室蘭工大の記事に対する東工大学長コメントと、シュプリンガーネイチャーのオープンアクセス新契約
1.シュプリンガーネイチャー、新たな転換契約を開始。論文のオープンアクセス(OA)化は、大学側が発信者になる上でのメリット(論文引用率が高まる)点がよく強調されます。が、日刊工業新聞の主たる顧客である企業の視点からすると、研究所などで契約していない、これまでと異なる分野や切り口の論文にアプローチできる、という点も重要なのではないでしょうか。
シュプリンガーネイチャー・ジャパンの、RUC加盟大学におけるパイロット転換契約の最新データによると、OA論文は非OA論文に比べて、平均で6倍以上ダウンロードされたそうです。実際にはダウンロードが試みられたものの、契約していないためできなかった、という数のカウントもあり、やや複雑ですが、効果が高いことは間違いないようです。記事はこちらから。
2.室蘭工業大学、地域の食とウェルビーイングのプロジェクトで成果。私、ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に満たされた幸せ)が好きなんですよ。大学の社会連携にこの言葉があると目が吸い寄せられてしまいます(笑)。私はバリキャリ(バリバリ働いて昇進していくキャリア、主に女性に対して使う表現)ではなかったから。体力がなくて、気もさほど強くないけれど、社会的に意味ある仕事をしたい、と思ってきた職業人だから。多くの妹たち(年下女性)が活躍できる、ウェルビーイングの社会を望んでいるのです。
写真は同大本部の事務棟です。
こちらのニュースイッチ記事を、フェイスブックでも紹介しました。私のコメントは「異分野融合は総合大学よりも、単科大学の方がこのところ目立っている気がします。総合大学は多様な学部があって当たり前で、当たり前なので特に動かない。単科大学とくに理工系は、自身の分野や資源が限られている、という問題意識を持っているためではないかと思います 」です。
そうしたら。東工大の益学長から、これに対するコメントが付きました。「山本佳世子さんの指摘は正しいと思います 」って。お~、響いたのね! と嬉しかったので「年末の理工系3大学の連携協定で、気付かされた事柄です〜」と返しちゃいました。
どういうことかというと、年末に東工大と室蘭工大と九工大の連携会見があって。そこで私が「かなりの分野をカバーしている理工系トップの東工大がなぜ、地方理工系大学に連携を呼びかけて回っているのか?」といった質問をしたのです。これに対して、益学長が「国内で似た大学同士で競争する時代ではない。世界に目を向ければ、東工大一つだって全く足りない。どんどん連携していく」と答えたのです。それが私にはけっこう印象的でした。記事には盛り込めませんでしたが、頭に残っていました。それで室蘭工大の地域連携(東工大は関わっていない案件ですが)のニュースイッチ記事をフェイスブックに転載する時に、その思いを入れたのでした。
記者で一つの担当が長くなると、マンネリ化との戦いになってきます。普通にしていると、仕事がマンネリ化してしまう、というわけです。でも。ある取材での発見を、別の取材案件の解釈に生かす、という深さは、短い期間で担当が変わっていく記者にはできないところでしょう。特定のコミュニティーで経験を重ねても、新鮮な思いを忘れない―。そんな姿勢を大事にしたいと思います。記事はこちらから。