私大の理事長選出、法改正でどう変わった?
早稲田大学の次期総長候補者選挙が6月頭にあり、大学(教育・研究側)としては理工学術院(三つの理工学部の教員が所属する組織)の教授で、学校法人(経営側)では常任理事を務める本間敬之(たかゆき)先生が選出されました。私は正規の専任教員でないので選挙権がなくて(残念)、その意味では以前の新聞記者の気分~。少し遅くなりましたが、本ブログで解説をします。写真は早稲田の本部建物、大隈会館です。
まず、選出と聞いた時のメディア人の最大の関心は「これ、新総長の記者会見あるの?いつ? 原稿、大急ぎで出す必要があるの?」だったはずです。ところが。今回はホームページで「本選挙結果をもって次期総長の就任が決定するものではありません」「次期総長は、2026年9月21日に開催予定の理事会において選定されます」と記載されています。……とりあえず、まだ決定していないのなら会見はないよね? というのがメディア人の最初の安堵でしょう(笑)。
それで次です。「この文章、どういう意味なの?」と、大学畑に精通していないメディア人や一般の人は悩むでしょう。校友(卒業生)にしても「前回まで、学内選挙結果だけでストレートに決まっていたのに」と思うところです。これは2025年に私立学校法が改正されて、私立大学を運営する学校法人において、トップである理事長を確定するプロセスが大幅に変わったためなのです。どういうプロセスかといいますと…。
1)まず理事(いわゆる役員)を選任する評議員会(学内17人、学外52-60人。つまり外の人が中の人の3倍以上!もいます)が、「理事選考諮問委員会」(評議員のほか学外有識者など7人で構成)を設置します。
2)同委員会が頭をひねりにひねって、役員となる理事の候補者を提案します。これは21人以内、うち学外理事3-9人。どんなに学内者で固めようとしても、1割以上の学外者が必須となります。
3)評議員会がその案でよいか議論して、選びます。疑惑の影があるような理事候補者は、ここでふるい落とされます。
4)新たな理事で構成される理事会が発足し、その中で理事長(早稲田は理事長兼学長で、総長と呼びます)を選びます。この時、「総長候補者選挙の結果を十分に考慮して選定する」ことになっています。
つまり通常は(特別に揉める点がなければ)、「選挙で支持された人が理事長に就くのがリーズナブルですね」となり、候補者が総長に就任します。でも圧倒的な票を集めた候補者が、総長候補者選挙後に判明した事実やなんらかの事案によって、「やっぱり社会的な常識からみて具合が悪いのでは?」 と議論が紛糾すると、総長就任には至らない、あるいは理事にすらなれない…という仕組みなのです。法改正は複数の私立大で、不適切なガバナンス(組織の管理運営)が問題になっていたことを背景になされました。
そもそも早稲田の場合は、選挙時点でかなりの学外の意思を問う形ですので、民主的といってよいでしょう。有権者は約2200人の専任教職員と、約1000人の学外者(評議員や、早稲田特有の制度による商議員)ですから。私は8年前、田中現総長が選出される選挙を前にして、鎌田前総長を取材。この学外有権者数の大幅引き上げ(それまでは約200人でした)など記事にしたことを思い出しました。
私立学校の理事長の選出法はこれまで本当に様々で。日本私立学校振興・共済事業団の調査では、理事長の約4割が創設者一族だそうです(出典:現代の高等教育「IDE」2025年10月号p43)。けっこう多いですよね。一方で、創設者の思想は受け継がれつつも、一族の経営ではなくなっている学校法人では、選挙が活用される傾向です。大隈重信侯に対する信奉が著しい早稲田も、その一つです。でも法律としては全部ひっくるめて、社会の目がしっかり入る同じ仕組みで運営することにしましょう、となったのです。普通、私立大関係者を除くと細かくは知らないですよねえ。私も今回、改めて確認し直した次第です。
実は改正法によって、就任後も同様の手続きで理事や理事長の解任・解職ができるようになっています。なのでどの学校法人でも、役員は皆、就任までも就任してからも、“そこはかとない緊張感”を持ち続けることになります。教育機関は私立であってもある意味、社会における公的な存在ですからネ。学校関係者の皆様(私も一員です)、社会がどのように自分たちを見ているのか、常に意識してシッカリと行動してまいりましょう~。






