなのか」と思ったのは、マスクをしてマイクを握るという形だったことです。それで、「ZOOMで聴講するシンポジウムでは、講演者が現地に集まる場合でも二つのタイプがある」ことに気づきました。

一つは、今回のように「音声は手に持つマイクで、画像は部屋全体を撮影するよう設置したカメラ1台で」というタイプです。これだと講演者側の所作としては、Webでない時と同じですみ、自然に振る舞える利点があるようです。今回、同学会はこれで統一していたのですね。

もう一つは、「各講演者がPC1台ずつを持ち、そのPCを通したマイクとカメラを使う」という形です。音声をきれいに拾うためヘッドセットが各人に用意されることが多いでしょう。そしてPCとともに講演者が少し距離を取った場所から参加するなどで、マスクはなしで顔を出すのが一般的かなあ。現地に集えない講演者が、遠方から参加する場合を含めて、こちらの方が私の経験上、多いと感じます。それで「あれっ、マスクはしたままなの?」と思った次第でした。

実は今回も、現地に出向かない遠方からのWeb参加が選択可能だったのですが、東京近郊でなら(片道2時間近くかかっても)やはり出向くべきだと思いましたし、実際に正解でした。他の講演者の話もおもしろく、「先生のお話、もっとうかがいたいです。取材に改めて行かせてください」というお願いを、お二人でできたからです。ネタ、ゲット! です(笑)。しっかり相手の頭に刻まれたはずですし、名刺交換もできましたから安心です。これがWeb参加だと初対面の人はまったくの「一期一会」でおしまい。名刺もなしで、互いの記憶にちっとも残りませんからね。時間をかけて現地へ出向くか、遠方からのWeb参加でさっとすませるか。シンポジウムと参加者の魅力によって、判断する時代になってきたといえそうです。

| | | コメント (0)

2022年3月20日 (日)

2022年3月第3週。ジェンダード・イノベーション研究所に注目

記事は不特定多数の読者に向けたものですが、取材先とは別の知人の顔を頭に浮かべながら、執筆することもあります。今回は二つともそうでした。

1.高知大学、作物の生育状況判断にAIを導入したスマート農業で、システムを確立、新年度から農家に適用。高知は身内の出身県なので数年に一度で出向いており、気候風土や産業環境(よくも悪くも)など見知っています。知人のキュウリ農家も新技術の導入に積極的で。夏野菜の季節をずらしたビニールハウスに加え、天敵昆虫を導入しての害虫駆除(農薬を使わない)だったり、空間を縦に使って次々と収穫するシステムだったり。視察が時々、あるというほどのレベルです。「私の記事、なんといってくれるかなあ」とちょっと楽しみです。記事はこちらから。

2.お茶の水女子大学、ジェンダード・イノベーション研究所を4月に設立。こちらは学部時代の母校です。一般にどの大学でも、卒業生も多くは「学生時代には世話になったけど、社会人になってからの恩義は別にあるわけでもない」という感じでしょう。そのため大学の近年の活動に対して「また寄付のお願いかあ~」という気分になりがちです(笑)。その中で「私も関心を持っていた、こんな先進のテーマでいち早く、母校が乗り出すなんてかっこいい!」と思うような報道があると、ちょっと変わってくるのではないでしょうか。弊紙は企業が主な購読者だから、産学連携の切り口がより重要で、記事ではそのことにも触れています。でもこんな卒業生個人に響く記事も、時には出せるといいなと思うのです。記事はこちらから。写真はお茶大の本館です。Dsc_2080

さてこの時期の大学といえば、「桜は卒業式か、入学式か」というのが、とくに当事者にとっては気になるところです。今春は気温を含む天候のアップダウンが激しいですね。春は学会シーズンでもあり、私は応用物理学会の年会のシンポジウムで出向くので、「キャンパスの桜はどんなかな」とちょっと気になります。シンポのテーマは「ジェンダード・イノベーションを通して考える応用物理の男女共同参画」です。どうです、取材したて、ほやほやのお話を入れてまいりますよ~。

| | | コメント (0)

2022年3月19日 (土)

書籍「ライフシフト」、印象的なのは「過酷な労働」と「起業家精神」

ベストセラ―の「ライフシフト 100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット)を読みました。政府の「人生100年時代」でも注目された本です。Dsc_2063 どんな本かをさっと紹介し、次いで私が衝撃を受けた(おそらく多くの読者とは違う点)を述べてみます。

1)これまでの教育、仕事、引退という画一的な3ステージのままでは、人生100年時代は対応できない。定年退職後の時間が格段に長くなるため、それにフィットする収入や刺激、仲間意識を獲得する方策が必要になる。 

2)そのために「自分自身や多様な社会を知って人生を考える“エクスプローラー(探検者)”、組織に隷属するのではなく自営やベンチャー的な自由で柔軟な働き方をする“インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)”、複数の仕事やボランティア、地域活動など同時並行で関わる“ポートフォリオ・ワーカー”の3ステージを、個々人の価値観に合わせて組み合わせて働くことが必要になってくる。

3)これまでは年齢とステージが皆、そろっていたが、これからは違う。若者と高齢者が交じり合って活動する機会が増え、若者の柔軟性と好奇心、高齢者の知識と洞察力を互いに活用できるようになる。

4)そのため、人生の多様なステージに対応するべく、余暇の時間をレクリエーション(娯楽)ではなく、自身のリ・クリエーション(再創造)のために使う必要がある。

こんな感じです。なるほどねえ、って思います。4番目は「学び直し」、日本でこれからですが米国などではかなり、進んでいますよね。大学院生など20代だけでなく、本当に年代が多様です。かつて母が50歳くらいで米国留学した時、教室での討論の場へ顔を出させてもらって、驚いた覚えがあります。30年前ですかねえ。

ただし、私が衝撃を受けたのは別のポイントでした。

A)現代社会の働き方は「過酷な労働」だということです。文中、何度も出てきました。「今の社会で普通とされている働き方って、実はかなり過酷だよね!!」と、思わず前のめりになりました。なぜなら社会的な成功者は頑強な人ばかりで、心身的に休みが必要になった人は落伍者みたいな風潮があるからです。

だから皆、ぎりぎりまで弱音を吐かず無理をしてしまう。私自身、「こんなに常に苦しいのは、能力の足りない私だけなのか」と、まあちょっと誇張して言うと、「20代からずっと」悩み、コンプレックスを抱えていました。それで「過酷な働き方」という表現に、わが意を得たりと思ったのです。

B)100年時代を生き抜くためには三つ、生産性(仕事)、活力(心身の健康と幸福)、変身(マルチステージの人生に対応する)の資産がいるということ。資産というより、能力とか資質といった方がわかりやすいのでそう言い換えますね。

前二つは自分でも理解していたけれど、「変身のための能力・資質が欠かせない」というのは十分に分かっていなかったため、ショックでした。もちろん一般的にはいいますよ。「生き残るのは強いものではなく、変化に対応できるものだ」って。でも年長者は特定の時代背景の下で経験を積み、自信を付けてきたわけです。だから自身の破壊的イノベーションは普通は無理で、どうしても保守的になってしまいます。

本書では変身の資質として、多様性に富んだ人的ネットワークや、古い常識ややり方に対する疑問の姿勢、新しいことを実験する行動力などを上げています。それで気づきました。「過去の事例にとらわれない、好奇心旺盛で柔軟で、ビジネス的にいうなら起業家精神を持つ人であれば、変身の資質が高くて100年時代を豊かに生きていけるのだ!!」と。

現役世代は目の前の仕事に追われて疲弊しがち。退職後の年数が短かったこれまでなら、変身資質がなくても、年金+少ない蓄えで現世を終えて、子供世代につないでいけば人生は成功。それでよかった。でも人生100年時代は、違う。これからは60歳の定年退職に対して、その先に40年(定年までの人生の3分の2!)もあるわけで、子供を持たない・持てない人も大勢いる。だから自ら起業家的な、創造的で自由な精神を育てていく必要があるわけです。これから起業家教育を取材する時は、自分のことと重ねてこの視点で迫っていきたいと思います。

| | | コメント (0)

2022年3月13日 (日)

2022年3月第2週、大学支援の草分け、リバネス

記事はリバネス、新事業創出の人材育成講座の本格化。地域の技術シーズによる創業支援と連動へ、です。リバネス、ご存知ですか? 写真はHPから、Ribanesu地域の産学連携・エコシステム形成を支援する「地域テックプランター」の、おそらくコンテスト実施後の写真です。

 理系大学院生が、自分たちが実感した研究環境などの課題を解決するために、支援会社を起業するというケースが近年、増えているのですが、同社はその草分けといってよいでしょう。今年20周年だというから驚きです。私は時々に(たまに)取材に行くのですが、今回の感想もかつてとあまり変わりませんでした。「事業として何を手がているのか、一言で言い表せない」「ファンがけっこういて、顧客ももちろんそうだけど、社員志望でやってくる」「学生サークルの雰囲気で関係者が盛り上がっている」という感想です。同社の記事はまた書くので、今日のところはここまでで。

編集の中間管理職クラス向けの研修がありました。若手とのコミュニケーションをよりよくするためのWeb参加でほぼ、丸1日でした。私は本社が拠点でないため昨今は、「顔も名前もわからない若い人がずいぶん、増えてしまったな」と感じていました。でも今回は、私より少し下の年齢層が主力で、ほぼすべて知った顔で。「わあ、お久しぶりです」と正直、嬉しかったです(笑)。若手とのコミュがテーマではあるものの、同世代間でのコミュの実施も兼ねてしまったようです。実は当部は新年度の人事異動で、状況が大幅に変わることになり、私は不安な気持ちが強かったのです。が、研修でいくつか「なるほど」と思うところがあって、また部で要となるメンバーも一緒に参加していたことから、今後の工夫は必要ですが「きっと、うまくやっていけるよ」と、気持ちは前向きに変わってきました~。

| | | コメント (0)

2022年3月12日 (土)

クラシックコンサートで、ここまでするの?!

クラシックオーケストラの異色コラボによるエンターテインメント、新感覚コンサート「クラシカエール」に6(日)、行ってきました。早稲田大学ビジネススクールの川上智子教授の研究室が、「クラシックコンサートを、補助金に頼らずに(現状はかなりの割合で補助金が入っている)回るビジネスにする」ためのマーケティング活動として展開。今回は5回目、私は毎年、記者会見に出て記事にしています。私が書く記事の中ではもっとも柔らかい類ですね(笑)。指揮者の鰺坂圭司氏も「現役のテレビマン」(HPの説明から、写真もPhoto_20220312095301 )なのに社会人で音大に通って指揮を学んだというユニークな人です。仕事を通じての個人的な関わりがあり(初回の記者会見で久々の再会)、いつも刺激を受けています。

クラシカエールは音楽に手品、謎解き、空手演武など重ねて、初心者にもクラシック音楽を楽しんでもらい、業界の新たな顧客になってもらおうというのが狙いです。今回は海をテーマにしていますが、それ以外も含めてもう、てんこ盛り! 人工知能が作曲(恒例になりつつある)した作品、海の中を泳ぐ魚の撮影画像、同様のアニメーションのCGに拡張現実(AR)、子供向けシーフード写真コンテスト入賞作品の紹介、なぜか阿波踊り、指揮者の指揮棒さばきに重ねたCG映像と、これでもか攻撃でした(笑)。

思うに、「一応、海・環境の関連で企画を立ててあちこち呼びかけたけど、けっこうイカした阿波踊りの踊り子隊(高円寺阿波踊りの「天狗連」)ともつながったので、これも活用してしまう」というところかと。阿波踊りは私は徳島のお祭りを観覧したことがあって、どの踊り子隊も似ていて、やや飽きた記憶があります。それが今回は、「阿波踊りのステップなど基本を生かしつつの創作ダンス」という感じでしょうか。静かなドビュッシーのフルート独奏曲では幻想的な静止画イメージの舞をし、ボロディンの「ダッタン人の踊り」ではメロディーの変化に合わせた表現豊かなダンスといった感じで。レベルが高いな~と思いました。

オーケストラにおいて感心したのは、バイオリン(幼少期から高額のレッスンが間を開けず続く)など世間離れした、コンサバティブな(なにしろ”クラシック”ですから)演奏者たちが、ここまで容認しているということでした。「ふざけないでください!!」って怒り心頭の人も、初期は続出だったに違いありません。実際、今回のこれでもか攻撃の前半は、コラボした先がおもしろいため、演奏は”バックグラウンドミュージック化”している、と私も感じました。

ところが。この気楽さがよかったのでしょうか。後半(演奏者にとってはこちらがメーン)のドボルザークの交響曲8番という、40分ほどの王道の演奏に突入しても、いつもと違って「長いなあ~」と感じることなく、楽しめたのです。コンサバな世界は減点主義になりがちで。私でも「ホルンが△△だね」「オーボエがちょっとねえ」といったダメ出しがどうしても出てしまう。それが今回は、なかったのです。びっくりしました。

ということで、1取材先というのを越えての感激を記しました。クラシカエール、来年はなんと(優れたホールとして著名な)サントリーホールでのコンサートだそうです。10年は続けるんだと聞いており、そうしたら本当にひょっとして…? どんな発展になるか楽しみです。

| | | コメント (0)

2022年3月 6日 (日)

2022年3月第1週、東京理科大の石川新学長は同大のことを分かっていない

久しぶりに刺激的なタイトルにしてみました(笑)。

1.東京理科大の石川新学長インタビュー。これは取材当時、「理科大に来てまだ1カ月だから」(本人談)という発言をを踏まえてのタイトルです。批判的な意味で使っているのではありません。知らない人、しがらみがない人の方が大胆なことができ、古い組織が刷新されていく可能性があるからです。昨今、大企業の社長を外から招くことが増えているのもそのためでしょう。例えば某社の記事で知って驚いたのは、三菱ケミカルホールディングスのギルソン社長の決定時の裏話です。社長を決める委員会のメンバーのだれも対面で会ったことのないまま、決まったといいます。いくらWebの時代とはいえ、大丈夫かなあって思うじゃないですか。それから社長候補が何人かいたうち、生え抜き日本人はまず最初に(ずっとその社にいる日本人というのがネックとなって)はずされた、ということ。「多様性がない人はこんなに評価が下がるのか、すごい時代だな…」と当時、思ったものです。あっ、横道にそれました。新学長の記事はこちらから。

2.東北大など4大学、図書館の論文雑誌購読で米出版社ワイリーと新型の契約。論文ジャーナル問題は紙からWebへの転換、世界的出版社の寡占による価格急騰、論文実績評価狙いのハゲタカジャーナル(査読などまともな仕組みのない、偽の論文業績が買える雑誌)、などいくつもの切り口があります。今回はオープンアクセスへのシフトがテーマです。写真は大学ではなくて、自治体のフツーの図書館です。Dsc_2065 記事はこちらから。

このブログ、土曜は仕事とプライベートの両方に関わる話題、日曜はニュースイッチからの紹介とほぼ1年間続けてきました。写真の手配を含めて、けっこう負担を感じており、新年度から形を変えようか思案中です。「土曜の話題もぜひ続けて」ですとか「日曜の分だけで充分ですよ」とか、ご意見あればお寄せくださいね~。

 

| | | コメント (0)

2022年3月 5日 (土)

非常勤講師の契約、どっちがどどっち?

大学は年度単位で動くので、非常勤講師の来年度の依頼も今の時期に来ます。慣れていない人が迷うのは「雇用契約」と「業務委託契約」のどちらを選ぶのかということではないでしょうか。写真はその、どちらがどんなふうに違うのかを書いた書類です。Dsc_2060 が、読んでも「だからそれって、自分の場合はどう影響するのか?」ということは、あまり見えてきません。

科目の担当の正規教員もまったくわかっていません。自分には関係ない話ですからね。人間、面倒なことは自分に関係ある事柄にしか、動かないというのは仕方がないことです(笑)。担当事務に電話して「どちらが一般的なのですか?」と聞くと、「そうですね~、どちらも多いですよ。半々くらいでしょうか」なんて返事です。時間単価は同じだし、自分はどうすればよいのかわからない…という人が多いのではないかと思います。それで私が理解しているところをお伝えしましょう。

まず「雇用契約」です。会社員など本業で組織に務めている人は、所属組織と雇用契約を結んでいるけれど、大学とも雇用の関係を作る形になります。これにより”労働基準法に基づく労働者となる”というのがポイントです。具体的には、雇用保険や健康保険、年次休暇付与の対象になります。所属組織以外での仕事を持つ兼業・副業でいうと、多くは非常勤講師での担当コマ数は少なく、こちらに費やす時間はごく一部という「副業」になるでしょう。ので保険や休暇は結局、所属組織からのものだけになります。でももし「本業と半々くらい」という兼業の働き方なら、保険や休暇の扱いが両方で出てきます。

これに対するのが「業務委託契約」です。これは中心は大学に限らずフリー、いわゆる「個人事業主」で働くの人の形態です。独立して仕事をしているので、雇われて働くという意味での労働者ではなくて、労働基準法の適用対象外です。個人事業主での働き方のままだと、健康保険は国保(保険料が高い)、年金は国民年金のみ(厚生年金がない分、年休収入が低くなる)、雇用保険なし(仕事を失ってもフォローがない)、休暇の取り決めがはないという状況になります。

それで「雇用契約を結んだ所属組織がある私の場合は、どちらで?」という判断基準です。 1)所属組織が兼業・副業を認めていないなら、雇用契約というわけにはいきません。こっそりする(本当はマズイ)なら業務委託契約です。会社に内緒にしたサービス業でのアルバイトなどと同じです。 2)所属組織が「大学など公的機関の手伝いはしてもよいが、報酬はもらってはいけない(無給でのボランティア)」という場合は、業務委託契約になります。雇用は給与が発生するからです。 3)「会社はやって給与をもらっていいと言っている」なら、どちらの契約も可能です。大きな違いはありません。これが問い合わせ先の事務の態度となっている(どっちでもいいじゃないですか的な姿勢)のでしょう。基本的には、雇用契約の方が手厚いので、結論としてはこちらがおすすめです。大学へ向かう途中の事故の補償などが、雇用契約ならあるけれど、業務委託契約ではないからです。ウーバーイーツの配達員などで注目されたのもこのあたりですね。

過去、問題になったのは、非常勤講師の掛け持ちで生計を立てている若い人(ポスドクなど)のケースでしょう。複数の大学で多数のコマを持って生活しているのに、保険が適用にならない業務委託契約になっている。その一因に、雇用契約だと「無期労働契約への転換」など大学側にとっては面倒な形になってしまうというのがあった。でも業務委託ではあんまりだという世論を受けて、大学側も「雇用契約を基本とします」と変わってきている…という状況だったと思います。

これらは「私が理解しているところ」ですので、必要でしたら正確な情報を確認してくださいね。ただ、「とりあえず、どんな感じか教えてよ」という人には、参考になると思って記しました。新聞記事だとこんなあやふやな情報を出せないし、取材に基づく話ならブログでも正確に書けるのですけれどね。今回はこれでご理解くださいね~。


| | | コメント (0)

« 2022年2月 | トップページ | 2022年4月 »